戦略的キャリアを積んでいく #つくるを選ぶ 【ポジウィル株式会社代表 金井 芽衣】



[記事内に広告が含まれています]

「5年で上場を目標にする」―――。
そう話すのは、ポジウィル株式会社を設立した金井芽衣さん(28)。
若手キャリアの支援を中心にオンライン相談を実施。現在は、スタートアップ幹部(候補)転職・副業・起業など、その人に合ったキャリアの選択肢の提示が可能なオンラインサービス、逆境を乗り越えた経験者に相談ができるプラットフォームを開発中です。

若き起業家として活躍する、彼女のこれまでとこれからについてインタビューしてきました。

金井芽衣さんプロフィール

地元の高校を卒業後、保育の短期大学へ。保育士と幼稚園教諭の資格を取得。
短大卒業後に法政大学キャリアデザイン学部に編入。
卒業後は、リクルートキャリアに入社し、人材紹介部門の法人営業(RA)として活躍。
リクルートキャリアを退職し、2017年8月にポジウィル株式会社を設立。キャリアコンサルタントの国家資格を活かし、若手キャリア支援を続ける。

短大からの編入が一番大きかった

金井さんが今のキャリアを築いた、起業を選んだきっかけを教えてください。

高校時代は、全国優勝常連校のチアリーディング部に所属していました。正直、高校時代はチアと恋愛しかしていなかったです。成績に関しても、240人中239位。しかもその240位の人は途中で退学をしていたので、実質は私がビリだった……という感じでした(笑)。

勉強を1分もしたことのなかった私は、子どもが好きだという単純な理由で保育系の短期大学への進学を決めました。また、両親が離婚していることもあって、学問として育児をきちんと学びたいな、と。
短大で保育士の資格と幼稚園教諭の免許を取得したのですが、実習で児童養護施設に2週間泊まりこみをしたことがきっかけになり、“親世代の幸福度は子どもたちにも起因する”と考えるようになりました。

施設には、家族に会えず、虐待やネグレクトをされて心身共に傷だらけの子どもたちの姿がありました。その時に、自分自身と照らし合わせ、私は今まで家族としての形に固執して親に期待をしすぎていた、という事に気づいたんですね。また、私自身今まで見えていなかった現実を知り、無力であるということを痛感したからには、子どもを育てる親世代の心の問題や環境について何か解決できることをやっていきたいという強い想いを抱きました。

その結果、大学に編入することを決意しました。そこからは2年で4年分の単位を取得しなければならない短期大学の勉強をしながらの編入試験の勉強。周囲が遊んでいる中、毎日2時間睡眠で勉強漬け。本当に辛かったですね……(笑)
モチベーションを上げるために色々な大学を見に行きましたが、心理学・教育・経営学を学べるの法政大学キャリアカウンセング学部に魅力を感じました。子どもを虐待することになってしまった親の心理はどんなものなのか、そしてそれが起こってしまう前に改善をしたい。そう思ったのがきっかけです。

生活の中で、仕事は8割を占めるといわれています。他者に攻撃的な行動を起こしてしまうのには、仕事も一部起因している可能性があるのではないか、という想いがあり、大学卒業後は、人の転機に携わることのできるリクルートキャリアへ入社することを決めました。

初めて入社したリクルートキャリア。その経験はどうでしたか?

大阪で2年間新規開拓の営業をしました。1年半は全くと言っていいほど売れなくて、しばらくは飛び込み営業を毎日10社以上、テレアポ100件、リスト300件こなす、いうようなゴリゴリの営業をしていました。
知り合いもいない、関西弁キツイ、売れない……としんどくなった私は東京に帰りたいと上司に申告。「売れていないし何も出来ないのに、他の部署にお前を出せない」と言われたことをきっかけに、自分自身の現状を認識し、結果を出すことにこだわるようになりました。

東京ではメガベンチャーを半年、その後はバックオーダーの多いSI系の企業(採用人数が多い)を担当することになりました。毎月の表彰等を受け、新人教育、風土情勢の委員の立ち上げなど充実した
毎日を過ごしていましたが、27歳までに起業しようという自分の意思は固まっていました。

https://twitter.com/meiem326/status/1020096352955404288

金井さんのTwitterより

戦略的キャリアを積んでいく

起業の意思が固まったのには、理由があったんでしょうか。

父、祖父が経営者だったということが大きいのかもしれません。ないなら作ればいいという教育を受けていたように思います。父に、事業が軌道に乗るまでは3年かかると思ったほうがいいよと言われていたこともあり、27歳までに起業、30歳くらいには結婚をしたいな、というイメージがありました。

