転職せずに年収をアップさせたい! 現職に務めたまま給与交渉するには?



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今の会社で、年収をアップさせるには?

おはようございます。キャリアアドバイザーAです。
まず、台風19号で被災された地域にお住まいの皆様に、心からのお見舞い申し上げます。
今年も自然災害の多い年ですね。Cinq読者の皆様、普段からの備えは万全でしょうか?
私が今お世話になっている企業では、災害対策用に全員分のヘルメットと乾パンの缶詰と飲み水をペットボトル3本分備蓄していました。台風直撃の土曜日の出勤に関しても、二日前に営業停止の指示が出ており、有難く感じました。
何事もなかったらそれでよし。何かあったら一大事です。こういったところに従業員や顧客に対する企業姿勢が表れるものだなと思っています。

さて、本日のテーマは、「現職にとどまったまま給与交渉するにはどうしたらいい?」という質問についてです。
Cinq読者の皆様には女性が多いですが、女性は全般的に変化を嫌う傾向があります。「現職にとどまったまま」、つまり転職によって環境が変わるリスクを避けたいけれど、年収はもう少しアップさせたい、そういった気持ちの表れたご質問だなぁと感じました。

転職せず給与交渉を行うためには

さて、「給与交渉」というキーワードで検索すると、やはり転職サイトが引っかかってきます。そのいろいろな転職サイトを見ると、こう書いてあります。

「転職エージェントに登録して、自分の市場価値を知りましょう」

結論から先にお伝えすると、転職エージェントに登録しても、現職との給与交渉のベストカードにはなり得ません。もちろん、転職も視野に入れての行動であれば、自分の市場価値と現職給与とのギャップを知ることはとても大きな意味がありますが、あくまで「現職にとどまり」つつ「給与交渉」する場合には注意が必要です。

転職にとどまったまま給与交渉するのに「他社だと私の価値は●●万円です」と言ったところで、「それって、転職活動しているの?」「そうなの?じゃあその会社に移れば?」という流れになるリスクがあるからです。

これからも長く勤めたいと思っている企業であればなおのこと、給与交渉はスマートに行うべき。「転職エージェントに聞いた自分の市場価値」を振りかざして仮に給与が上がったとしても、このような交渉をしたことによって、居心地が悪くなってしまったり、「いずれ転職するリスクのある人」認定されてしまっては、本末転倒ではないでしょうか。

もっとスムーズに、効果的に給与交渉するためには、いったいどうしたら良いのでしょうか。

今の給与額はどうやって決まっている?

そもそも、今のあなたの給与額は、どうやって決まっているのでしょうか?
各々の会社の給与水準で、あなたの給与額は決まります。外資系金融機関のような「成功報酬方式」で給与が支払われる企業もありますが、大概の日本企業は「必要経費方式」です。

「必要経費方式」とは、簡単に言うと「労働者として生きていくのに必要な分を給与として渡そう」ということです。つまり、経営者は「労働者として皆さんが明日も今日と同じように働けるように必要な経費」を給与として支払うということ。これを、マルクス経済学では【労働の再生産コスト】と言います。(これについては、いずれまた別の機会に詳しくお伝えしたいと思います)

成果主義を導入する企業がかなり増えていますが、直接的に「成果=給与UP」となっている企業はまだまだ少数派ではないでしょうか。その証拠に、全社員の3倍の額売っているトップ営業の給与が、従業員平均3倍の収入を得ているという企業はまだかなり少ないでしょう。

また、成果報酬方式の場合、成果が上がっている時は給与もアップしますが、成果が下がれば当然給与も下がります。外資系金融企業の場合、突然本国の方針が変わって、日本から撤退することが決まったりすると、早々に部署は解散。解雇されることも珍しいことではありません。ダイレクトに生活に直結することですので、どちらが望ましいと簡単に論じられるものではないでしょう。

昇給制度を確認する

昇給制度が整っている会社にお勤めの場合、
「どのような条件をクリアしたら」「どれだけ給与アップがのぞめるのか」をきちんと把握するべきです。
つまり、「次の昇給時期までに」「何をしておけば」「いくら給与を上げて貰えるのか」をきちんと把握しておく、ということです。

給与交渉をするタイミングは?

