今回のゲスト♡ 齊山陽子さん
株式会社PA Communication執行役員
ifca showroom代表
東京生まれ。
前職でトヨタ、レクサス、資生堂、ミシュランガイド日本上陸、ロレアルなど、大規模なプロモーションを経験し、PA Communicationに入社。
Reebok、カシオ、ASICS、ミルボン、Bershka、FOREVER21などの担当を歴任し、PRの戦略立案からプロモーションまで多岐に渡ってプロジェクトを統括。 またワールドに出向しaquagirl ON THE STREETの商品企画を三年経験。AOKIでも商品コンサルや売り場改善などPRにとどまらないアドバイザーを行なっている。
2009年 カンヌ国際広告賞 銀賞を受賞
2013年 文化服装学院特別講師
2014年 1月23日 JFW/IFF講演
2017年~ CIA代表シーユーチェン氏の指名によりクリエイティブディレクター業務を拡大
インタビューする人♡ 渡辺彩季
京都府出身、東京在住のフリーライター。
女性をターゲットにしたメディアを中心に美容、ファッション、ライフスタイルなどの幅広い記事を執筆中。
美容が大好きで、コスメコンシェルジュ、全米ヨガアライアンス、アロマテラピー検定1級、温泉ソムリエなどの資格を取得。
ウーマンダイアローグ#14 【PA Communication/齊山陽子さん】
渡辺:今回のゲストは、PA Communicationの齊山さんです。よろしくお願いいたします!
齊山:よろしくお願いいたします! 私は、PA Communicationという会社の執行役員、
ライフスタイル特化型ショールームifca showroomの代表をしています。
あとは、建築とマーケティングに特化しているCIAという会社でクリエイティブディレクターとして働いています。
渡辺:すごく手広く仕事をされているのですね!
齊山:私は「マルチスラッシャー」という、いろんな仕事をやっている人間です。一つのことにフォーカスするのではなく、需要に合わせていろんなことに柔軟に対応することができるプロフェッショナルを目指しています。決して中途半端にはならないように、全部に自分のポジションを作っていくことを心掛けています。
留学を経験して、固定概念を捨てることができた
渡辺:学生時代に留学を経験して、特に印象深かったエピソードを教えてください。
齊山:大学1年生の頃にスペイン、大学3年生の頃にメキシコ、キューバに行きました。そのなかでも一番印象深かったのは、滞在が最も長かったメキシコでの生活です。
元々私はアートに興味を持っていて、マヤ文明、アステカ文明が大好きでした。留学中は、フリーダ・カーロ、ディエゴ・リベラといったアーティストが住んでいた地域で生活をしていたので、刺激を受けることが多かったです。コヨアカンのマーケットでは、キャンドルやダイダイに染めたTシャツなどのオリジナリティー溢れるハンドメイド商品を売っていました。そういったものを目にしたときに「感性や発想を自由に表現してもいいんだ」ということを学びました。
渡辺:メキシコのマーケット! 行ってみたいです。同じマーケットでも、国によって売っているものや雰囲気が全然違うから、比較してみると楽しいですよね。
齊山:メキシコは個人の固定観念がないんですよ。最初はカルチャーショックを受けたのですが、私はそこがとてもいいなと思いました。「固定観念に縛られず、思うがままに行動していい」という発想を持つこと。この二つが海外から学んだ大きなポイントです。
渡辺:だから、今のお仕事も一つのことにとらわれるのではなく、自分の好きなことを形にしているのですね。
齊山:固定概念を捨てることや型破りの行動をするのは難しいことです。勇気も必要ですし、嫌われてしまうかもしれないという不安もあると思います。しかし、そういったリスクのある一方で、 今まで見ることができなかった景色に出会えるかもしれない。だから、必ずしもマイナスなことだけではなくて、ポジティブに捉えることができるんです。1歩ずつでもいいから、チャレンジすることは大切ですね。
自分が一番好きなものを「職業」にしました
渡辺:現在の仕事に就いた経緯を教えてください。
齊山:この会社に入る前に、レクサスやトヨタ、資生堂、auなどのプロモーションに携わっていました。そこで売り方の戦略を立てることやカスタマーマーケティングの仕事をしていたときに「自分が一番お金を使っていることにもっと仕事をフォーカスしたら?」とアドバイスを受けました。そのときに、パッと頭に浮かんだのがファッションでした。当時の私は、給料の7割ぐらいをファッションに使っていて、おしゃれが大好きでした。
渡辺:給料の7割! そこまでファッションにお金を割いている方は、なかなかいないですね!
齊山:そうですよね(笑) でも、当時の私は「好きなことは仕事にしない」という固定概念を持っていたので、ファッションの仕事を経験したことがありませんでした。だけど、そのアドバイスを受けて「確かにファッションをやってみるのもいいかな」と考えが変わったのです。 そして「少しの間、ファッションの仕事をしてみよう」と思い、今の会社に入社することを決めました。そうしたら、想像以上に楽しくて! 気がついたらもう8年目になっていました。
渡辺:アドバイスをいただけて本当によかったですね! その方の着眼点の良さにびっくりです(笑)
齊山:本当に今の私がいるのは、あの一言のおかげです。私はファッションのキャリアが全くない状態で、 いきなりこの業界に飛び込みました。今の社長は、未経験の私を受け入れてくださいました。
渡辺:社長さんも齊山さんの潜在能力を見抜かれたのですね!
