カメラマン 三橋早弥(みつはしさや)
静岡出身・香港在住
2007年 都市銀行へ入社。金融商品の営業を担当。5年半勤め退職。
2013年 スタジオにアルバイト入社。学校写真撮影を担当。
その後、写真室と業務委託契約を結び、ブライダルカメラマンとして活動を開始。
2016年 主人の駐在により香港へ移住、【フリーランス】へ転向
HP:http://sayamitsuhashi.com
なぜ、銀行員からカメラマンになったんですか?
親が安心してくれるからという理由で銀行に就職したので、自分のやりたいこととはかけ離れていて、最終的には銀行という空間にいること自体が苦痛で仕方なくなってしまいました。だから、次の仕事が決まっていたわけではないけれど、思いきって辞めることにしたことが1つ目の転機です。
もともとカメラは趣味で、カメラマンになろうという気持ちはありませんでした。ただ、一眼レフカメラを購入したことをきっかけに、ちゃんと写真を撮れるようになりたくて、カメラの学校に通おうと思ったんです。ただ、お金も時間もかかる。どうにかお金をいただきながらカメラの技術を習得できる方法はないかと考えて、初心者でも雇ってくれるスタジオにアルバイト入社したのがカメラマンになったきっかけです。
趣味でカメラを始めたきっかけは?
父がフィルム関係の会社に勤めていて、小さな頃からたくさん写真を残してくれていたので、常にカメラは身近な存在でした。学生の頃からインスタントカメラやコンパクトデジカメで写真を撮るのは好きでした。
一眼レフを購入したのは、2011年に猫を飼い始めてからで、その猫の姿を写真に残したかったのがきっかけです。なので、一眼レフを買った時は、カメラマンに絶対なるとか、カメラで成功しようとは、一切考えていませんでした。
ちなみに、今も「もっと有名になりたい」などといった気持ちはありません。
では、なぜ香港でフリーカメラマンになったんですか?
ネガティブに聞こえるかもしれないけれど、消去法ですね。フリーランスという選択肢しかなった。
日本で働いていた頃のアルバイトや業務委託で仕事をいただくというバランスが好きでした撮影だけに集中できる、この仕事の仕方がものすごく心地よくて、香港でも同じ働き方ができないかなと日系のスタジオを探しました。しかし、香港人に日本での撮影をおすすめするアウトバウンドがメインで、香港で実際に撮影する仕事は非常に少なかったんです。
自分が求めていた働き方はできない…どうするかと考えた結果、自分の理想とする働き方を実現するには、独立してフリーカメラマンになるしかなかった。
今でも、可能であれば、スタジオに勤めたいですね(笑)常に向上心はあるけれど、全くもって野心はありません。
実際、独立してみてどうですか?
独立して約2年経ちますが、結果的にはとてもよかったと感じています。思ってた以上に、香港在住の日本人の方々からの需要や、日本テイストが好きな香港人からのお申し込みが多い。日本人である事がこれほど強みになるなんて想像もしていませんでした。
そのことに気づけたこと、仕事を通して(異国の地で)多くの繋がりができたこと、自分でも仕事を生み出せるという自信を持てたことなど、海外で起業してよかったと思うところはたくさんあります。
現在は、どんな撮影してるんですか?
家族写真がメインです。特に、駐在員ファミリーの本帰国前の思い出と、お子様のお誕生日記念の撮影が多いです。その他は、バースデーパーティーのスナップ写真、プロフィール写真、トリップフォト、婚礼前撮り、企業のHP掲載用の写真や、雑誌の撮影などがあります。
香港での営業活動はどうやっていますか?
もともとはフェイスブックなどのSNSを使って告知をしていました。ただ、海外における日本人コミュニティの繋がりはものすごく強固ですね。みなさんが口コミで広げてくださるので有難いです。なので、現在は、SNSでの告知や広告掲載はしていません。
ようやくブログも育ってきて、「香港 日本人カメラマン」などで検索して来てくださる方も多いです。
カメラの仕事を始めるにあたって何か勉強した?
結局、カメラの学校に通わなかったので、実践で身につけてきました。アルバイト入社したスタジオ(学校写真がメイン)でしばらく働いた後に、婚礼写真を専門とする写真室と業務委託契約を結び、婚礼のスナップ撮影も始めました。
その写真室の方との出会いが、私のカメラマン人生を充実したものしてくれたと感じていて、今でも心から感謝の気持ちでいっぱいです。実は、撮影した写真を毎回毎回チェックして、必ずフィードバックをくださったんです。構図や光、ストロボの上手な使い方など、本当に丁寧に教えてくださり、そのおかげで、この時期に急激にカメラの技術を成長させることができました。撮影の楽しさを実感したのも、この時ですね。
独立してよかったということですが、今他に思うことありますか?
