人材業界を16年経験した元キャリアアドバイザーが、今お伝えできること



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「仕事をやめたい」、「転職したい」。
仕事について、そう悩みを抱えている方は多いものです。

Cinq編集部では、転職を考えているみなさんのために、3,000名以上の転職希望者の転職の瞬間に携わってきた、キャリアアドバイザーのAさんに転職業界についてのコラム執筆をオファー。送られてきたWordには、転職業界の驚くべき事情が記載されていました。この記事は、転職を考えているすべての人に送る、元キャリアアドバイザーからの心の手紙です。

「転職」を考えているあなたに

はじめまして。
30代で人材紹介会社に転職し、今年で16年目になるキャリアアドバイザーAと申します。
延べ3,000名以上の転職希望者の転職の瞬間に携わってきました。
今も人材ビジネスに関わっていることに変わりはないのですが、今年の初めから、少し視点を変える転機があり、今改めて「人材紹介ビジネスとは」「転職支援とは」と自らに問いかけています。

その中で、どうしてもCinqの読者層の20代、30代の皆さんに知っていて欲しいことがたくさん浮かんできたので、この場を借りてお伝えしていきたいと思います。

「転職」するということ

「転職したいなぁ」一度もそう思わずに長い社会人生活を過ごせる人はいないと思います。
「転職したいなぁ」そう思った時、皆さんはどうしていますか?

人気俳優がこぞってCM出演している、転職サイトに登録しますか?
求人情報がたくさん掲載されている、求人情報サイトをみてみますか?
地元のハローワークに行きますか?

どの選択も、「最初の一手」としては間違っています。
自分は何が得意で、どんなことをしたいから転職したいのか、しっかり時間をかけて自己分析すること。この準備をする前に、転職サイトに登録することは、とっても危険です。

「情報」の渦に巻き込まれに行くようなものです。
情報の渦が、いかに危険なものか。

試しに、何も準備をせずに転職サイトに登録してみてください。
翌日、あなたのメールには、大量のスカウトメールが届いていることでしょう。

一点一点にしっかりと目を通せる量ではない量のスカウトメールがあなたに届くはずです。
情報の取捨選択が出来る準備ができていないうちにこの状態になると、中にはこんな錯覚に陥る人も出て来ると思います。

「やっぱり、自分は市場価値が高いんだ! 我慢して今の会社にとどまる必要なんかない。だって、こんなにスカウトメールが届くんだもの! “今より良い会社”に、きっと転職できるはず」

ちょっと待った。
【今より良い会社】とは、一体どういう会社のことでしょうか?
【私は、市場価値が高いんだ!】本当に、本当にそうでしょうか?

「具体的にはわからないけど…そういうことをプロがアドバイスしてくれる、人材紹介会社で教えて貰えば良いんじゃないのかな?」

しつこいようですが、本当に、そうでしょうか?

人材紹介会社から見た【良い会社】

私が人材紹介会社でキャリアコンサルタントとして働き始めたばかりの頃、業界のイロハを教えてくれた上司から、こう言われました。

「Aさん、うちらにとって【良い会社】って、どういう会社のことだと思う?」

「大手で安定感があることですかね」
「有給休暇が取得しやすいこととか、福利厚生が充実しているとか?」
「業績が好調で、今後も伸びる可能性が高い会社だと思います」
「やっぱり、給与が上がりやすいところかなぁ」
「ネームバリューがあることも大事かと…」

「はーい、全部違いまーす」
「正解は、うちらからよく転職者を「採用してくれる会社」。金払いが良い会社だよ! うちはボランティアじゃないんだから。誰からお金が入ってくるのかをよく考えてキャンディデイトと向き合って。意識変えてくれないと困るよ!」

そうなんです。
人材紹介会社は、転職者からお金を頂かない代わりに、企業からお金を貰って運営されています。ほとんどの人材紹介会社にとっての【良い会社】とは、「売りやすい会社」のことなのです。

あなたにとっての【今より良い会社】と、明らかにベクトルが違いますね。このことを意識しないまま、100%人材紹介会社に頼るのは本当に危険なのです。

ボタンをかけ間違えて、転職活動に迷いが生まれる女性

ある有名メーカーにお勤めの27歳の女性が、転職相談に乗って欲しいと訪ねてきました。
有名大学を卒業しており、お話してみるとハキハキと受け答えもしっかりしていて、すぐにでも「売れ」そうな転職者です。彼女は現在の製造業からIT業界への転職を希望しており、そして予想外に苦戦をしていました。

「大手の紹介会社にも登録に行っているのよね? どんなアドバイスを貰った?」
「求人票はたくさん貰いました。30社くらいかな……」
「30社?! で、どの会社を選択したらいいかアドバイスされた?」
「いえ、求人票を読んで自分で何社か選んでと言われました。できるだけ数多く受けろって言われました。その中でも『まずはココは絶対受けてみて下さい』と熱心に言われた会社があって……すんなり社長面接まで進みましたが、本当にここで決めてしまっていいのかなって迷ってます」

比較的優秀な人材でも、最初のボタンをかけ違えると、転職活動が上手くいかないのか……。私も頭を抱えてしまいました。
書類選考に落ちた会社名を教えて貰いましたが、明らかに準備不足のままの書類を送っているために落ちてしまった可能性が高い、そんな会社がいくつもあったからです。一般的に、一度書類選考でNGだった会社には、1年以上間が空かなければ再チャレンジはできません。(ごく稀に例外はありますが、この稀な例も今後はお話していきます)

20代、30代の1年間は本当に貴重です。面接という土俵に上がるチャンスを、準備不足で失う機会損失についてよく考えて欲しいのです。

「【アドバイス】を貰いに行った紹介会社で、貰ったものは【求人票】だけだった」という【人材紹介会社あるある】の事例です。

彼女の場合、転職すること自体が【目的】になっていて、「どうして転職したいのか」「自分の売りは何なのか」がとても曖昧になっていました。自分が売ろうとしている商品のことがまったくわかっていないまま、営業活動をしているのと一緒です。うまくいくはずがありません。

一方、人材紹介会社は「売りやすい会社」に「少しでも優秀な人材」を紹介したい。
その会社から「あの紹介会社にオーダーすると、すぐに候補者が出て来る」という評価が欲しい。何故なら、企業側も紹介会社を格付けしていて、秘匿性の高い情報・緊急性の高い情報は、格付の高い紹介会社から優先順位をつけて公開していくからです。

さらにキャリアコンサルタントは、企業に推薦した人数でKPI管理されており、文字通り必死です。このような状況に、事前準備なく丸腰で出掛けて行くことが、どれだけ危険かご理解いただけるでしょうか?

※ここまでセキララに業界の裏側をバラして、私は今後この業界で生きていけるか多少不安になりつつ……。

もう一度、お聞きします。
あなたはどうして転職したいのでしょうか?
あなたにとって【今より良い会社】とは、具体的にどういう会社のことですか?
あなたが頼っているキャリアコンサルタントは、これらに親身になって話をしてくれる方でしたか?
「転職すること」について、もう一度一緒に考えてみませんか。

キャリアアドバイザーA