自転車は、私たちにとって身近な乗り物です。この数年においては、健康志向やエコブームが相まって自転車が脚光を浴びるようになりました。さらにファッションの一部として自転車がブームになっています。街で見かける自転車のなかにはかっこいいモデルも多くなってきたなと思っていました。
自転車は便利な乗り物です。でも最近は自転車の乱暴な運転も気になるようになりました。車道を車の間を縫ってスイスイ進んでいく危険な運転をする自転車を見かけることも多くて、ちょっと怖いなと感じることもあります。
そんな中で、2020年4月から東京都では自転車の保険加入が義務化されました。今回は自転車保険とはなにか、義務化とはどんなことか、について解説いたします。
自動車じゃなく「自転車」! 自転車保険の加入義務化ってなに?
そもそも、自転車保険とは何でしょうか?
自転車保険には、自分のケガへの補償と相手への賠償の2種類があります。
自分への補償とは、自分が自転車に乗っているときに転ぶ、衝突することでケガをしたときの治療費の補償をする「障害保険」です。
相手への賠償とは、自分の運転した自転車によって相手がケガをしたとき、相手のモノが破損したときの賠償を補償するものです。自動車保険では「対人」「対物」の補償は項目が分けられていますが、自転車保険では補償対象に両方を含んでいます。
今までは自転車保険というと、自分のケガへの補償がメインで考えられていましたが、この数年の中で加入義務が進んでいるのは、自転車の運転中に相手に負わせたケガなどへの賠償補償です。
義務化となった背景
2008年に神戸で起きた自転車事故の判決がきっかけになっています。
自転車に乗っていた小学5年生の子どもが女性に衝突し、女性は意識不明の重体となりました。この裁判の判決で、子どもの保護者に対して9500万円ほどの賠償金を支払うことを命じました。子どもへの自転車運転への指導不足と監督不行き届きとして親に責任があるという判決内容でした。
この事件以外にも自転車と歩行者、自転車同士の衝突による死亡、重体となる事故が多く発生していて、その判決で高額な賠償額の支払を命じられた事例は少なくありません。自転車による事故の原因の多くは、スピードの出しすぎや無理な横断、無灯火のほか「ながらスマホ」での運転など、運転する側のルール違反です。競技用モデルのようにブレーキのない自転車が一部の若者の中で流行っているとも聞きますが、ブレーキのない自転車に乗ることも違反です。
自転車は車両なので、事故があれば、自動車やバイクと同じように道路交通法によって責任が問われますし、加害者への賠償責任が発生します。
とはいえ、自動車と違って任意加入の自転車保険に加入している人は少ないのです。これではいけないと、地方自治体によって自転車保険加入の推進、義務化への動きがみられるようになりました。
対象地区とは。義務かは地域別に設定されるの?
神戸で起きた自転車事故を発端に、初めに自転車保険加入を義務化したのは兵庫県でした。2015年に兵庫県が自転車保険加入義務化を定めてから、全国に広まっていきました。
これは国の指針に従って、それぞれの都道府県あるいは政令指定都市が、交通安全に関わる条例で定めます。東京都は2020年4月から損害賠償保険加入が義務化となりました。
自転車保険が義務化された地域で、いったい誰が保険に入らなければいけない対象になるのでしょうか。対象は、その地域に住んでいる人ではなく、その地域で自転車を運転する人です。
・自転車通学の人
・自転車通勤をするひと
・自転車で子どもを送迎する人
は、自転車保険に入っておくべきでしょう。
保険未加入の罰則はあるの?
義務化された地域で自転車に乗っているけれど、自転車保険に加入していない場合は、罰則があるのでしょうか?
これは、今のところはありません。
しかし自転車の乗っているひとは、いつ加害者になってしまうかわかりません。一方では歩行しているときに自転車で衝突されて、被害者となる可能性もあります。後遺症の残るような重大な被害を受けても、加害者が保険未加入の上支払い能力がなく、十分な賠償がされないとなると、本当に困ってしまいます。自転車に乗る上では、賠償責任に対応できるようにしておくことが最低限のマナーだろうと思います。
自動車保険、火災保険、損害保険の特約やクレジットカードの付帯保険の「個人賠償責任特約」には、自転車の運転中の賠償責任をカバーしているものもあるので、自転車保険に新しく加入する前に、ご自分が今加入している保険の補償内容をチェックしましょう。
終わりに
自転車は、電動などでない限り自分の力でペダルを漕いで進んでいくので、その危険性について私たちはすこし意識が低いのかもしれません。時速20~30キロ程度のスピードが出ますので、運転操作を間違えると自分がケガもするし、人にもケガを負わせる可能性があります。
自転車に乗るなら、まずは安全運転をすることが第一ですが、万が一のためにも保険加入をしておくと良いと思います。