光り輝く結婚指輪より、ジュエルバーグが食べたい。「面倒臭い」が勝る女性たち



オシャレタウン、奥渋で食らうは「お肉」

オシャレカフェが多いことで人気を誇る奥渋谷。その静かな街並みは、時間を忘れるのにちょうどよくって、なんだかちょっと穴場な感覚がたまらない。そんな奥渋に突然できた、オシャレなお店が『PECOSICE(ペコシセ)』だった。
北海道、十勝の大平牛を使ったメニューを見た瞬間、驚いた。なんかうごくキラキラした輝くお肉がそこには映っていたから。次の女子会は絶対ここにしよう、お店を見たときからそう決めていた。

そしてやってきた、女子会当日。
年末をきっかけに集まった3人の名前は、夏美(なつみ)、愛(あい)、由紀(ゆき)。もちろんすべて仮名である。ここで軽く3人の紹介をすると、夏美は役員秘書で働くバリキャリウーマン、今年30になる。付き合って4年の年下彼氏はいるけど、なんだパッとしない。
愛は、その名の通り愛くるしい見た目をもった、だけどすごく頭はいい専業主婦だ。26歳で結婚する、という野望をぴったりと去年には叶えた。結婚してからは、勤めていた大手会社をスッパリと辞め、今はのんびりと休暇を楽しんでいる。
最後の由紀はというと、とある小さな会社で働くいわばゆるキャリと呼ばれるタイプだ。愛と同い年の27歳で、付き合って2年の彼氏が居るものの、なんだかんだフラフラと外に遊びに出ては気分転換をしている。

数か月に1回、報告したいことがあると集まるこの女子会は、環境・性格が全く違う3人だからこそ面白い。

コースメニューと同じように代わる会話メニュー

3人の会話はいつも、コースメニューと同じように変わる。本当は興味のない「元気だった?」くらいの、当たり障りのないさっぱりとした前菜、というよりはクッションになるような会話だ。お酒がすすむにつれ、そんな会話は一切必要なかった、時間が足りない! と毎回後悔するくせに、この前菜的会話は必ずある。この日、一番最初に自分のトピックスを話したのは愛だった。

愛:ごめんね、私の話していい? 最近、旦那が週5で飲みに行くのにすごくイライラするの。年末だから飲み会が多いのはわかるんだけど、11月の時点で朝帰りが4回…。これって浮気かな?

これには2人も驚いた。開口すぐに新婚1年目の奥様からこんなヘビーな悩みが出てくるなんて思わなかったから。何より、彼女の旦那さんはとにかく彼女のことを好きで好きでたまらない、といった様子だったのに。

夏美:え、いつも誰と飲んでるの? 取引先の人?

愛:会社の先輩なんだって。だけど会社の先輩だったら新婚の男をそんなに連れまわさなくない?

由佳:え、怒ったりしないの? 休日は?

愛:休日の朝帰ってきて、そのまま寝るから休日もごはん食べるくらいでそんなに会話もない。私も機嫌が悪いから余計ね。

由佳:えぇ…。

愛:私が会社を辞めたのが嫌みたい。今までは近しい仕事だったから、お互い報告とか相談をしてたんだけど、急に共通の話題がなくなって会話することがなくなったから多分、外で発散するようになったんだと思う。それに最近イライラして、やっぱり気晴らしも含めて仕事したいなって思うようになってる。

夏美:ま、愛も仕事できるし、割と働きたいタイプだもんね。気晴らしにもういっかい社会に出るのはいいかも。

由佳:いや、でも予想外すぎ…。最初は愛のごはんを毎日食べられる! ってすごい喜んで帰ってたのにね。

愛:うん、で、最近は2人はどうなの? 夏美は?

夏美:うーん。ほとんど変わらないかなぁ、彼氏とも普通に仲はいいし。来年、妹が結婚するって決まったくらい。

この3人の会話は、本当に段取りよく進む。自分たちの環境や悩みを話しては、一緒に悩むではなく次の人の話題に移行する。完全に定期報告会なのだ。

夏美:由佳は? 最近彼氏はどうなったの?

由佳:なんかパッとしないから、別れようかと思ってる。今ちょっと他にいいかな、って思う人も実はいる。

夏美:あ、そうなんだ。でも、前から別れるかもって言ってたよね?

由佳:そう、別れ話もしたんだけど、相手も別れたくないって言ってて。しかもなんだかんだ私も何かあると頼りやすいというか、ほんと楽なんだよなぁって。

愛:あーーー。わかる。もうどんな姿を見せても変わらないは変わらないし、楽って大事だよね。

由佳:飲みにも誘われるし、いい人ってたぶんこれからも出てくるんだろうけど。今更、素の自分を見せられるくらいにまで、土日中心のデートを重ねたり、自分を知ってもらうとか相手のことを知るとかの行為がもはや面倒くさいし果てしなく感じるの。

愛:でも、もうひとりいいかも? って思う人はどうなの?

由佳:うーん。いい人だし付き合ったら多分好きになる。だけど、長く付き合えるかとか、正直わかんないし、どうなんだろうね…。

愛:彼氏をバッサリ切るほどじゃないって、まさにかもね。

夏美:たしかに、私も今他にいい人が誰か出てきてくれてももう、休みを合わせて外に出るとか予定決めるとかも面倒くさいし、感情をそこまで動かされたくないかもね…。最近なんだったらほどほどの友達からのLINEも返したくないし、用件まとめてから話してよって思うし、もうこれからは新しい友達とか要らないかも。ダメなんだけどね…。

由佳:3年前はみんなすごい積極的に行動してたのにね…。

愛:ほんとだよ! ビビる。だけどもう本当に、初恋の時みたいなあの一直線の感情になることってそうそうない…。

由佳:そう、ときめきたいけど、もうお互いを知りすぎてるし、普通にしてる時は、仲が悪いわけではないから結婚するならこの人が理想かも? って思うこともある。

夏美:あぁ~…。

由佳:本当に結婚の話が出たら、また悩むんだろうけど。もはや、そんな想像すらも面倒くさいかも…。

20代前半を思いっきり楽しんだからこそ、今はその疲労感もついてくる。ましてや、今オールなんてしようもんなら、2日ぐらい引きづるくらいに後遺症がひどい。この年になると、あの頃には使いたくなかった”妥協”という案が嫌でも浮かんでくるものだ。

メインで運ばれてきたお肉は本当に”インスタ映え”するようキラキラと輝いていた。

愛:めっちゃ光ってるね!

夏美:私SNSとかしないけど、確かにこれは写真に撮るわ。

由佳:なんかちょっと甘くて、、、染みる…。

愛:染みるって(笑)

キラキラしたとろける甘さのお肉に、ついこんな男性が居たらいいのにと妄想してしまう。だけど、そんなキラキラに、いつか胃もたれする日が来るのだろうか…。なんて切ない話をこの後は繰り広げた。

母親くらいの年齢になると「女子会では必ず病気の話が出る」というのを聞いたことがあるけれど、3人はまさにそこへ向かっていくんだろう。(実際に病気の話も出た)

抵抗したいと思う気持ちと反比例するように、疲れと諦めが支配する私たちの心を癒してくれるのは、結局は指輪よりもお肉だった。恋愛に、仕事に、ちょっと疲れ始めた私たちは、愛よりも旨味がほしいみたい。

この日使ったお店『PECOSICE』

東京都渋谷区神山町4-18
フィル・トップ渋谷神山町1・2階

不定休
営業時間
11:00~15:00
17:00~23:00