AIの発展は、今後キャリアにどう影響する? シンギュラリティはあるのか



Cinq読者の皆さま、おはようございます。キャリアアドバイザーAです。

先週、「AIに代替されにくいスキル」についてCinq読者の皆さまと一緒に考えてみました。
今週は、「シンギュラリティはあるか?」というテーマで考察していきます。

AIができること・できないこと

Cinq読者の皆さまの中には「東ロボくん(とうろぼくん)プロジェクト」をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この「東ロボくん」とは何かといいますと、日本の国立情報学研究所(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構)が中心となって2011年から行われている「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトで研究・開発が進められている人工知能(AI)の名称です。
大きな目標として、2021年度までに、「AIが東大に合格できる」ように目標を掲げ、すでに2015年6月の進研模試でMARCHレベルの大学に合格できる偏差値(57.8)を獲得。しかし東大合格に必要な「読解力」に致命的な問題があり、現在の【ビッグデータと深層学習を利用した統計的学習】という現在のAI理論では、これ以上の成績向上は不可能との判断により、2016年11月にいったん研究は凍結されました。

AIは、どんな科目が得意なのでしょうか?
【参考】https://21robot.org/progress.html
2016年には「数IA」で偏差値64(前年46.9)、「数IIB」で65.8(同51.9)、「世界史B」で偏差値66.5(同56.1)と、計3科目で偏差値60を超えています。AIは、「問題文」という「テキスト」を「過去問」という「ビッグデータ」と照らし合わせて、「最も確からしい」答えを出すことに長けているのです。
一方、国語と英語の読解が苦手。これはAIの特性に要因があります。AIはそもそも問題文を読み取り、理解する力が弱いのです。人間なら誰しも読み取れる問題文を読み取れず、そもそも何を聞かれているのか理解することができません。
今のAI技術では、人間が持つ「常識」や、「空気を読む」といった高度な情報処理はできません。それだけ人間の思考は、ほかと比べても圧倒的に高度で複雑ということです。

人間の仕事は二極化する?

そうは言っても、MARCH合格とは、受験生上位20%に入る成績であり、これはかなり立派! 逆に、この研究によって日本の高校生の読解力が危機的状況にあることが明らかになったために、同プロジェクトリーダーの新井紀子氏は高校生の読解力を高める研究に移行。これからのAI時代において、人間が人間らしくあるために「AIの性能を上げている場合ではない」「東ロボくんの性能を上げるよりも、中高生の読解力向上が直近の課題」との結論に至ったとのことでした。

新井氏は、ご自身の著書の中でAIによって人間のホワイトカラーの仕事の一部(ルーチンワーク部分)が奪われ、人間の仕事は【AIには難しい人間ならではの高度な創造性を発揮する仕事】と、【AIには難しいが人間なら誰でもできる低賃金の単純労働】に二極化し、社会が分断されると予測しておられます。(『コンピュータが仕事を奪う』より一部抜粋)
「東ロボくんは文章の意味を理解できない」が、「東大は無理だがMARCH程度なら入学できる」という結果は、その予測を裏付けるものになります。世界の2割の人間が高度な創造性を発揮する仕事に就く一方、8割が低賃金の単純労働に甘んじる世界になる可能性がある ということです。
実現してしまったら、恐ろしいことだと思いませんか?

AIが加速度的に進化し、人間を超える瞬間

ソフトウェアであるAIは、複製が容易でリソースさえあれば大量に作り出すことができます。AIがAIをつくる。AIが自分より少し賢いAIを作るということを続けた結果、いずれ人間よりも賢いAIが大量に生まれ、人知を超えた技術革新を次々起こす可能性が生まれる。これが「シンギュラリティ」という概念です。
シンギュラリティ仮説の提唱者レイ・カーツワイル氏は、2045年にシンギュラリティが起きると予測していますが、近年その時期を2029年にまで早めています。研究者の間では、現時点では「可能性は低いがゼロではない」という見解だそう。

楽観的な研究者は、シンギュラリティ後、AIが人類の抱えるあらゆる問題を解決すると予測しています。例えば、医療や介護が高度に自動化されれば、誰もが優れたサービスを享受できるようになります。人間は重労働から解放されるわけです。

一方で、「AIが人間の意図をはき違えると大問題に発展する可能性がある」という懸念もあります。
アメリカのテキサス州で、6歳の女の子がAmazon Echoと会話をする中で注文を成立させてしまい、約2万円のドールハウスと大量のクッキーが自宅に届いたという事件がおきました。
これだけならば、クスっと笑えるニュースで終わるはずでしたが、この話題を取り上げたサンディエゴ州の報道番組中、ニュースキャスターが「女の子が注文に用いたであろうフレーズ」を読み上げたところ、これを注文だと勘違いしたテレビの前のAmazon Echoが、一斉にドールハウスを注文する「二次被害」が発生。たくさんのドールハウスが実際に出荷に至り実被害が出てしまいました。

人間は、AIに「人間の意図を誤解しない」「悪意ある人にコントロールされない」安全装置を組み込みますが、シンギュラリティ後のAIは、「AIが開発したAI」であり、安全装置が失われる可能性もあります。人間の理解を超えたAIであり、人間が制御することができなくなる可能性があるということです。

自らの雇用を失わないために

AIは、私たちの仕事を奪うだけではなく、増やす側面もあることはすでに先週触れました。
とはいえ、求められるスキルがこれまでとがらりと変わることも明らかです。
目的地に人や物を運ぶ、指示通り書類を整理する、マニュアル通り製品を組み立てるといった「機械的な仕事」は人間の役割ではなくなります。
私たちができることは、AIには代替できないスキルや働き方を模索し続けることです。
普段からルーチンワークにちょっとした付加価値をつけることを意識すること。AIに関する知識を深め、正しく扱える能力を身に着けること。コミュニケーション力や創造性を磨き、AIのマネジメントを行えるスキルを身に着けること。日頃から情報収集を怠らないようにしていきましょう。

ドローンや街頭カメラが人を監視することで犯罪を抑止したり、適性検査結果で進学先や就職先をAIにアドバイスされたり、結婚相手までAIに推奨されたりする未来は本当にすぐそこまで来ています。

それでは、またお会いしましょう。ごきげんよう!

キャリアアドバイザーA