今回VCから投資を受ける際、自分のライフイベントをどうしよう……と悩んだのですが、「結婚しても子どもができても、それでも会社が発展するような仕組みを作れば叶えていけるよ。むしろそれを体現して行こうよ」と投資家の方が背中を押してくれて。感動しましたね。やってやろう、と。

金井さんと話していると、目標と一緒に具体的な数字が出てくるなぁと感じるんですが、すごく計画的にキャリアを積まれていますよね。

女性って特に、突然のライフイベントによってキャリアの選択をしがちな気がしていて、
例えば、結婚することになったからとりあえず会社を辞めてみるとか、子どもができたから働き方を変えたいけど今の会社じゃ無理だよなぁとか、旦那さんが転勤することになったけど仕事どうしよう、とか……。

だけど私は、戦略的にキャリアを積むことでそういった悩みを少しでも解決に近づけるのではないかなと思っているんです。キャリアは不確実なことの連続性でできているので、決めたからと言ってもそれ通りになる訳ではないとは思いますが、イメージすることは大切かなと。
例えば、30歳になった時にどんなライフスタイルを送りたいか、だったらどんなスキルを身につけておくべきか、といったように選択肢を増やしておくことが大切かと思います。

結婚して、子どもを産んで、リモートで仕事して……とかって理想があるなら、それを叶えるためにはどんなスキルがあればいいのか。今見えている選択肢の中から選ぶのではなくて、自分の持ち味をベースに、あらかじめ選択肢を増やしておくことが大切なのではないかなと思っています。男性に精神的にも経済的にも依存しないように自分の足で立って生きていくためには覚悟が必要なのかな、と。

戦略的にキャリアを積む、って大切ですね。心が折れそうになったりとか、そういうのはなかったですか?

たくさん挫折もしたし、正直逃げ出したくて仕方ないと思ったことも何度もあります。けど、やるって決めたからには、やるぞ! という気持ちが大きいですね、日々。

感情もタスクも抱えられる限度があると思うんです。そのためには、いらないものを定期的に可視化して捨てていく事が大切かなと。

どうしたら自分の日常がインスタ映えするか、ということよりもシンプルにどんな人生を過ごせたら幸せかということを考え、ありのままの自分を愛せるような選択ができたら素敵だなぁと思います。

キャリアとライフイベント、全ての窓口に

現在若手支援を中心にキャリアカウンセンリングを行なっていますが、今後はどうなっていきたいですか?

キャリアもライフイベントも何か悩んだら、相談できるし実際に背中を押してくれる、という会社にしていきたいと思っています。

正直、転職エージェントに相談に行っても登録することも面倒、求人票が100件とか送られてきて20—30社受けましょうって言われるのって大変だよなと。しかも求人を紹介されずに相談したい、副業や起業するという選択肢もありかも? って人はどこに相談にいけばいいか分からないと思うんです。

転職することが全てではないし、現職で頑張ることも、副業することも、起業することも、プログラミングを学んでみることも人それぞれに合う選択肢があると思うんです。
なので、フラットに相談が可能なキャリアの窓口になっていきたいと思っています。

もう一つ、逆境経験をタグ付けし、同じような悩みを抱いている人がその逆境を既に乗り越え、自分の力に変えている人に相談できるプラットフォームを作っていこうと思っております。

メディアやテレビなどで誰かの成功経験を聞くことにはもう慣れているからこそ、逆境の経験を消化し自分の力に変えた人と、経験者に相談したいがマッチング出来るサービスです。
経験って一人一人違うし、インフルエンサーじゃなかったとしても同じ境遇の人にだからこそ話しやすいことってあると思うんです。痛みを理解できたり、こんな風に乗り越えたよっていう提案ができたり。

自分にとってマイナスだと感じる部分や経験って、すごく魅力があると思っています。その経験にタグをつけて、共感をする仲間とアクションの手がかりを探る。仕事はもちろんだけど、例えば「離婚経験がある」とかでもいいと思います。一見ネガティブに思えることも捉え方を変えることで自分の力に変え、その経験を開示することで自己肯定できる環境を作りたい。相談した人は、他のことでは相談を受ける側になる、ということもあると思います。ライフイベントもキャリアも含めて、自分の経験をお金にも変えていけるようなCtoCの副業ツールとしても拡大していけたらいいなって思ってます。

見えている選択肢だけでなく、知らなかった選択肢を知り覚悟を持って前に進める人を増やすこと。一人で抱えて悩む前に、誰かに相談する文化を作っていきたいです。

終わりに

社会的な「負」を目の当たりにしたことをきっかけに、自分の使命を感じ、戦略的行動を重ねてきた金井さん。使命をまっとうするための努力を惜しまず、実現までつらぬく姿には、「カッコいい」意外の言葉が見つかりません。次回は、女性のキャリア論について中心にお話を伺います。