「夢は近づくと目標に変わる」ウーマンダイアローグ #38



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今回のゲスト♡ 葵井歌菜さん

葵井歌菜(あおいかな)
ナレーター、声優。
アニメ『ふらいんぐうぃっち』木幡茜役、『タブー・タトゥー』シェール役、『Lostorage incited WIXOSS』など出演。
吹き替えでは映画『バイオレンス・フィーバー』レミ役、『復讐鬼 マイ・ジャスティス』ベンジャミン役、TVムービー『ザ・ガーディアンズ 前編・後編』シーラ役、Netflixドラマ『放課後ロックンロール』クララ役など。
舞台『妖怪奇譚 座敷童女』、ミュージカル『人魚姫』、『ブライトスター』に起用。
そのほか、CMナレーション、ゲーム、音声ガイドでも活躍。
趣味は徒手格闘、ドラム演奏、フルート演奏、ギター演奏(アコースティック)、歌、プロ野球球団マスコット観察。

インタビューする人♡ 渡辺彩季

渡辺彩季(わたなべさき)
京都府出身、東京在住のフリーライター。
女性をターゲットにしたメディアを中心に美容、ファッション、ライフスタイルなどの幅広い記事を執筆中。
美容が大好きで、コスメコンシェルジュ、全米ヨガアライアンス、アロマテラピー検定1級、温泉ソムリエなどの資格を取得。

ウーマンダイアローグ#38 【声優 ナレーター/葵井歌菜さん】

渡辺:本日は、よろしくお願いいたします。

葵井:よろしくお願いいたします。

渡辺:実は私、アニメや漫画が大好きで……いつかこの連載でもそういった関係のお仕事をされていらっしゃる方にゲストに来ていただくのが夢だったので、念願叶って高まっております!

葵井:そうだったんですね。こちらこそ光栄です!

渡辺:一概に声優・ナレーターと言っても幅広く活動されていらっしゃると思うのですが、葵井さんの現在の仕事の内容を教えてください。

葵井:現在はテレビ番組のナレーション、CMのナレーション、アニメやゲームのキャラクターの声などを担当させていただいております。

渡辺:数ある職業のなかでも日本では声優という仕事はかなり注目度が高いように思えます。葵井さんが声優を志したきっかけを教えてください。

葵井:小学校一年生の時に友達のお姉さんでアニメが大好きな人がいたんですよ。そのお姉さんが私たちがアニメを見ているときに「アニメには絵に合わせて声をあてている声優さんがいて……」と声優という職業を教えてくれました。それまではあまり何も考えず、ただストーリーに集中して作品を楽しんでいたのですが、裏でそういった人たちがアニメを作っているという事実を知り、興味を持つようになりました。子どもながらに、おもしろそうな仕事だなと声優に憧れを抱いていましたね。

渡辺:私も子どもの頃からアニメを見ていましたが、当時はどのように作られているのかあまり考えずに単純にストーリーを楽しんでいました。葵井さんは早い段階で制作サイドのことを知られていらっしゃったのですね! ちなみに何か影響を受けたアニメ作品はありましたか?

葵井:私自身、世代ではなかったのですが、小学生の頃に、先述の友達のお姉さんにらんま1/2というアニメを見せてもらったのがきっかけです。この作品で声優についていろいろ教えてもらいました。友達のお姉さんはリアルタイムで見ていたそうですが、当時の声優ブームの火付けになったとも言われている作品で、とにかくキャスティングが豪華なんです! アニメ自体も長く放送されていましたし、声優が歌うキャラクターソング集のCDも大人気でした。1989年からアニメが放送されていたので、今から約30年前の作品になりますが、現在では大御所になっている声優がまだ若手の頃に出ていた作品でもあるんです。

渡辺:『らんま1/2』! 私も再放送のアニメを見ていましたし、コミックも全巻持っています! 高橋留美子さんの作品は世代を超えて愛され続けていますし、いまだに1980年代にヒットした『うる星やつら』のグッズも新しいものがたくさん出ていますよね。

葵井:そうです! 数々のヒット作がありますが『らんま1/2』は声優という職業を知ったきっかけの作品なので、私にとっては特別なアニメです。小学生の頃から「すごく面白そうな仕事だな」という感覚を持ったまま大人になりました。

声優デビューのエピソード

渡辺:初めて声優の仕事が決まった時のエピソードを教えてください。

葵井:小学生からの夢ということもあって、声優の仕事に興味を持っていました。しかし、当時の事務所にはナレーターとして所属していたので、環境的にアニメのキャラクターの声優オーディションを受けるということがありませんでした。ある時、たまたまアニメ関係の仕事をされている方と知り合って、自分が声優の仕事に興味を持っていることを話してみたら、後日「オーディションに受からせてあげるという約束はできないけど、声質が合いそうなキャラクターがいるから受けてみる?」と連絡をいただいたんです。

渡辺:「声に出すと願いは叶いやすくなる」と言いますが、やはり周りの方に自分の気持ちを伝えることは大切ですね! 実際にそのオーディションを受けられたのですか?