あなたがお勤めの会社が、企業として制度がきちんと整っている会社である場合、期の途中で給与交渉することは、難しいと判断したほうが良いと思います。
各部門での人件費は、期毎に予算が決まっています。急な社員の退職でもない限り、人件費を大きく上下させることはないのです。

では、どんなタイミングで給与交渉準備を開始するべきなのでしょうか。
あなたが営業職や販売職なのであれば、目標数字の120%、150%等のハイ達成が続いている時に給与交渉するのがベストです。
また、事務職であれば、担当業務の効率化を図り、処理できる仕事が増えた時がベストタイミングです。つまり、両方に共通していることは「数字で上司に成果を認めて貰える成果が出た時」がベストだということです。
業績面談等が行われる会社も多いと思いますので、こういったタイミングで効果的に自分の仕事ぶりをアピールできるよう、普段から準備をしておきましょう。

給与交渉をする相手は誰?

給与交渉をする相手は、直属上司がベストですが、組織によってはその直属上司が人事権を持っていない場合もあります。何度か働きかけてみて全く動きがない場合は、人事権をもつ上司に伝えることも視野に入れてみましょう。
一足飛びに人事に交渉をする方もいるようですが、こういった行為は上司のメンツを潰す行動ですから、転職も視野に入れている段階でなければ、避けたほうが良いと思います。

本当に「現職にとどまることがベストかどうか」

さて、ここまで書いてきて、前提をひっくりかえすような提案で申し訳ありません。
もう一度、「現職にとどまることが本当にベストなのか」よく見極めてみませんか?

ある金融機関の情報システム部門が独立した開発子会社にお勤めだった20代のエンジニアのお話です。会社が金融システム系だったこともあり、一般的な20代よりもかなり多い収入を得ていた方でした。ですが、所属会社は子会社で、システム設計等の上流工程は親会社で行っているために担当する事ができません。

将来は「ITコンサルタントになりたい」と考えていた方ですが、コンサルタントに必要な上流工程を経験することは、その会社にいてはできないことでした。
さらに、上司のメンバーを見回してみると親会社からの「落下傘組」がほとんど。自分が30代、40代になった時にマネジメント経験が積める想像ができません。

転職活動してみたところ、彼女の金融システムの知識やポテンシャルが大いに評価され、上流工程が経験できる会社からオファーを得ることができたのです。しかし上流工程にチャレンジすることが初めてだということで、現職より50万円下がる年収提示でした。

結果、彼女はもう少し現在の会社へ留まる事にしました。
「自分の市場価値もわかったし、納得しました」と。この判断は正しかったのでしょうか?

50万円の年収ダウンを理由に、上流工程を経験できる会社への転職を辞退した事によって逃がしたものはとても大きい。上流工程を経験するチャンスと、即戦力でなくとも採用して貰える時期、この2つを逃がしてしまった事になります。30代になるとこういったキャリアチェンジはほぼ不可能です。ITコンサルタントへの道筋は閉ざされてしまいました。ITコンサルタントになれば、50万円の年収はあっさり回収できていたはずです。

有形商材のルート営業だった方が、無形商材の新規開拓営業にキャリアチェンジする際にも、この「一時的に年収ダウンする」ということは、しばしば発生します。未経験の領域にチャレンジする際には、すぐに現職と同じパフォーマンスを上げることは難しいため、年収ダウンの提示がされることが多いのです。

こういった(第三者的なキャリアアドバイザーの眼と、ご本人の意思決定とのギャップがある)例はしばしばあります。もしかしたら、「年収アップしたい」という気持ちや、「ITコンサルタントになりたいという希望」「新しいことにチャレンジしたい」「ワークライフバランスを整えたい」という本音が、ご本人の中でもうまく整理できていなかったのかもしれません。

点では見るのではなく、線で考えて

今回、「現職にとどまりつつ、給与交渉する方法」というテーマでしたが、リスクテイクせずに大きな何かを得ることは難しい。【働くこと】において、何を優先すべきか、20代の決断が30代や40代をむかえた時の自分にどのような影響を与えることになるか、じっくり考えてみてくださいね。

それでは、またお会いしましょう!
キャリアアドバイザーA