齊山:入社当時は右も左も分からなかったのですが、好きなことって人一倍頑張れるじゃないですか。だから、どんどん成長できたんだと思います。あと、強みになったのが、たくさん服を買っていたこと。情報収集もマメにしていたし、実際に店舗に足を運んでいたので、すぐに業界の現状を把握することができました。だから、ファッションジャーナリストやスタイリストと話をしたときにも、すぐに馴染むことができたんですよね。「ファッションに詳しかった」というのは、未経験からのスタートでも仕事ができるきっかけになったと思います。
クリエーションをするときに準備するものは2つ
齊山:実を言うと、元々1000冊以上のファッション誌を所持していました。引っ越しするときに全てを運び出すのは大変という理由で断捨離をしてしまいましたが、今でも普通の家に比べるとかなりの数の雑誌がありますね。もう本屋みたいになってます(笑)
渡辺:私も雑誌がとても好きで、小学生の頃からファッション誌を読んでいました。好きなメイクやコーディネートのページに付箋を貼って何回も読み返して、お手本にしていました。
私が生まれる前の世代ではありますが、世界観が好きでツイッギーやブリジット・バルドーのフォトブックを持っています。自分がそのファッションを日常的にするわけではないけれど、テイストが好きなので部屋に飾っています。
齊山:自分が着なくても好きなファッションってありますよね! すごくよく分かります。私はファッションの仕事をするときに本からヒントを得ることが多いです。私が実際にクリエーションをするときに必ず準備するものが2つあります。
1つはアートブックのような「ビジュアルから入るもの」、もう1つは文庫本のような「読み物から入るもの」です。どちらもインプットするときに必要不可欠な存在です。
ファッションは最強のコミュニケーションツールです!
渡辺:私は中学受験をしたので、小学校6年生のときは週6日のペースで塾に通っていました。夏休みは、ほぼ毎日夏期講習でお盆以外は休みがなかったんですよ。同じ小学校の友達から海やキャンプに出かけたという話を聞いて羨ましく感じる時もありましたが、もう開き直って「塾通いを楽しんでやる!」と思い、 毎日違う組み合わせのコーディネートで塾に行きました(笑) よくファッション誌で着回し企画のページがあるじゃないですか?あれを実践しましたね!
齊山:いいね! そういう発想、大好き!
渡辺:毎日アイテムの組み合わせを変えて、いろんなテイストのファッションをしていたら、塾のクラスが一緒だった女の子が気づいてくれて! 「夏休み中、毎日違う服の組み合わせだよね。明日のコーディネートを見るのも楽しみにしてるね♪」と声をかけてくれました。それまではあまり話したことがない、違う小学校の人だったのですが、このことをきっかけに仲良くなれました。「ファッションが好き!」というだけで、一気に距離が近づきましたね。私はファッションをコミュニケーションツールだと思っていて、好きな人同士で話をして盛り上がる瞬間が大好きです!
齊山:誰かが気づいてくれたときの心地よさってたまらないですよね! 私は、AOKIのファッションアドバイザーをしているのですが、ベーシックなアイテムにもちょっとした個性を作ると素敵だなと思います。ファッションの規律があるなかでも、少しだけジップが遊ぶというような…… 一見普通に見えるけど実は差別化できるようなポイントを作ります。
渡辺:自分だけのこだわりがあると、テンションが上がりますよね。そして、それがまたひとつのコミュニケーションのきっかけになる! おしゃれは、自分を表現する手段でもあります。 もしかしたら、声を掛けてもらえるかどうかも、そのときのファッションによって変わるかもしれない。
齊山:自分をどういうイメージにしたいかが大切ですね。ファッションは相手に敬意を示すひとつの方法でもあります。その日に会う相手にフォーカスを合わせて、なにを着るかを選ぶとすごく楽しい!
渡辺:完全に同意です。私は以前商社で営業していたのですが、その日のアポイント相手に合わせてコーディネートを決めていました。教育機関に行くときはフォーマルなスーツを選ぶのですが、ポイントで女性らしい淡いカラーのスカーフを巻いていました。アパレルの会社に行くときは、そこのブランドのアイテムを着ていくように。相手にとってベストなファッションを考えて、好印象をGETできたときは達成感が半端ないですよね(笑)
齊山:素敵。ファッションに対して高い意識を持った人が、どの会社にも必ずいるんですよね!
渡辺:フロアが違う人もエレベーターで一緒になったときに「いつも見てる」と声をかけてくださるんですよね。そうするとやはり変化をつけたいなと思って、おしゃれに対してのモチベーションがさらに上がります(笑) ファッションが及ぼすパワーは絶大ですね。
日本とロサンゼルスのデュアルライフを選んだ理由
渡辺:生活の拠点を日本とロサンゼルスの2つにしたのは、なぜですか?