葵井:はい。アニメのオーディションは初の試みでしたし、経験として記念受験をしてみようかな、と。

渡辺:葵井さんにとって初めてのアニメのオーディションは、どんなものだったのでしょうか?

葵井:事前に台本が事務所に送られてきました。オーディション会場では審査員の前で5つくらいのセリフを読むというシンプルなものでした。まだアニメの絵もできていないので、本当に何もかもが真っ白で「どういった声を出せばいいんだろう?」と悩みました。掘り下げれば掘り下げるほど分からなくなりましたね。たとえ漫画や小説などの原作があるものでも、作者や元々の作品のファンがイメージしているキャラクターの声があるので、再現するのが難しいんですよ。もちろん自分の個性も出さなくてはいけませんし。

渡辺:オーディション会場の様子はいかがでしたか?

葵井:会場にはすごく有名な人気声優や先輩方がたくさんいらっしゃいました。別の時間や日程で受けた人もいますし、後から聞いた話によると国民的アニメのキャラクターを演じられている方も来ていたみたいで、驚きましたね。知り合いの方からも「受からせてあげることはできない」という前置きで紹介いただいたオーディションでしたし、当時の私は経験もなかったので普通に落ちるだろうと思っていました。「合格はできなかったけど、アニメのキャラクターの声優オーディションってこんな感じなんだな」と勉強できたのでよかったなと。

渡辺:ものすごい倍率だったと思うのですが、そのはじめてのオーディションで合格連絡をいただいたんですよね。

葵井:自分が勝手に持っていたイメージで、合格なら1~2週間で連絡が来るだろうと思い込んでいたのですが、1ヵ月後唐突に「選考を重ねた結果、決まりました!」と電話がきたんです。それが『ふらいんぐうぃっち』という作品だったので、本当に奇跡的なデビューで……ただただ「ありがたいな」と思いました。とても大きな仕事だったので、嬉しいと同時に不安な気持ちがあったことを覚えています。

SNSを通して、視聴者からダイレクトな声が届きます

渡辺:葵井さんが仕事でやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

葵井:収録も楽しいのですが、一番はアニメがオンエアされた時ですね。本当にすぐに視聴者の声が届くんですよ。最近はSNSからダイレクトに感想が届きます。私のアカウント宛にTwitterでリプを送って下さる方もいらっしゃいますし、フォロワー数が増えることもあります。

渡辺:直接リプを送ってこなくても感想をツイートしている視聴者もいると思います。葵井さんは自身の名前や演じられたキャラクター名を、検索をしたりしますか?

葵井:自分の名前をエゴサーチするのは恐いんですけど、自分が演じたキャラクターの名前で検索をすることはあります。私はキャラクターを引き立てる役だと思っているので、まずはキャラクターに興味を持っていただけたら嬉しいですね。

渡辺:葵井さんの声がキャラクターの一部となっているので、声をきっかけにキャラクターを好きになったという方もいらっしゃると思います。逆に葵井さんのフォロワーさんが、葵井さんが出演情報をSNSでシェアすることで、元々は自分が関心がなかった分野のアニメやゲームにも興味を持ってくださることも多いのではないでしょうか。

葵井:そうですね。ありがたいことにそういった声も実際に届きます。ファンの方から、キャラクターごと好きと言ってもらえた時は本当に幸せですね。やはりキャラクターが主役なので、私の声と合わせてキャラクターを長く好きでいてもらえたら嬉しいです。

オーディションに合格することは、“ゴール”ではなく“スタートライン”

渡辺:声に関するいろんなお仕事をされていらっしゃいますが、ネガティブになった時期はありましたか?

葵井:初めてレギュラーのお仕事をいただいた時に「やっとレギュラーを持てる!」と喜んでいたのですが、収録を重ねていくなかで声の調子が悪くなったことがありました。今思えば、一度の不調でレギュラーを降ろされるようなことはないんですけど、当時は「今回ダメだったら、この仕事がなくなるかも」という恐怖を感じました。あらためて、レギュラーを持つということは相応の責任を背負うことだと危機感を覚えました。

渡辺:新しい仕事が決まるというのは、“ゴール”ではなく“スタートライン”ですね。ナレーターや声優のお仕事は人気なので、一見オーディションに受かるのがゴールのように思えますが、それは最初の段階に過ぎないというか。先程、不調の時期を乗り越えたというお話がありましたが、きれいな声を保つために葵井さんがされていらっしゃる習慣はありますか?

