ネットで度々起こる炎上。
最近では、俳優のとある方が記者会見で「奥さんと不倫相手、どちらが好きですか?」という質問に「妻を傷付けることになるので話せない」と回答し炎上しました。 「そこは妻と答えろよ!」、「不倫相手がまだ好きだからはっきり言えないんだ(笑)」 という意見が多く寄せられています。このように赤の他人には一切関係の無いことでも、ここまでの騒動に発展してしまうのはどうしてなのでしょうか?
今回は「アンチが生まれる理由、人が誰かを批判したくなるワケ」について紹介します。
心理学の実験で見えた「匿名性」の保証
まず、なぜSNSで炎上が起きやすいのかについて考えていきましょう。それは、SNSの仕組みが深く関係しています。「匿名性が保証されているため、自分の発言に対して責任を取らなくていい」のです。人間は匿名性が保証されていると攻撃性が高くなってしまう、それを証明した実験があります。
悪魔の実験と言われているスタンフォード監獄実験、アメリカの心理学者フィリップ・ジン バルドーは被験者を3人組の2つのグループに分けて、一人が生徒役、もう一人が看守役、 最後の一人は囚人役とし実験をスタートさせました。生徒が問題に対して答えを間違うと、看守は囚人に電気ショックを与えます。ひとつのグループはそれぞれが名前で呼ばれ、名札も付けられていましたが、もうひとつのグループはフードや目隠しをし、さらに名前を呼ばず匿名で過ごさせたのです。
その結果、匿名のグループは、名前がわかるグループの2倍も長い電気ショックを与えました。つまり、人間は匿名性が保証されていて、自分が責任を取らなくても良い状態になると、情緒的、衝動的、非合理的行動が現れ、攻撃性が増すということを表します。SNSの世界では、匿名で複数の人間が同じターゲットを叩くことで責任が分散されます。またそれらの投稿を読んだ人たちからの期待や煽りによってその内容もエスカレートしていくという負の連鎖が生まれやすい環境であるということなのです。
日頃の欲求不満を解消!「とりあえず自分よりも優れてる人を叩け」
ネット炎上、アンチ、批判。まとめてSNS上でのいじめ。この現象は自分の欲求不満が関係してることもあります。
SNSいじめに限らず、いじめが起こる原因には心理学でいくつかの説がありますが、有力な説は「緊張理論」と「統制理論」だといわれています。緊張理論とは「自分の欲求充足を阻止するフラストレーション状態が攻撃衝動を生む」というもので、自分の欲求を満たすのを邪魔されると人間は攻撃的になるという意味。また、欲求が満たされない状態が続くと攻撃的になるという意味も含みます。
一方、統制理論とは「あらゆる衝動を統制する」もので、 攻撃衝動も含まれます。統制力が弱まると攻撃衝動を抑えられず、いじめに発展すると言われています。実社会とSNSのいじめも仕組みは違えど同じようなことです。
学校や家庭、職場などで欲求が満たされず、ストレスが溜まる→人間にはもともと他人への攻撃性を持っているため、それを特定の誰かに向けて発散したくなる→欲求不満を解消するため、自分が気持ちよくなる言葉で攻撃する。
このようにしてSNSいじめは起こっていきます。
「自分よりもお金を持っている人」「仕事が楽しそうな人」「愛で満たされている人」……。標的にするのは、とにかく自分よりも楽しそうに生きている他人です。その人が何かに失敗したり、やらかしてしまったときに、ここぞとばかりに叩きます。
つまり、「アンチや他人の批判をする人は実生活でうまくいっていない可哀想な人たち」なのです。
やっぱり悪口は言うもんじゃない!悪口を言うとあなたの評価が爆下がり
実社会だろうが、SNSであろうが、人の悪口を言うと「悪口を言われた対象者」ではなく、「悪口を言った人」の評価がめちゃくちゃ下がることも実験で明らかになっています。
オハイオ州立大学のジョン・スコウロンスキ博士が行った実験で、博士は被験者たちにビデオを見せました。そのビデオでは、役者Cが自分の知人Dについて「あいつは動物が嫌いで子犬を蹴飛ばしていた」 とDの悪い行動について話します。
そのあと被験者たちに話を聞いたところ、「Dは嫌な人物」という感想より「Cを嫌な人だと思った」という感想が圧倒的に多くなりました。Dに関する悪い情報を、Cの人物に重ねてしまったのです。その結果Cに対して悪いイメージを持ったということ。
つまりあなたが「あの人、ウザいよね」や「○○ちゃんって性格が悪いよね」と言ったり、 SNSに書き込むと、それを聞いた人や見た人があなたと照らし合わせて悪いイメージを植え付けます。結果的に、あなたの評価は爆下がり。
人間は「聞かされた悪口の内容」は忘れても「悪口を聞かされた」ことは忘れません。「あの子は悪口ばっかり言ってるな。あの人は性格が良くないのかも」と思われてしまうということです。あなたの評価を下げているのはあなた自身かもしれません。
終わりに
いかがでしたか?
格差社会はこれから広がっていくでしょうし、アンチや批判が無くなることはありません。もし自分が誰かに文句を言われてしまったら「可哀想な人がいるな」と思い、放っておくのが一番でしょう。自分からも人の悪口を発信しないように、気をつけていきたいものですね。