挨拶を変えるだけで交渉の承諾率が2倍にアップ⁈ 心理学を用いた会話術



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挨拶で交渉の承諾率をアップさせるコツって?

「こんにちは、ご機嫌いかがですか?」
これは、私たちが普段何気なく使っている挨拶の言葉に見えるはずです。しかし、説得研究の権威のロバート・B・チャルディーニ著書の『影響力の武器』によると、この挨拶である使い方をするだけで、交渉の時に、相手から2倍の承諾率を引き出すことができるというのです。

慈善団体で使われている挨拶のテクニック

アメリカの慈善団体で使われている挨拶のテクニックを紹介しましょう。「How are you ?」という何気ない挨拶をしますが、この挨拶は友好的に見せるだけではありません。このようなお決まりの挨拶は、「I’m fine. Thank you.」という中身のないお定まりの回答を促す効果があります。
しかし、この回答を得た途端に慈善団体の人は、仕事を開始します。「それは良かったです。本日お電話を差し上げたのは、恵まれない人々を支援する募金にご協力いただきたいと思いまして……」という具合に話を展開してしまいます。

「I’m fine. Thank you.」(元気でうまくやっている)と答えてしまった人は、恵まれた環境にある自分で認めてしまったことから、ケチな人間と見られないために、慈善に協力せざるを得なくなるというのです。

挨拶をするだけでクッキーを購入してしまう実験

挨拶をするだけで、このような心理が働くとは、信じられないかもしれませんが、このことを証明する、とある研究があります。消費者行動の研究家のダニエル・ハワードはテキサス州ダラスの住民に電話をかけ、飢餓救援協会の人がクッキーを売りに行っても構わないかと尋ねました。「このクッキーの収益は貧しい人たちの食事の提供に使われる」と説明したのです。
この依頼の仕方を研究では「標準要請アプローチ」と呼んでいます。この方法で同意が得られたのは18%にすぎませんでした。
これに対して、依頼者がお定まりの挨拶をして、お定まりの回答を得たうえで、標準要請アプローチを行うといくつかの変化が起こりました。

① 電話を受けた120人のうち、108人(90%)がお定まりの好意的な挨拶をしました。
② このような好意的な挨拶を交わした人々の後で、標準要請アプローチを行うと、32%の人がクッキーの訪問販売に同調しました。標準要請アプローチのみの場合に同調を得られたのは18%。なんと約2倍になったのです。
③ そして、訪問販売に同意した人の89%が、訪問を受けた時には実際にクッキーを購入しました。

この現象をロバート・B・チャルディーニは“一貫性のルール”によるものだと説明しています。一貫性のルールとは、一旦コミットしたことには逆らえないという心理です。何気ない挨拶で自分が恵まれた存在であることをコミットしたことで、そのイメージに縛られたというのです。
詳しく説明すれば、お定まりの挨拶を返したことで、自分が恵まれた存在で“良き市民”あることを認識させる効果があります。これに引き続き、恵まれない人々への援助の誘いがあり、恵まれた存在の“良き市民”としては慈悲深くあるべきだと考えて、拒否することができなくなったというのです。

「いい加減な人間」に見られたくない“一貫性のルール”

「優柔不断」「朝令暮改」という言葉がありますが、私たちは、このようなレッテルを張り付けてほしくない、と思う生き物です。私たちは、他人からこのように見られることを極端に嫌います。

その理由は、太古の私たちの生活にあります。私たち人間は他の動物より非力であり、マンモスなどの獲物を狩るときには、お互いに協力する必要がありました。人間は社会的動物であり、一人では生きていけなかったのです。そのために、生き残るためには、グループ内では信用される必要がありました。そして、現代においても、人間関係をスムーズにすることや商談や恋愛を有利に運ぶためにも、信用される必要があるのです。
これらのことから、私たちには、いい加減な人間ではなく、一貫した人物と見られたいという心理が醸成されていったという経緯があります。

普段の何気ない会話をうまく利用して

挨拶で交渉の承諾率をアップさせるためのポイントは、相手が恵まれた環境にあることをイメージさせることです。これで、相手に一貫性の原則が働くように仕向けるのです。簡単に言えば、 プライドをくすぐること
これから、提案することが世の中の役に立つことを説明していきます。

例えば、環境保全に役立つ商品をクライアント企業に紹介する場合、「こんにちは、最近はいかがですか?」という挨拶をすると「どうもありがとうございます」や「まずまずです」という言葉が返ってくることでしょう。そうしたら、「それは良かったです」と切り返します。このようなごく当たり前の挨拶を交わした後に、「御社は、環境保全に取り組まれていますが、本日は、環境保全に役立つ新製品をご紹介に来ました」と話しましょう。きっと、耳を傾けてくれることでしょう。
とても自然で使いやすい挨拶です。ぜひおまじない代わりに、取り入れてみてくださいね。