「良い転職」を叶えるためには
Cinq読者の皆様、こんにちは。
人材紹介業界16年目のキャリアアドバイザーAと申します。
私の社会人生活、このままでいいのかな。
転職したい、けどなにからはじめれば良いんだろう?
そんなモヤモヤを抱えた方に向けて、人材紹介業界の裏側のお話を交えてお伝えしていきます。
前回、前々回と、「やみくもにスカウトサイトに登録するのは危険!」とお伝えしました。自分にどんな武器が備わっていて、何を売りに転職市場で戦うか。自分という「商材」を理解していないうちに情報の渦に巻き込まれに行くのではなく、冷静に自分の価値を分析してから。その準備が整ってからと、今後も繰り返しお伝えしていきたいと思っています。
前回、
「私は、何ができる人なのか」これを、今夜書き出してみてください。と皆さんにはお伝えしました。頭で考えているだけではダメだと。
本当に、これを試してみた方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか?
恐らく、多くの方はまだ試してみていないのではないかな? と思っています。今回は、転職前の事前準備についてもう一度お伝えします。是非、今夜書き出してみてくださいね。
キャリアコンサルタントは30秒で転職者を見極める
ご本人が満足する転職、いわゆる『良い転職』をする方の共通点がいくつかありますが、その一つとして【フットワークが軽い】というものがあります。
興味がある場所にすぐに出掛けていく。良いとアドバイスをされたことをまずは実行してみる。むやみに疑ったり、考え込んだりせずに、良さそうだと感じたことにすぐに取り組む方のほうがチャンスを掴みやすいのでしょうね。
ところで、皆さんは「人材紹介会社のキャリアコンサルタントが、人材のどんなところを見ているか」知りたくないですか?
私が16年前人材紹介業に飛び込んだ時、最初は「面談にいらっしゃる転職者にお茶を出す」という仕事を任されました。受付の電話で来社理由をきき、お茶を出し、下がってくる。
仕事の内容はそれだけです。転職者との接点は、せいぜい30秒程でした。
そして、戻ってくると必ず訊かれました。
「今の人は、売れそうだった? 売れない感じだった?」
最初は「言葉もほとんど交わさず、応募書類もみていないのに、売れそうか売れなさそうかなんてわかるわけないじゃない!」と驚きました。正直、「そんな先入観をもって転職者と対峙して良いんだろうか…?」とも思いました。
ですが、上司は某大手人材紹介会社で年間数千万円も売上げた実力者です。
きっと、この指示には意味があるに違いない。
そう思い、私なりに「売れそうな人でした」「今日の方はちょっと…」を伝えるようにしてみました。
チェックしたポイントは、こんな感じです。
●挨拶が爽やかかどうか
明るい雰囲気の挨拶が出来る方は、転職理由もきっと前向きなんだろうと考えた。ご自分に自信のある方も、しっかりした挨拶をされるように思います。
●私の目をみて挨拶してくださるか
担当するキャリアコンサルタントだけでなく、裏方の事務の女性にも丁寧に接することが出来る人だと考えたからです。
●お茶を出した時に、「ありがとうございます」と言えるか
当たり前のことだと皆さん思っていらっしゃると思いますが、実は10人中2人くらいしか「ありがとう」と仰いませんでした。ちなみに、人材紹介会社経由で転職が決まる「決定率」ですが、18%くらいでした。不思議なことですが、同じような数字なのです。
●服装に清潔感があるかどうか
●靴はキレイか
企業面接の時には張り切ってクリーニングに出したスーツを着て、髪もキレイにセットして…と気を遣う方も多いと思いますが、紹介会社に相談に行く時にはそこまでの気を遣う方はあまりいない=素のご自分に近い状態で来られる方が多いです。
素の状態で清潔感がある方は、いろいろな企業にすっとなじんでいける「人としての基礎」が成っているのではないか、と仮説を立てたわけです。
そのうち「今日の方は売れそう」と報告すると、上司はその人の応募書類を見せてくれるようになりました。
「履歴書・職務経歴書を読んで、【この人はどんな人か】きちんと想像しなさい」ということです。
始めた当初は、「売れそう」と思った方の書類が貧相だったり、失礼ながら「売れ無さそう」と感じた方の職歴が素晴らしいものだったりしましたが、これも不思議なことに、何度も繰り返すうちに、だんだん「お茶出し時の印象」と「職歴」が合ってくるようになりました。
ここまで書いてきて、「人材紹介会社ってそんな感じで値踏みしてくるんだ…」と引いた読者もいらっしゃるのかもしれません。ですが、これがリアルなキャリアコンサルタントなのです。
読者の皆さんの中には、人材紹介会社に相談に行けば、自分のキャリアに関する悩みを聞いてくれて、適切なアドバイスをしてくれて、「良い会社」を紹介してくれるのがキャリアコンサルタントだと考えていらっしゃる方もいるかもしれません。ですが、それは違います。
多くのキャリアコンサルタントは、転職者の応募書類を見た瞬間から「自社が紹介しやすい、どの会社に紹介したら売り上げが立ちやすいか」を考えます。
面談に向かう前に、「この会社のこのポジションに紹介しよう。」と決めていて、転職者に「受けます」と言ってもらうためにどんな話をしようか、作戦を練っているものなのです。
中には、「今の会社にとどまったほうが良いですよ」とアドバイスする場合がありますが、それは、「この経歴でこの希望条件に沿うような会社は、(自社には今のところ)ない」と判断した。というパターンも多いのです(例外はもちろんありますが)。
ですから、人材紹介会社に頼る前に、じっくりと準備すべきはやはり「職務経歴書」。
売れているキャリアコンサルタントが「この転職者の経歴は売れる!」と思ってくれるような職務経歴書をまずは作成することです。
何故なら、売れているキャリアコンサルタントほど「売りやすい会社」を数多く抱えているからです。
選択肢が多いキャリアコンサルタントに担当して貰うことが、人材紹介会社をうまく利用する第一歩だと理解していただければ良いと思います。
そのために、しつこいようですが、もう一度。
今夜「私は何ができる人なのか」を書き出してみてくださいね。
そして、「お茶出しの時の姿勢」。
これは、お気付きのように「普段の人との接し方」を考えれば、毎日磨けるポイントです。普段の自分の人としての在り方を磨く=当たり前のことを当たり前に行うこと と気付いた人と、そうでない人との毎日の積み重ねの違いが表れるところです。
是非、今日から気を付けてみてくださいね。
キャリアアドバイザーA