葵井:風邪をひいてしまうと仕事にならないので、少しでも危険を感じたら念入りにうがいをします。あとは、蒸気が出る吸入器があるので、それに病院でいただいた歌手用吸入液を入れて使うと喉を丸洗いしたみたいにスッキリするんです。

渡辺:喉に違和感があれば、入念にケアをされていらっしゃるのですね。食生活でも気遣っていることはありますか?

葵井:家にマヌカハニーを常備しています。毎日なめているというわけではないのですが、調子が悪い時にあると安心できるので。

渡辺:声優やナレーターをされている方の喉のケア方法は、他の職種でも参考になりそうですね。接客の仕事をしている人も毎日声をたくさん使いますし、精通する部分も多いと思います。私もインタビューの仕事をしているなかで、取材の日は特にコンディションを崩さないようにと気にしているので、参考にさせていただきます!

辛い時期を共にした同期は、唯一無二の存在

渡辺:声優は人気のあるお仕事ですし、競争が激しい世界だとも思うのですが、葵井さんが意識している人はいますか?

葵井:現在所属している事務所には同期がいないのですが、過去に所属していた事務所には同期が2人いて、同じように声優やナレーターの仕事をしています。

渡辺:その2人の活躍を見て、刺激を受けることも多いですか?

葵井:そうですね。苦しい下積み時代を共に経験してきたので、私にとっては特別な存在です。

渡辺:私はフリーランスで活動しているので、一緒に研修を受けた人や同期がいないんですよね。同世代で同じような働き方をしている人にもまだ出会っていないから、ライバルもいなくて全く危機感を持っていないので、そういった話を聞くとうらやましくなります。

葵井:前の事務所の同期は8人いたのですが、現在も声優やナレーターの活動を続けているのはその2人だけになってしまいました。本当に貴重な存在です。

渡辺:昔に比べると転職が気軽になったからこそ、同じ仕事を長く続けている仲間に特別な気持ちを持つようになりますよね。それは職種を問わずのことなのかもしれませんね。自分を奮い立たせてくれるような人がいるというのは、とてもいいことだと思います。

人生を共にできるようなキャラクターに出会いたい!

渡辺:ナレーターや声優として、どんどん活躍の場を広げられていらっしゃると思うのですが、今後はどのように展開していきたいですか?

葵井:今一番やりたいと思っていることは、10年、20年と長く続けられるようなアニメキャラクターの声を担当することです。現在のアニメ作品は1クールで終わることが多いので、演じていくうちにようやく「キャラクターのことが分かってきた!」ということがあるんです。そのタイミングで最終回を迎えることもあります。なので、長く寄り添えるような、人生を伴奏できるようなキャラクターに出逢ってみたいですね。

渡辺:実績をつけると共に、葵井さんの声がさらに確立されていきますね。人気アニメのキャラクターを担当すると、映画やイベント、ゲームなどに発展して仕事がどんどん増えそうです。

葵井:あとは、2019年11月3日に声優業とは別にドラマーとしてデビューをしました。『BanG Dream!(バンドリ!)』という作品に憧れてドラムをしていたところ、ありがたいご縁に恵まれメディアミックスの企画でキャラクターの声優をさせていただくことになったんです。そして、音楽監督にお声がけしていただき、声優ライブコンテンツのイベントでリアルなステージを実現させました。今後はドラマーとしても腕を磨いて、さらに展開していきたいです。

葵井歌菜さんのYouTube

インタビューを終えて…

声優・ナレーターの葵井歌菜さんと対談をさせていただきました。声優になることが小学生の頃からの夢とおっしゃっていましたが、念願叶って声優としてのキャリアをスタートさせた現在もさらなる目標をたくさん掲げられていて、前向きな姿勢に惚れ惚れとしました。

また、新しい仕事をいただいた時にそれが“ゴール”ではなく“スタートライン”ということは、声の仕事に限らず他の職種に対しても当てはまるものです。私もライターとして、この『ウーマンダイアローグ』の連載をさせていただくことになりましたが、連載が開始してから一定のクオリティーを超えなければならないと、これまで以上に本を読んだり、セミナーに参加したりと、地道に勉強をしたので共感する部分が大きかったです。働き方は違っていても「仕事をいただけるということ」「自分を選んでいただいているんだ」という有難みを感じて、日々精進していかなければとあらためて感じました。

『夢は近づくと目標に変わる』

プロ野球選手のイチローさんの名言です。

夢をみることだけで止まらず、今も新しい目標を掲げて奮闘している葵井さん。活躍の幅を広げられているその姿に、エネルギーを感じました。