「高い自己裁量で自分の働き方をデザインする」株式会社イトーキ #オフィス改革



時間と場所を自由に選択できる働き方「ABW」

打ち合わせやミーティングなどのように、誰かと会話をしながら進める仕事もあれば、一人で細かい数字を見ながら黙々とパソコンに向かって作業するなど、仕事といっても取り掛かる内容はその日のスケジュールによってさまざま。
一般的なオフィスでは基本的に自分専用のデスクを与えられ、そういったスケジュールに関係なく仕事をこなしていきますが、時々自分が居る場所にマンネリのような気持ちを抱いてしまうこともあります。周囲に人が居るから会話がしづらい、電話の声のボリュームが難しい……など実は自分のデスク周りの環境に不満を持っている方も少なくはないのではないでしょうか?

このようなオフィス環境に関する課題が数多く挙がる中で、今最も注目を集めているキーワード。それが「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)、略してABW」です。

「ABW」とは 新たなワークスタイルのトレンドで、時間と場所を自由に選択できる働き方のことを指します。オランダ発祥の考えで、新たな働き方改革のヒントとして最近注目を集めているのです。

業務に合わせて最適な場所を選ぶことができる、新たなワークスタイル。そんなABWを日本でも取り入れた企業があるということで、早速その効果について学んでいきましょう。今注目を集めているABWというワークスタイルを取り入れたことによって、そこで働く社員さんたちに、どのような変化があったのでしょうか? 

高い自己裁量で働く場所を選ぶ、イトーキのオフィス

株式会社イトーキ
(写真右)マーケティング戦略企画室 浜中 麻衣/(写真左)マーケティング戦略企画室 渡邊 絢生

ABWという新たなワークスタイルを日本でも積極的に取り入れたのが、オフィス家具を手掛ける企業、株式会社イトーキです。2018年の12月にオフィス移転をしたばかりのイトーキですが、移転先である新オフィスは、ABWを軸にした空間になっているのだそう。Cinq取材班は早速、引越したてのオフィスにお邪魔させていただくことに。

一般的にABWというと「オフィスに限らず自由に場所を選択し働くことによって、よりクリエイティブな成果を促す仕組み」とされていますが、 イトーキでは ABWを「ワーカーの自己裁量を高めることで、生産性を高めるための戦略」として捉えているそう。
マーケティング戦略企画室の浜中さんと渡邊さんにお話を伺いました。

集中する時はとにかく周りの目を気にしない! 目的に合わせたスペース選びを

電話をする時には周囲への音漏れの心配のない電話スペース、2人作業の時には2人用の作業スペースなど、オフィスにはそれぞれの活動に適した空間が複数用意されています。

さまざまな活動を想定して空間が準備されていますが、働く場所はワーカーにとって生産性・効率的であるのならどこでも問題なし。 周辺のカフェや自宅などでの仕事も可能で、自分の意志で自由に働く場所を選べるようになっています。

浜中さん「1人で作業に集中したいときには、ハイフォーカス(高集中エリア)のブースにある『トイロ』というデスクに向かいます。基本仕事をするときは座って作業をしますが、デスクが電動昇降になっているので、デスクの高さを自分の好みに変えることができるんです。なので、気持ちの切り替えをしたいときには立って仕事をするように。
デスクパネルでしっかりと仕切られているので、1人だけ立っていたとしても周囲の視線が気にならないのも嬉しいですね」

座るだけではなく立つこともできるデスクは、眠気が襲ってきたときや座りっぱなしで足がむくんできたときに大活躍。黙々と作業をしている時は、自分の表情にかまう余裕なんてなくなりますが、この『トイロ』は、そんなプライバシーもしっかりと守ってくれます。

渡邊さん「私は、同じく高集中エリアにある『インテント』というリチャージを目的とした1人用のブースをよく利用します。集中しすぎて疲れたときに利用することが多いですね。椅子が窓側に向いているので、夕方~夜にかけては景色がとても綺麗なんです。そこでほっと一息つくのが癒しです。気持ちの切り替えをすることを会社が推奨していることもあり、社員からも人気の場所になっています」

(まるで、飛行機のファーストクラスのような空間。仕事で煮詰まったときに活用したい!)