一緒に働く仲間が欲しいです。
お客様は喜んでくださることが多いので嬉しい限りではありますが、やっぱり同業者からのフィードバックが欲しいと思ってしまいます。
もっと技術レベルを上げたいのですが、一人で仕事をしているので、なかなかそれを実感できないところにモヤモヤしますね。そのため、日本に一時帰国した際は、できる限り、プロ向けのワークショップなどに参加するようにしています。
いい写真を残すためにしていることはある?
いい写真を残そう!みたいに考えたことはありませんが、
・ロケハン(事前下見)をする
・(お客様のご希望があれば)事前打ち合わせをする
といったところでしょうか。
特に、お子様の撮影するときは、撮影当日に人見知りで顔を見せてくれないと大変なので、事前打ち合わせで一度会っておくことで、安心して撮影に臨んでもらえるようにします。お子様が笑顔にならないとご両親がナイーブになってしまうので(笑)
専業主婦になろうと思わなかった?
思わなかったですね。時間を持て余してしまって仕方なくて(笑)
香港に移住後、最初の半年ぐらいは香港で仕事がなかったので、1カ月単位で日本と香港を行き来していました。日本にいる1カ月は仕事をして、香港にいる1カ月は専業主婦をするという生活。
ただ、当時、主人も出張が多く、ヘルパーさんも雇っていなかったので、香港に連れていった猫たちのお世話を頼むのが本当に大変で…しかも、日本では職場に寝泊まりで、私自身体力的にも限界だったので、この生活はやめて、香港で本腰入れて仕事をしようと思ったんです。
今後どんな活動していきたいですか?
今は、家族写真などのプライベート寄りな写真が多いです。ただ、今後は、香港の良さを伝えていくのに写真の技術が使えたらなと思っています。香港は非常に魅力的で、心から大好き。そして、私を自由を感じさせてくれた場所でもあるので。
そのために、現在は、取材の仕方や言葉の勉強をしています。今年の初めから、比較的撮影のご依頼の少ない平日の時間を使って、香港のフリーペーパーを発行している会社で、ローカルのスタッフの方々と一緒にエディターとして働かせてもらっています。
もっと、ローカルに踏み込んだ仕事をしたいなと思っていて。踏み込んでみてどう感じるのかはわかりません。もしかしたら、今の“好き”という感覚とは変わるかもしれない。でも、観光的な好きからもう一歩踏み込めたらな、と思っています。
香港の魅力は何?
香港は、東京の約半分の面積という非常に小さな場所に、相反するものが混在していておもしろい!
新しいものと古いもの、西洋と東洋、綺麗と雑多、振り幅がすごく、いつまでも飽きさせないでいてくれます。友人が言っていてぴったりだなと思った表現は、「おもちゃ箱をひっくり返したみたいな場所」。きっと、誰にでも、どこか、はまる部分があるはず。
そして、非常に多様性のある街。他人をジャッジしない国民性が大好き!暮らしている人たちのバックグラウンドが様々なので、いい意味で違いに鈍感なのだと思います。だから、本当に自分らしくいられる。
まだまだ話し足りないですが(笑)、簡単にまとめると、それが香港の魅力です。
これからカメラを仕事にしたい人に一言お願いします
カメラマンになることは簡単で、特に資格が必要なわけではないので、「カメラマンです」と名乗れば、すぐにでもなることができます。
カメラマンにも様々あって、どういったスタイルで働きたいかにもよりますが、収益をあげていくというところで言えば、初心者を採用してくれる場所で働き始めることが近道かと思います。
「なっちゃえばいいだけ。」
「ハードルは全然高くない」
私も「次はこんなことにチャレンジしよう」と言っている間に、香港でフリーランスのカメラマンになっていました。一歩踏み出してみたら、またそこからその次の流れがやってくる。構えなくてもいいと思います。上手くいかなかったら修正していけばいいだけだから、何も難しいことではないです。
インタビューを終えて
香港で活躍する日本人カメラマンの三橋さんに、インタビューさせていただきました。
フリーになられて2年、香港在住の日本人であれば誰もが知っている人気カメラマン。
海外で働くということは、文化の違いや言葉など大変なことも多いはず。普通、大変と思うことすら楽しみながら働かれている。そんな三橋さんに対し、自分の軸をしっかりもたれた可愛らしい女性という印象を持ちました。
何かを始めたいとき、
「資格がない…」
「経験がない…」
と一歩踏み出せないこと、意外と多いです。
三橋さんが仰っていた「なっちゃえばいいだけ」確かにその通りですね。
なっちゃえばそこから、また何か次の流れがやってくる。
前に進むことの大切さを教えていただきました。
今回の記事では、全て三橋さんが香港で撮影された写真を使わせていただいています。