齊山:理由は2つあります。1つは3年前から仕事で日本と海外を行き来していたのですが、おしゃれに定評のあるパリやロンドンの人たちが一斉に「ロサンゼルスが熱い!」と言い出したんですよね。それまでは正直あまり興味がなかったのですが、ロサンゼルスに取材に行く機会が増えました。
2つめは、同じタイミングでロサンゼルス出身のボーイフレンドに出会ったこと。実は婚約して、もうすぐ結婚することになりました! 生まれも育ちもロサンゼルスの彼に「一緒に来ないか?」と言われ、 ロサンゼルスでも生活をすることに。この2つが重なったことに、運命的なものを感じます。私は探求心が旺盛なので、彼が生まれ育ったところがどういう場所なのか気になりました。
渡辺:齊山さんのデュアルライフには、そのような素敵なストーリーがあったのですね! 日本には、1年にどれくらいの頻度で帰ってきていますか?
齊山:1年に6回以上は、日本に帰ってきます。一ヶ月ごとに日本とロサンゼルスを行き来しています。デュアルライフなので、一時帰国と言うよりかは2ヶ所に住んでいるというイメージですね。日本では、主にマネージメントやお客様への対応をしています。ロサンゼルスでは、クリエーションにフォーカスして仕事をすると決めています。
一般の方も展示会に参加できる時代になりました
渡辺:最近では、業界関係者以外も展示会に招待されていますよね。PR会社が一般の方を展示会に招待するのはどういったケースが多いですか?
齊山:以前は、メディアやスタイリスト、モデルなど関係者だけでしたが、SNSが人気になった現在は一般の方も招待できるようになりました。ファッションに関する投稿をしている影響力のある人、ブランドのトーンに合う人にどんどん声をかけています! 実は、ダイレクトメールを送って、直接やり取りをすることもあります。
渡辺:たしかに、最近は家に招待状が届くことが減って、SNSやメールからアナウンスされることが増えましたね! 本当に便利な時代になりました。
齊山:ブランドに直接「展示会に行きたいです!」とアプローチしてくださる方もいらっしゃいます。実際に「ブランドが好きです!」と伝えてくださったら、優先的にお声がけするようにしています。本当にそのブランドの服を着た写真を投稿していて、雰囲気が合う人であれば、こちらとしても喜ばしいです。
渡辺:自分から連絡を入れるというのも、ひとつの手なのですね。ファッション関連の仕事をしていなくても、アピール次第で憧れのブランドの展示会に行けるかもしれないなんて考えたら夢がありますね……。
毎日、幸せを追求していきたい
渡辺:齊山さんの今後の目標を教えてください。
齊山:生活を劇的に変えるということは、考えていません。今やっていることを続けて、ずっと幸せに楽しく暮らしていきたいです。今を幸せに生きることが一番! 幸せを作るものを逆算して、生活に取り入れることが大切だと思います。
あと、毎日眠りにつくときに「今日の自分は幸せだったか?」と考えるようにしています。そのときに今日起きたことのなかで幸せを探す、もしくは一緒にいた人に幸せを与えることができたか振り返ります。
渡辺:私は、今日齊山さんとお話しすることができて、幸せな気分になりました! だから、今夜はいい気分で寝ていただけると思います!
齊山:よかった! 私はいつもそういうことを心掛けています。ビジネスとして結果にフォーカスすることも大切ですが、それは毎日幸せに生きることが大前提です。そういうところが結局、仕事にも影響してくるので!
株式会社PA Communication 公式ホームページ
インタビューを終えて…
PA Communicationの齊山陽子さんをインタビューさせていただきました。
以前の齊山さんと同じように、あえて「好きなことは仕事にしない」と考えている方も多いと思いますが、視点を変えればそれが天職そのものだったりもします。好きなものを嫌いになるかもしれない、という恐れを乗り越えてキャリアチェンジしてみることで、人生がいい方向に変わるということもあるのです。
今は働き方の多様化が進んでいることから、齊山さんのように好奇心や感情を大切にしながら働く“マルチスラッシャー”という選択肢をとることもできます。齊山さんは、とてもいい笑顔で「今が幸せ」と楽しいお話をしてくださいました。
「服装は生き方である」
衣食住のひとつでもあるファッションは、生活に必要不可欠なもの。ファッションがもたらす影響はとても大きくて、自分のキャラクターや見せたいイメージに合うアイテムを上手に選ぶことで、人生が驚くほどに、何倍も豊かになります。
アパレルのPR会社とファッション記事を執筆しているライター。
職種は異なりますが、ファッションに感銘を受けて、その素晴らしさを伝えていきたいというマインドの部分は同じ。こういった共通点が人を豊かにし、新しい出会いを作ってくれるのだと思います。私も齊山さんと一緒に、ファッションが教えてくれた幸せな気持ちを連鎖させていける存在になりたいな、と感じました。ファッションを通じて、ハッピーになる。素直に、たくましく、自由に働く女性はとても美しいですね。