商談は相手をコントロールすることです。実は、相手に飲ませるだけで説得力の上がる物質があることがわかりました。しかも、ソレは誰もが簡単に入手できるもので、コントロールしたい人に飲ませるだけで、説得率が35%も増加するというのです。その成分は一般的に「カフェイン」のこと。
説得力強化薬カフェインの効果
説得研究の権威のロバート・B・チャルディーニは著書の「影響力の武器(実践編)」を読んでいましたところ、カフェインを飲んだ人は、説得内容に好感を持ち、受け入れやすくなり、コントロールされやすくなるという記載がありました。カフェインには、覚醒・興奮作用のほかに、利尿作用があることが知られています。カフェインはダイエットにも良いということもいわれています。今回、カフェインには説得を促す効果もあることがわかったのです。コーヒーや緑茶に含まれるカフェインなら、私たちも日常的に飲んでいますので、相手に飲ませるのも容易であり、法的に問題なく、健康を害する危険はありません。
説得率を35%増加させた実験って?
科学者のパール・マーテインたちは、カフェインによる説得力を高める効果についての実験を行いました。実験では、カフェインを入れたオレンジジュースとカフェインの入っていない2種類のオレンジジュースを用意しました。ちなみに、カフェインの量はエスプレッソ2杯分だったそうです。そして、実験参加者(被験者のこと。最近では参加者と呼ばれています)を二つのグループに分け、一方のグループには、カフェインが入ったジュースを、他のグループの参加者には、カフェインが入っていないジュースを飲んでもらいました。
その上で、その時に話題になっていた事柄についての記事を読んでもらい、好意的かどうかを判定してもらいました。その結果、カフェイン入りのジュースを飲んだグループ参加者は、カフェインが入っていない飲み物を飲んだグループより、35%以上の人々がその記事の文章を好意的に受け取ることがわかったのです。
説得率35%増の効果とは?
説得率が35%増えるという結果となったのですが、みなさんは、この数値をどのようにお考えになりますか?
「35%だけか?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。今まで、200人の見込み客がいて、平均の成約率が5%だと仮定すると、販売件数は10件になります。これが、35%も増えるということは、成約率は6.8%に跳ね上がり、販売件数は、13.5件にも増加することになります。たった35%、されど35%。仕事での勝率が上がるのであれば、ぜひ積極的に取り入れていきたいところですよね。
カフェインの効果が発揮されない場合
しかし、喫茶店で、顧客にコーヒーや紅茶を飲ませても、何の根拠もなく、「この商品を買ってください」と言っても説得できるわけではありません。実は、「カフェインを飲ませれば、相手をマインドコントロールできる」ほど単純なものではないのです。この効果が働くためには、ある条件が必要だったのです。パール・マーテインたちは、カフェインを摂取した実験参加者に、根拠に乏しい記事を読んだ時の実験も行いました。その結果、カフェインが入ったジュースを飲んでも、裏付けのない記事を読んだ場合は、説得効果はなかったとのことです。
喫茶店で商談をするケースもありますが、顧客などの相手にコーヒーやお茶をいくら飲ませても、十分な根拠を示すことができなければ、相手を説得することはできないということです。つまり、勝率が上がったからと言って、手を抜いてはいけないということなのです。
カフェインの含有量が多い食品とその他の効果
カフェインについては、コーヒーのほか、緑茶、ウーロン茶、紅茶などに含まれており、お茶を飲みながら相手を説得すると、相手をコントロールしやすくなるというわけです。
カフェインには覚醒作用や利尿作用があることが広く知られていますが、そのほかにも効果があります。全日本コーヒー協会によると、カフェインは摂取後、約30分後で脳に到達します。そうすると、計算力や記憶力を高め、疲労を抑え、運動能力の向上に役立つという研究があるとしています。
大事な打ち合わせは商談の勝機はカフェにあり⁈ カフェインの力を取り入れて
以上のことから、顧客にプレゼンテーションを行うときは、いつもより濃い目のコーヒーやお茶をより多く顧客に飲ませることで、この効果が得られるということです。あなたのプレゼンテーションが優れていれば、カフェインの効果が得られますが、逆に、内容が劣っているものは、この効果が得られなくなりますのでご注意ください。
参考文書
影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ (著)、社会行動研究会 (翻訳)