「旅に行くと、心が豊かになる」|#つくるを選ぶ 【死ぬまでに行きたい!世界の絶景プロデューサー 詩歩(Shiho)】



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会社の新人研修をきっかけに作成したFacebookページが、70万いいね!を突破。ベストセラー本となった「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を書籍化した、プロデューサー 詩歩さんにインタビューしてきました。インターネットを使った発信から、書籍へ。その経緯とSNSとの付き合い方、そしてこれからの目標についてを語っていただきます。

詩歩Shiho)
1990年生まれ。静岡県出身。

世界中の絶景を紹介するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営し、70万以上のいいね!を獲得し話題に。 書籍「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」シリーズを出版し、アジア等海外でも出版される。昨今の”絶景”ブームを牽引し、2014年は流行語大賞にノミネートされた。

現在はフリーランスで活動し、旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップ、自治体等の地域振興のアドバイザーなどを行っている。2017年9月には最新刊「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 新日本編」を発売し、シリーズ累計60万部に。


『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』が生まれるまで

―絶景に着目した理由を教えてください!

まず「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」のFacebookページを作った理由が、2年間勤めたインターネット広告代理店での新人研修にあります。その研修の内容というのがFacebookのいいね!数を競い合いなさい、というものだったんです。

そこでコンテンツを考えた時に大切なのが、自分が更新を続けたいと思える内容にする、ということだな、と思って。最初に「旅行」というカテゴリを選びました。当時のFacebookは、今みたいにサムネイル表示とかがなくて、写真が一番大きく表示されるようなプラットフォームだったので、写真から発信する場所にしようと。あとは海外の人にもいいね!を押してもらえるように、絵でわかるもの…で、「絶景」になったというような流れです。戦略的に考えたわけではないんですけど、あとから分析するとそんな感じだったのかな、って。

―タイトルの「死ぬまでに行きたい!」はどこから?

入社する1ヶ月前の卒業旅行で、オーストラリアに行った時に交通事故に遭って、ドクターヘリで運ばれたんです。幸い一命はとりとめたんですが、「死んでもおかしくなかった」と言われるくらいの事故で。単純に「人間っていつ死ぬかわからない」と思いました。そこから、死ぬまでに行きたい場所をリストアップしていこう、というところで「死ぬまでに行きたい!」というタイトルが生まれました。

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」Facebook ページ

―まさかの実体験からだったんですね・・・。「行きたい!」のスポットはどうやって探すんですか?

自分が過去に行ったことのある場所ではなく、これから行きたい場所をリストアップしていくために大事なことは、とにかくリサーチです。本の制作期間が10ヶ月かかるんですが、そのうちの7〜8割がリサーチですね。場所を決めて、その場所を綺麗に収めた1枚を選別する。ざっと25万枚とか・・・。ひたすら画像を検索してすぎて、心が折れそうになることもしょっちゅうです(笑)いい写真だと思ったものは、情報通信者さんから写真を買い取ったり、カメラマンさんに直接コンタクトをとったりしていました。

SNSについて

―Facebookでいいね!を増やすために、どんなところに気をつけましたか?

「いい写真」というものに定義があった訳ではないし、これを満たしていれば「絶景」と呼べような条件もあるわけではないので、とにかくタイムラインを汚さないように気をつけていました。1つ投稿するためにも、写真選びに1時間半、文章をつけるのに30分以上はかけて。プレビューを確認して、ちょっとでも違和感を感じたら、潔く最初からやり直す・・・といったこともありました。スマホでは4行になるものがPCだと2行になるとか、あと2文字で行数が増えるけど・・・といった感じでページ全体の見え方にはこだわっています。

―そのモチベーションはどこから?

すごく負けず嫌いな性格なので、目に見えてわかりやすいものにはすごく徹底してしまうんです。テストの順位だったり、マラソンの順位だったり。それと同じでやっぱり1位をとりたくて、いいね!の数にもこだわりました。自分に妥協したくないというか、「やらない後悔より、やった後悔」って言うじゃないですか? 真面目なんですよね、ひどく。(笑)

―SNSも今はたくさんありますが、それぞれどう付き合っていますか?

一番大事なことは、無理はしないってことです。
役割はそれぞれに分けていて、Facebookはこれまでと変わらず行きたい場所を。今メインにしているのはinstagramで、それは自分で行って撮った写真をあげています。Twitterは一番昔からやっているので、お知らせだったり、ちょっとした裏話だったり、あとは自分の好きな話題をテキストで書いています。大好きな餃子のこととか。一番自由度が高いのは間違いなく、Twitterですね(笑)

―instagramの投稿はご自身で撮った写真だそうですが、自分で撮る時に意識していることはありますか?

