【マネジメント】人間関係を円滑にするカギは「傾聴スキル」を高めること!



モチベーションは最悪、荒廃した支社の40人の反抗者たち

H支社の規模は全国100支社中、下から数えたほうが早い弱小支社でした。当時、N生命は経営破綻が囁かれている状態で、お客様の不信感もあり営業ウーマンのモチベーションは最悪でした。

このような中で、着任後一ヶ月でキャンペーン月となります。全国の支社が売上目標の達成率を競うのです。支社長の指導力の見せ所であり、目標数値達成のための戦略を練らなければなりません。
そこで、営業ウーマンの協力を求めるために全員と個別面接を行いました。しかし、面接では、彼女たちは日頃のストレスを支社長の筆者にぶつけてきたのです。残念ながら、協力を申し出てくれたのは2人しかいませんでした。中には「嫌だよ」などという人間もいる荒廃した職場でした。

突然の奇跡!日本一を記録

そして、落胆と不安のうちに、キャンペーン月に突入しました。面接に失敗し、成果は期待できませんでしたが、その時に奇跡が起きたのです。N生命では、一週間ごとに全国的な売上集計があるのですが、第一回目の集計で断トツの日本一になってしまったのです。あれだけ反発していた営業ウーマンたちが協力してくれたのでした。

キャンペーンの期間は2ヶ月間でしたが、この勢いは収まることはありませんでした。販売の1ヶ月が経過した時には、キャンペーンの売上目標を完全に達成。営業ウーマンの説得に失敗した新米の支社長がベテラン支社長でも困難な売上基準を半分の期間で成し遂げたのでした。素晴らしいスタートダッシュでした。彼女たちが仕掛けたサプライズだったのでしょうか。筆者は感動して涙を隠しながら、お礼を言ったものです。

反抗者たちが味方になった理由は説得に失敗したこと

弱小支社の引き起こした奇跡は、営業ウーマンの説得に成功したことによるものではありません。説得に失敗したからです。

何年もこの出来事を理解できないまま不思議な記憶として残ることになりました。その後心理学を学び、この支社での不思議な出来事が傾聴の効果であることがわかりました。“傾聴”というのは耳を傾けて相手の話を集中しながら聴くスキルのことです。説得に失敗した筆者は、相手の言葉を聞かざるを得ませんでした。このことが、彼女たちから信頼され、彼女たちの心を動かし協力しようという気持ちをもたらしたのでした。

「傾聴のスキル」の効果

読者の皆さんは、「話を聴くだけで信頼関係が深まるのか?」と不思議に思われるかもしれませんが、傾聴はカウンセリングで使用されている理論に裏付けされた相手の発言を促進するスキルです。相手が喋らなければカウンセリングになりません。傾聴のスキルを使うと、相手はカウンセラーを信用してドンドン喋りだします。また、話すことは心の中のモヤモヤを吐き出すことですから、相手のストレスを解消する効果があります。

傾聴すると“返報性の原理”が働きます。返報性の原理というのは、他人から受けた好意に対して、好意で返さなければならないと考える心理です。傾聴のスキルを使うと、相手は「信頼してくれている」と感じて、そのお返しにカウンセラーを信頼するようになります。

筆者の場合、傾聴のスキルを使用したために(ケガの功名でしたが)、ストレスに晒された彼女たちの心を癒してくれたお返しに協力しようと考えた人もいたと思います。また、「自分を頼りにしてくれた」お返しに自分も信じて協力しようと考える人もいたはずです。あるいは、「勝手なことを言いすぎたので、可哀想になった」という心理が働き、協力しようという気になった人もいたでしょう。この支社の営業ウーマンたちは、本当は優しい人たちだったのです。

簡単な傾聴のスキルの使用法

傾聴は相手に喋らせることで効果を表します。ですから、相手の発言を促進する必要があります。それには、次のスキルがあります。

① 傾聴する態度
きちんとした姿勢で相手の目を見て「あなたの話を聴いていますよ」という態度。
② 相手の発言に頷く
頷くだけで、相手の発言量が50%も増えることが実験で明らかになっています。
③ 合いの手
「はい」「なるほど」「それから?」などの合いの手を打つことで「あなたの話を聴いていますよ」という気持ちを表す。
これで、相手はドンドン喋りだし、傾聴の効果が得られます。

この出来事は感動的な奇跡の物語でした。部下の指導に手を焼いている方、部下の協力をしてほしいとお考えの方には、全員面接がお勧めです。また、傾聴のスキルは、職場や顧客との人間関係の構築や改善に有効なスキルです。ポイントは相手を説得することややり込めることではありません。相手の話をしっかり傾聴するだけです。ぜひ使ってみてください。