Cinq読者の皆さま、おはようございます。キャリアアドバイザーAです。
先週お伝えした通り、今回は「AIに代替されにくいスキル」についてCinq読者の皆さまと一緒に考えていければと思います。
そもそもAIって?
AIとは、「Artificial Intelligence」の頭文字をとったもの。和訳すると「人工知能」となります。一言でいうと、「人間のような知能を持つプログラムのこと」です。
「プログラムか…。AIって、エンジニアとか理系の人の領域なんじゃ…」と尻込みしている方がもしかしたらいらっしゃるかもしれません。が、実はもうすでに私たちの生活に深く関わりをもっていて、切り離すことはできない存在になっています。
身近な場所では、たとえば以下のような用途でAIが活躍しています。
Webサービス、ECサイト
おすすめ商品、メールマーケティング等、インターネットで買い物をするときにあなたにおすすめが表示されるのもAIの働きによるものです。
ソーシャルゲーム
ユーザー行動分析や運用プランニングにAIが活用されています。
画像認識
自動運転では欠かせない処理。認識と判断にAIを活用することで安全運転ができるようになります。
医療の領域においても病気の診断や薬品の処方を提案するAIが導入されはじめています。東大医科学研究所で、特殊な病気をAIが見抜いたという報告もあるほど。
さらに、人間の顔を区別したり、不審な動きを感知したりすることが可能になったため、監視カメラの精度は飛躍的に向上しました。不審者の見分けだけでなく、体調不良者の発見・救助に役立てる試みも。
音声認識
Siriなどに代表される、スマホで音声を使った検索をするときには欠かせない技術。
また、Alexa、Google Assistantなどに代表されるスマートスピーカーもこの音声認識処理により成立しています。
自動翻訳
英語⇔ドイツ語、フランス語⇔スペイン語等、西洋の言語間ではかなりの精度で翻訳が出来るようになっているそうです。
コンピューターウィルスの検知
膨大な量のウィルスパターンの認識でAI技術は欠かせません。
この他、金融業界ではFintechという技術により、たとえば資産運用をアドバイスするロボアドバイザーなども普及してきています。
製造業の領域も、AIが活躍。この領域はもともとドイツが強みをもっています。(かつて「ものづくり立国ニッポン」として世界を席巻していた我が国にも頑張ってほしいところですね!)
AIと工場の連携を「インダストリー4.0」と呼び、国家プロジェクトとして発足させました。AIを組み込むことで、工場そのものに知性を持たせるという「スマートファクトリー」を実現しようとしています。
従来、海外に工場を移転し、その国の低賃金労働者を使うことで製造コストの改善を図ってきましたが、これからは「知性をもった機械にその役割を任せる」という流れになりそうです。
このように、AIは人間にとって「どんな指示も必ず実行する超優秀な働き手」になり得ます。
疲れることなく、情報処理速度も早いAI
疲れ知らずで文句も言いませんし、有給休暇取得の必要もありません。計算は正確。膨大な情報も一瞬で処理することができます。ミスやトラブルの察知も早い。
結果、AIは「人間の仕事を奪ってしまう可能性」があります。いわゆる「機械的に処理できる仕事」は、今後どんどんなくなっていくと予想されているのです。
たとえば、前述の「スマートファクトリー」が実現したら、そこで働いていた製造ラインスタッフはどうなるでしょうか?