こう撮るといい、みたいな共通点はないんですけど、自分が入ることは少ないですね。
あと、目で見るとすごく綺麗な風景なのに、写真にすると「あれ? なんか違う」って思うことってあるじゃないですか? そんな時は、目に見えた景色にまではレタッチします。けど、やっぱり目で見た景色が一番綺麗だと思うので、過度に修正するんじゃなくて、あくまで目に見える範囲まで。青くない海を青くしたり、嘘をつくことはないです。

その代わり、絶景に時期や時間帯に関しては、あらかじめ調べて行きます。どう撮るかというよりは、いつ行くか、なんですよね。正直目の前の景色が綺麗であれば、iPhoneのカメラでも十分綺麗に撮れます。今回の表紙も実は、iPhone6で撮影したものなんです。雲海も気象状況によるので、出そうな日にちに合わせて、5時間くらい待ちました。

こちらがiPhone6で撮られた表紙、長野県にある『SORA terrace』

インターネットの世界と、本を作ることの違い

―「SORA terrace」を表紙に選んだのはどうして?

この表紙、北海道の星野リゾートにある雲海テラスとよく間違われるんですけど、実は東京からも日帰りで行ける長野県にあるのが驚きのポイントなんです。本にするとなると、帯を下に巻いて、タイトルの文字をのせるスペースが必要なので、使える写真と使えない写真を選別しなくちゃいけなくて。これを表紙にしたいと思った写真があっても、使えるかどうかは別になってしまうんです。特に、一眼レフだと、こういった上からの写真は、レンズを通して覗くことができないので、撮るのがすごく難しいんですよね。写真を選んだ後も、本当に印刷できるかがまたさらに難しくて。富山県にある印刷所さんが、職人さんならではの技術で、4日間かけて、この表紙を印刷してくれました。

―すごい。でもこの本って写真はもちろん、時期や予算も書いてあるのがすごく便利ですよね。

もともと、旅行が好きだったんですけど、そこで行き先を決める本がないなと思ったんです。ガイドブックって、行き先が決まってないと買えないじゃないですか。だけど写真集だと、場所とその景色が見られる時期がわからない。だから写真集とガイドブッグの間になるものがあればいいな、と思ってこういった情報を載せるようにしました。

絶景までのアクセスやオススメの時期、予算、旅のプランまで具体的に教えてくれるページが魅力的

―「フォトジェニック」という言葉が注目されましたが、まさに絶景と相性が抜群ですよね。

そうですね。写真とかカメラ好きなおじさん、といった人たちはずっと居て。そういったカメラマンさんたちが足を運んで発見した場所が掘り出されて、今フォトジェニックと呼ばれるスポットになっているんだな、って思います。そんな人たちのおかげで自分もキュレーション(収集する)活動が始められたな、と。

―ウェブの書籍の大きな違いはどんなところに感じましたか?

ウェブと書籍が大きく違うのは、印刷所に入ってしまうともう変えられないといったところです。やっぱり、どれだけやっても、何人がダブルチェック、トリプルチェックをしても誤植ってなくならないんですよね・・・。前回発売した4冊目に関しても、これほどかっていうほどチェックを繰り返したはずなのに、やっぱり2ヶ所間違っていて。悔しいのはもちろんなんですけど、これだけチェックしたんだから仕方ない、と思うくらいです。(笑)

―なるほど・・・。インターネットも上手く使いこなされている詩歩さんですが、これから挑戦していきたいことはありますか?

インターネットはやっぱり移り変わりが早いので、その時代の流れに沿いながら、先を見てやっていければいいなと思っています。節目として2020年がやってくるので、日本の絶景をもっと海外の人に知ってもらえるようなことがしたいな、と留学もしました。というのも私のインスタはなぜか、韓国人のフォロワーさんが多くて・・・感性が似ているのかもしれません。そういった海外の方にももっと魅力的だと感じてもらえるように、英語のディスクリプションをつけたりして、日本のマイナーな場所にも足を運んでもらえたら、と思っています。

―最後に、これから読者の方にオススメしたい絶景を教えてください!

これからの季節にオススメなのは京都にある瑠璃光院です。八瀬にある寺院で、書院と庭園があります。

瑠璃色に輝く浄土の世界を表した「瑠璃の庭」の紅葉

この写真のテクニックも面白くて、水に反射した紅葉なんじゃなくて、実はこれ、ピカピカに磨かれた書院の机に紅葉が映っているんです。この写真の撮り方がすごく人気になって、みんな机にへばりついて撮影するんですよ。紅葉の時期はとても綺麗なので、オススメです。

―ありがとうございました。

終わりに

心が豊かになる旅の提案をしてくれる世界の絶景プロデューサー詩歩さんは、ツールごとの特徴を十分に活かし、さらなる活躍を広めています。シンプルに、時には計算的にそのブランド力を高める姿は、私たち個人だけでなく企業も参考にしていきたいところです。

日本にも、私たちが知らない魅力的な場所はたくさんある。「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」最新刊の「新日本編」は2017年9月7日から発売されています。まだ見たことのないお気に入りの絶景を、ぜひ見つけてみてください。

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