「オペラント条件付け」って?
オペラント条件付けは、アメリカの心理学者B. F. スキナーによって理論化・提唱されました。現在では、応用領域が開拓され、技能訓練や社会的リハビリテーション、e-ラーニングなど、幅広い領域で応用されている心理傾向です。
オペラント条件付けの最大の特徴は、“利用者に楽しさや面白さを感じさせ、行動や判断をコントロールして、学習などのモチベーションを高める効果がある”ことです。
オペラント条件付けの仕組み
スキナーは、スキナーボックスという実験装置を作りました。スキナーボックスにマウスを入れて、ボックスの中のレバーを押すと餌が出てくる仕組みになっています。この中にマウスを入れて観察をしました。そうすると、マウスは餌が欲しいためにレバーを押す行動を学習したのです。このようにして学習を促進する方法を心理学で「強化」といいます。そして、餌(賞と呼ばれています)による学習を促進する仕組みのことを「オペラント条件付け」といいます。
この心理は人間にも働きます。仕事をしていて、お客様から感謝され褒められると、これが、「賞」として働き、また頑張ろうという気持ちになります。
このように、オペラント条件付けには相手をコントロールする効果があります。使用法としては、相手が、こちらが望むことをしたときに褒めたり喜んだりすることです。褒められることだけでなく喜ばれることも「賞」の役割を果たします。すると、相手は、「賞」が欲しくなり、あなたが求めている行動を繰り返すというわけです。この心理を上司や部下に使用することで、あなたの思う通りの教育ができる、というわけなのです。
褒めて育てる? それともスパルタ教育? 教育に効果があるのは
「オペラント条件付け」の説明を前提として、優しく褒めて伸ばす指導法と、厳しく叱りながら伸ばすスパルタ教育、どちらが効果があるのかを考えていきましょう。
アメリカの心理学者エリザベス・ハーロックによって行われた実験を紹介です。子どもたちを3つのグループ(①叱責して教育するグループ、②褒めて教育するグループ、③放置するグループ)に分け、5日間にわたり算数のテストを行いました。その結果、成績が良かったのは順は、②>①>③。
叱責して教育されたグループより、褒めて教育されたグループの方が優秀だということがわかったのです。つまり、人間はスパルタ教育ではなく、褒めて育てる教育が効果を発揮するということ。
効果のある「褒め方」って?
「褒めて伸ばす」といっても、ただ褒めているだけでは意味がありません。甘やかすのではなく、のではなく、教育として効果のある方法を紹介しましょう。
最初にけなしてから褒める
アメリカの心理学者エリオット・アロンソンとロバート・D・リンダーが行った実験では、面白い結果が出ています。
被験者を4つのグループに分けて、実験者はそれぞれ異なった評価をしました。
グループA:最初から最後までプラスの評価をし続ける。
グループB:最初から最後までマイナスの評価をし続ける。
グループC:最初はマイナスの評価をして、その後にプラスの評価をする。
グループD:最初はプラスの評価をして、その後にマイナスの評価をする。
この結果、実験者に好意を持ったのは、グループC、グループA、グループB、グループDの順でした。不思議と、最初にけなしてから褒めると好感度が増すのです。面白いのは、グループDのように順番を間違えると、最悪だということ。
しかし、けなすにもポイントがあります。それは、聞き手にとってダメージが少ないこと。
「君は太っているけど……」と言ってはいけません。体重を気にする人はこれだけでNGになってしまいます。ポイントは、こだわりの深い部分を褒めることです。
間接的に褒めてもらう
次に周囲から褒めてもらうことです。うわさ話や周囲からの情報は信じやすいものです。これを“ウィンザー効果”と言いますが、この心理を利用して「○○さんが君のことを褒めていたよ」というと、あなたが部下を褒めるより信頼性があり効果的です。また、良い情報を部下の友人に撒いておくのも良いでしょう。
感謝の言葉は積極的に
「ありがとう」という言葉は、仏の慈悲などの貴重で得難いものを得たという意味で、感謝を表す言葉になったそうです。「心遣いに、感謝していますよ」という気持ちの現れで、逆にいうと「ありがとう」という言葉がないことは、「心遣いを認めない」という恐ろしいことになってしまいます。
上司に仕事を提出した時に「ありがとう」と言われたら嬉しくなりますよね。料理を作って「美味しい」と言われば嬉しくなり、また頑張ろうとします。少しの言葉で少しの幸せを与えることができます。
最近、感謝の言葉を伝えていますか?
「ありがとう」を聞くと何か暖かいものを感じます。「ありがとう」の言葉は言った方も言われた方もふんわりとしたおおらかで、少しだけ幸福な気分にさせてくれる言葉です。
「褒める」言葉を積極的に
最近では、多くのスポーツで褒めることを行っています。上手に褒めることでアスリートを効果的に指導することができるということを指導者が理解し始めたのです。それは、「オペラントの条件付け」を利用することだったのです。
厳しく叱るのではなく、褒めて伸ばす。こうして部下と接していくことによって、きっといつかは自分の右腕となる、頼りなパートナーに成長してくれることでしょう。