おはようございます!キャリアアドバイザーAです。
Cinq読者の皆さん、ご機嫌いかがですか?気付くと日が短くなり、秋の風が吹き始めました。ゆっくり今後のキャリアについて考える時間ができる時期です。
このコラムでは、転職活動に一歩踏み出してみた方や、活動してみたものの少し躓いてしまっている方に向けて、人材ビジネスのウラ話も交えた「ヒント」をお伝えできればと考えながらお送りしています。
キャリアアドバイザーが教える「退職交渉」の進め方
今回のテーマは、ずばり「目指せ円満退職!退職交渉のすすめ方」です。
ちょっと脱線しますが、最近、この退職交渉をやりたくない…というニーズに応える、退職交渉代行業者まで出てきているそうですね。
退職の意思を伝えてもなかなか辞めさせてくれない、そもそも退職の話し合いを設けてくれない。というお悩みに応えるサービスです。
ただ、気を付けていただきたいことがあります。退職の意思を代弁するのみであれば、弁護士資格の有無は関係ありませんが、例えば、「退職日まで有給休暇を使いたい」とか、「即日退職を希望する」などと依頼する場合、代行業者が会社に交渉を行うことになります。
こういった交渉を弁護士資格がない業者が弁護士法に違反してサービスを行っているような悪徳業者もあるようです。くれぐれもご注意下さいね!!
さて、話を本題に戻しましょう。
転職先からの内定を手にし、退職の意思が固まったら、いよいよ退職交渉の開始です。
「円満退職」し、なるべく気持ちよく次の職場に移行できるように頑張りましょう!
【上司に退職を申し出る手順】
最初に退職の意思を伝えるのは、直属上司。これは社会人として最低限の礼儀です。(それが、どんなに反りの合わない上司であったとしてもです!)
最悪なのは、直属上司に伝える前に別の人に退職の話をしてしまい、それが人伝てに上司に伝わってしまうこと。これだけは絶対に避けましょう。そうでなくても気まずく、後味の悪い思いをする可能性のある退職交渉、最初から暗雲立ち込めてしまいます。
この時、退職願等の書類を持っていくのは避けましょう。
これは、正式にあなたの退職日が決まってから。法的には口頭でも、退職申し出になりますが、もし不安に思うようであれば、きちんと自分の手帳に「いつ・どこで・誰に退職の申し出をしたか」メモを残しておくこと。
そこまで拗れること滅多にありませんが、いざというときに役立つ記録になりますので、覚えておきましょう。
あなたの上司は『なぜ退職したいの?』と聞くと思います。
現職の批判は絶対しない事。そして、自分のやりたい事や退社の意思が固いことをしっかりと伝えましょう。
次が決まっているのか? どこへ転職するのか? と聞かれるかも知れません。
これには答えない、というのが鉄則です。ただ、狭い業界だと転職後に前職の社員と顔を合わせることがあるかもしれませんので、嘘をつくのだけは止めておきましょうね。
あなたの退職の意思を聞いた上司の頭の中を覗いてみましょう。
「後任として、誰か社内異動させるか、補充の中途採用の活動をはじめるか…いずれにしても時間がかかるな。半年、いやせめて三か月引き延ばせられるだろうか」
「後任が決まるまでは会社に残って欲しい。そのくらいの責任は果たして欲しい」と頼まれるかもしれません。ですが「後任者の手配」これは残念ながらあなたの責任ではありません。例え後任にふさわしい人がいなかったとしても、それを考えるのが上司、企業の責任です。
退職の意思を示すと、1回目の申し出は慰留され、退社日の合意まで進まないことが普通です。上司の顔を立て、一旦はそれで終わりましょう。
しかし、あなたの退社の意思が固いこと、「退職しようか迷っている=相談しているのではなく、決定事項だということ」をはっきり伝えることがとても大切です。
【慰留される時のありがちなパターン】
まずは、年収を上げるという提案。
仕事も希望の仕事をやってもらう、という提案が出てくる事があります。
あるいは“職位を上げる”という提案が出てくるかもしれません。
これらの提案には乗らないこと。
いずれの提案も、あなたが「辞める」と決断するまで出てこなかった提案です。安易に鵜呑みにしてはいけません。一旦退職を口にした以上は退職の意思を撤回しないことです。
以前、内定先のオファーを蹴って現職に残ったものの、「担当していたプロジェクトが終了したら、途端に居心地が悪くなった。疎外感を感じながら現職に留まるのはツライので転職活動を再開したい」と戻って来た転職者にもお会いしています。
上司にしても、人事にしても、一度でも「退職」を口にした以上、既にあなたはいつ退社するか分らない人という評価になっていることをお忘れなく。
【退職願いと退職届の違いって?】
あなたの退職の意思が会社にきちんと伝わって、退職日の合意が出来たら、提出しなくてはいけない書類。「退職願」と「退職届」、これらの違いをご存知ですか?