2人が紹介してくれたハイフォーカス(高集中エリア)はその名の通り、集中するべき業務がある時に向かう個別の活動スペースが基本。電話や私語は禁止で、照明も他のフロアよりも落ち着いた空間になっています。浜中さんと渡邊さんは、集中してやらなければいけない業務も多いことから、ここを活用することが多いのだそう。

2人で作業を進めるときは、アプリやハングアウトで連絡を取り合って

2人で作業をするときは『デュオ』というスペースで、モニターを見ながら一緒に作業を。
それぞれ別の場所にいることが多いので、ハングアウトで「今大丈夫ですか?」などと相談をしてから、落ち合うようにしているのだとか。

そこで取材班が最も驚いたのが、GPSにより社員がどこにいるのかわかる『働き方変革サポートアプリ』があるということ。

仕事の内容まではわかっていなくとも、相手がいるスペースによって話しかけるタイミングを調節できるので、電話したい相手が私語禁止のハイフォーカスエリアにいるときはチャットで連絡をする……という気遣いができるのが嬉しい。

環境を選べるようになって変わった、仕事への向き合い方

浜中さん「移転前は一般的なオフィスと一緒で、決まった場所で、メールや電話やパソコン業務といったあらゆる業務を行うのが普通でした。今のオフィスに移動してからは、自分の業務に合わせて働く場を用意されているので、最初はどのようにして活用するのが適切なのか悩みましたが、チーム内で整理していくことによって、今では不自由なく利用することができています」

渡邊さん「自分がどういった仕事を抱えているのか、それをどのように進行していくのか。スケジュールを頭の中で組み立てておかないと『次は2人で作業をするから、ここに行こう』といった最適な場所選びができません。移動してきたときにはまず、その整理が必要だと思っていましたが、最近はその想定がある程度できてきて、スケジュールに合わせた動きができるようになってきました。

オフィスに固定席がないからこそ『今日は何をしよう?』ではなく、目的に合わせて気持ちを整えた上で仕事に取り掛かることができるようになりました」

コミュニケーションの課題は、オフィスのレイアウトによって改善できる

渡邊さん「どの階も共通しているのが、フロア中心の内階段まわりが賑やかな空間になっていることです。そこからだんだん離れていくと、先ほど紹介したハイフォーカスエリアといった集中エリアに入るのですが、フロアの真ん中にある内階段周りがカフェスペースになっているので、雑談をしたりコーヒーを飲むといった、社員たちのコミュニティスペースとなっています。

そこにいるとすれ違いで、以前プロジェクトが一緒だった人たちと会話が生まれることもあれば、全く面識のなかった社員から質問がきたり……これまでにはなかったコミュニケーションが生まれました」

浜中さん「今までは拠点が4つに分かれていたので、久しぶりに顔を合わせる社員同士も多く、仕事の話やプライベートのことなど、コミュニケーションは内階段周りを中心にとるようになりました。2日連続で同じ席に座ってはいけないというルールがあるので、いつも同じ人がいるわけではないんです。毎回違った社員がいるからこそ、顔もどんどん覚えていきます。
ABWを導入しても、いつも誰かが同じ場所に座っていたら、その意味を成しません。4拠点が1つの拠点にまとまったイトーキでは、新しいオフィスに合わせたマナーや使い方を、事前にeランニング形式で学んでから、統一されたルールのもと働くようになりました」

働く環境づくりで大切なこと

渡邊さん「働きやすさはもちろん、空気感や心地よさは大事な要素だと思っています。オフィスが活動別になったことで、今まで以上に円滑なコミュニケーションをサポートしてくれるようになりましたし、常にまわりにチームのメンバーがいるわけではないので、個人の時間もとれるようになりました。今職場環境で悩んでいる方には、自由に働けるということの心地よさをぜひ体感して欲しいと思います。」

浜中さん「コミュニケーションをどうやって増やすかも大事ですね。イトーキのテーマである高い自己裁量によってワーカーそれぞれが自分の働き方をデザインするようになると、いつもチームメンバーがすぐ隣にいるわけではありません。ハングアウトで細かく連絡を取り合うようになりましたし、会話しない期間ができると一緒にランチに行くこともあります。社内アプリもあるおかげで気軽に調節ができるので、工夫次第でオフィス環境は改善できるんだなと感じました。積極的にコミュニケーションを取ることは、どのオフィス環境においても大事な要素ですよね」

作業スペースが決まっていることによって、仕事に取り組むまでの時間が長くなってしまったり、デスク周りに所持品が散らばり、まるで自宅かのような自分だけの空間が出来上がってしまうことがありますが、作業に適した空間を複数設けることによって、よりスケジュールを見える化し、気持ちよく作業へ向かうことができるようになったというイトーキの新オフィス。行動の自由度が広がることで、より効率性や創造性のアップへと繋がります。

イトーキが行った、全国の従業員300人以上の企業・団体に所属するホワイトカラーワーカー3,102人を対象にした調査では『活動に合わせた空間を多く与えられているワーカーとそうではないワーカーでは、自らの生産性実感に25.5%の差がある』ということも明らかになっています。それだけ、オフィス環境が与える影響というのは大きいものなのですね。

株式会社イトーキの浜中さん・渡邊さん。
快く取材に応じていただき、ありがとうございました!