無くなる仕事・増える仕事
ルーチンワークはロボットが担うように
2015年、野村総合研究所は「今後10~20年で日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替できる」という試算を発表したことは、Cinq読者の皆さまも目にしたことがあると思います。
いまある約半数の仕事がAIに代替されるというのは、かなりインパクトのある脅威ですよね。
代替可能と予測されたのは、「補佐・補助、維持・管理、運転・輸送、生産・作業」に類する仕事です。具体的には「事務・収集・整理・監視・点検・清掃・製造など」におけるルーチンワークは徐々にロボットが担うことができるようになるとされています。人間はAIに任せられない業務だけを担当すればよいので、雇用の必要人員数は減ることになりますし、その質も変わってくるでしょう。
求められるのはAIの扱いに詳しい人材
もちろん、あくまで「技術的に代替できる」ということであって、今すぐ職業がなくなるわけではないものの、今後この領域は「ルーチンワークを実行する人材」より「ルーチンワークをするAIを管理できる人材」、「AI活用するアイディアのある人材」にニーズが増えると予想されます。
なにも「AIをプログラミングできる能力のある人材」である必要ではなくて、「AIの扱いに詳しい人材」が求められるということです。
AIに置き換えられないのが「創造的な業種」
一方、AIに置き換えることが困難な職種としてよく挙げられるのが「創造的な職種」。
学術的、創造的、芸術的分野はAIに代替するのが難しいとされています。ですが、この領域もまったく進出していないかというとそうでもないところが面白いところ。
具体的な例を挙げると、2019年の年末に放送された、NHK紅白歌合戦内で試みられた「AI美空ひばり」。
30年前に逝去した『昭和の歌姫・美空ひばり』の歌声や節回し等をAIが解析し、なんと新曲を披露しました。専門家の間でも「美空ひばりというアーティストに対する冒涜だ」「いや、彼女の歌声をよみがえらせた画期的な試みだ」と評価がまっぷたつに分かれています。また、小説創作の領域においても、2016年、AIによる小説が、第3回日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)の一次選考を通過したと話題になりました。
人との密接なコミュニケーションが必要な職種
さらに、AIがもっとも苦手としている領域とされる、人との密接なコミュニケーションが必要な職種は代替が難しいとされています。AIは人の気持ちを「察すること」ができないからです。
医療、介護、福祉、教育のような、1人1人の気持ちに寄り添い、親身に接することは難しい。
簡単な接客、見守り、検査やテストの採点業務などはAIに任せ、コミュニケーションが重要な仕事は人間が行うというように人間とAIが協働していける領域になると予想されます。
AI活用ビジネスの課題になるのは?
AIを活用した新ビジネスが立ち上がる一方で、トラブルも発生しています。
熊本県玉名市の老舗ホテル、立願寺温泉ホテル。一番グレードが高い特別室はダブルベッド2つに半露天風呂付き、ワイン飲み放題などの特典も付いた1泊の料金が3人で3万9,000円。
それが去年9月以降、2,000円台の日が続きました。
帰宅時、「騙されているんじゃないか、後から請求が来たりしませんよね?」と言う宿泊客がたくさんいたといいます。この驚きの価格の秘密はOYOへの加入でした。
OYOとは、インド発のホテル宿泊サービスで、世界80ヵ国で展開し、総客室数は100万室以上です。2019年4月、ソフトバンクなどが出資し、日本法人を設立しました。一番の特徴は宿泊料金をAIが決めること。AIは稼働率を上げるためお客様の予約具合や実績によって料金を変動させます。前述のホテルも稼働率だけで料金を設定させてしまいました。稼働率は上がっても1人あたりの単価が低く、経費などを差し引くと利益は3分の1にまで落ちたそうです。
施設側はOYOの日本法人へ10%前後のブランド料を払う代わりに売り上げの最低保証を提示されます。これで毎月の売り上げが最低保証に届かない場合、差額分を補填する契約でしたが、この最低保証額を巡ってトラブルとなっています。このホテルはすでにOYOとの契約を解除し、同じような被害にあったホテルオーナーに声をかけ集団訴訟を検討しているとのことです。
元OYOの技術者曰く「ほとんどの社員はこのシステム(AI)がそんなにレベルが低いものだとは思わなかった」。日本でのデータ蓄積が足りず、適切な価格が割り出せなかったのだそう。
思考を停止させず、常に向き合う姿勢を
AIが決して万能ということではなく、最終的な判断は人間が担うべきという一事例として挙げました。
私たちひとりひとりが、「AIに任せたから安心」とか、「AI技術は専門的でわからないから」と「AI」というワードの前で思考停止してしまわないよう意識していくことが、これからの時代に求められている姿勢なのではないでしょうか。
それでは、またお会いしましょう。
キャリアアドバイザーA