「退職願」とは
退職願とは、退職(労働契約の解除)を会社に願い出るための書類です。
「退職届」とは
退職届は退職を届け出る書類です。退職願と違い、退職届には退職日を明記します。そのため、受理されたあとは撤回できません。
会社が退職届を受領した後は、民法627条で定められている通り、退職の申し入れから2週間を経過することで退職できます。
一般的な正社員であれば、会社側の反応にかかわらず一部例外を除き2週間後の退職が可能ということです。
「会社の就業規則で半年は退職できないと定められている」等と悩む方に時々お会いしますが、ご安心を。就業規則より民法のほうが効力が大きいです。
退職届は直属上司に提出しますが、ごくまれに「受領して貰えない」という方もいますね。
退職届を受領して貰えないと退職手続きが進まないため、離職票や雇用保険被保険者証等が取得できません。
ここまでくると円満退職とは言えなくなってしまいますが、配達記録付き内容証明郵便を使って決裁者宛に郵送するか、労働基準監督署に相談する。という方法もあります
ちなみに、「辞表」という書類もありますが、これは会社役員が職を辞するときに提出する書類です。あなたが一般社員なのであれば、「退職届」「退職願」が正解です。
【退職届の書き方の基本的な作法について】
使用する便箋はA4縦もしくはB5縦の白紙のものを使用しましょう。
郵便番号の枠のない無地の白い封筒の中央に「退職届」、裏の左下に「所属部署名・氏名」を書き、その中に入れます。
縦書き・自筆(黒のボールペンや万年筆)が基本です。
1.まずは右端に「退職届」と書きます。
2.本文は、一番下に「私事、」と書き、改行して続きを書くのがポイント。
「一身上の都合により、●月●日をもって退職いたします」と記載します。
今回のように転職先が決まって退職する、「自己都合退職」の場合は、「一身上の都合」により退職と書きます。※1
3.提出日、自分の所属部署名と名前を書いて、印を押します。シャチハタはNG。
4.最後に、会社名と社長名を記入します。
※1会社都合退職の場合は、「一身上の都合」とせず、「部門縮小のため」「退職勧奨に伴い」など退職の理由を具体的に書くようにしましょう。そうしないと、離職票上「自己都合退職」と処理され、失業給付の開始が3か月遅れる等不都合が生じてしまう場合があります。くれぐれもご注意下さい。
会社都合退職の退職者を頻発している会社は、様々な中小企業支援・補助金の対象から外されてしまうため、本来「会社都合退職」なのに「自己都合退職」として処理しようとする企業は残念ながら一定数あります。
運悪く自己都合退職にされてしまった場合は、泣き寝入りせずハローワークできちんと相談しましょう。退職勧奨を受けた日のメモ等準備して相談すれば、会社都合退職に変更して貰うことも可能です。
【退職までの期間について】
通常、退職申し出をしてから退職までは1カ月以上2カ月未満が一番多いパターンです。目安にしてください。
内定先を待たせていることもありますので、入社日をずらさなくてはいけなくなるようなことにならないよう配慮しましょう。
いかがでしょうか。
とにかく、円満退社ということを念頭に置き、これまで就業した感謝とともに毅然とした態度で交渉しましょう。
キャリアアドバイザーA