Cinq読者の皆さま、おはようございます!
だんだん寒くなってきましたが、今日の体調はいかがでしょうか。
新型コロナウィルスの流行により、誰も経験したことのないことばかり起きた2020年も残りわずかとなりました。外出等行動に制限されることが多く、自分の内面と向き合う時間が多かった年だと感じていますが、読者の皆さまにとってはどんな一年だったでしょうか。
このコラムでは、18年以上人材系の会社で働いている私が経験したことを踏まえ「キャリア構築とは」「働くとは」「転職するとは」というテーマで書かせていただいてきました。現在は医療・介護系領域に特化したサービス提供をしている会社に所属しているため、今日は「新型コロナウィルスがどのように医療・介護領域の求人ニーズに影響を与えたか」について、その一端をご紹介していきたいと思います。
コロナ禍でも人手不足である介護業界なら雇ってもらえる?
「中国の武漢で、何だか得体のしれないウィルスが発生したらしい」「コウモリ由来らしく、ヒトからヒトへの感染リスクがあるかどうかまだわからないらしい」「いや、もうすでにヒトからヒトへの感染事例があるらしい」等などの情報がぽつぽつ流れてきたのは、去年の今頃だったと思います。
またSARSみたいな肺炎?まぁ、WHOは感染リスクは低いと言っているし、そのうち暖かくなったら消えるんだろうけど、日本に入ってきたら嫌だな…春節に観光客を受け入れて本当に大丈夫なのかしら。と思いながら、中国語での呼び込みアナウンスが大音量で流れる新宿に通勤し続けていたのが2月。
あっという間に世界中に感染者が発見されるようになり、日本でも「緊急事態宣言」が発せられ、トイレットペーパーやマスクが品薄状態に。宿泊業、観光業、旅行業、飲食業、小売業等、「人が動くことによって売り上げを伸ばしていく業界」で働いている人たちが窮地に立たされることになりました。特に非正規雇用と呼ばれる、派遣社員やアルバイト等が「雇用の調整弁」として扱われ雇い止めに遭うケースが増えました。
4月以降、これらの業界の方が「人材不足と言われている介護業界なら、無資格・未経験でも雇ってくれるのでは?」との期待から大量に登録してくるようになったのです。
介護業界は、常に人手不足。通常なら「無資格・未経験」であっても異業種からの人材を受け入れています。介護資格のない人にはまず、入居者様のお体に触れない業務…例えば送迎車の運転、調理の補佐、居室の清掃業務等からスタートし、合間に資格取得の勉強をしながら、先輩社員について少しずつ介護の仕事を身に着けていく…ということができる業界です。が、一方でその業務の大変さから離職者が多い業界でもあります。
コロナの影響でニーズが変わり、人手不足と言われていても未経験では採用してもらえない
ただ、今回のような緊急事態に陥った時、介護の現場で何が起きたかというと「無資格・未経験の方を育成している余裕と時間がないので、採用はストップ。最低限、初任者研修(旧ヘルパー2級)をお持ちであることが選考条件」というニーズに変化したのでした。
さらに、現在、在籍している人たちは「仕事は厳しいけれど、今は転職できる環境ではない」ことを感じるため離職者も出づらい。そのため新規で未経験者を採用する枠は皆無状態になってしまいました。
しかし、異業種から転職したい登録者は食い下がります。
「確かに私は介護業界で働いたことはないけど、自宅で父の介護をした経験はありますよ!」
→それは、お金をいただくビジネスとしての「介護経験」とは違うので、介護経験とカウントすることは難しいのです。
「ずっとキャビンアテンダントをしていましたし、私は接遇のプロです。この経験を活かすことはできませんか?」
→確かに介護現場には接遇のプロが必要ですが、その前に最低限の「介護知識」を身に着けておかなければ、現場で即戦力としては認められないんです…。
「では、その初任者研修を受講するので講座を紹介してくださいよ」
→コロナ対策で講座の座席数が制限されている上、実務実習が必要なので講座運営自体が手探り。当面キャンセル待ちになります…。
「(電話に出るなりいきなり)私はずっと今までの職場で責任者とか管理者をしていました。人の管理は得意です。サービス提供責任者の仕事を希望します」
→…! サービス提供責任者は、誰にでもなれるということではなくて、少なくとも介護福祉士か実務者研修を修了していることが必要なんです。(この人絶対介護業界の経験者じゃないな…)
さらに、介護職のバイト案件の時給を聞いた方は絶句。「それじゃあ、家のローンを払ったら終わりじゃないか…」と電話を切られたのも一度や二度ではありません。
異業種の方はご存じない方が多いですが(私もこの役割を担うまで知りませんでしたが)介護業界は「資格がかなりものをいう業界」です。
より良い条件の職に就きたいなら、資格を取得し、経験を積んで上位資格(初任者研修⇒実務者研修⇒介護福祉士)をどんどん取得していくことに限るのです。
さらに、入居者様の生活を支えるための「夜勤」は避けては通れません。体力的にもタフであることが必須の業界であると言えます。
少なくとも、「今ある職を失ったから、すぐに雇ってもらえる別の業界を!そうだ、介護業界だ!」と気軽に転職して来ることができる業界ではないことは、ご理解いただけたでしょうか。
ハローワークと人材会社では求める「質」が異なる
「ハローワークで、無資格未経験から携われる案件、よく見るけど…」と仰る方もいます。それはその通り。ハローワーク経由の採用は、施設も採用にお金はかかりませんが、人材会社経由の紹介に対しては、「紹介料」が発生します。
無料で採用できる人材と、有償の人材では、施設がその人に求める「質」が違って当然なのです。
ごく最近ですが、4~5月の時期に「無資格ですと、今は仕事のご案内が難しいんです…」とやむなくお断りした人の中から「先日初任者研修の資格が取れたので、仕事を紹介してください」と再度訪ねて来られる転職者もいらっしゃるようになりました。
腹を決めて、しっかり資格を取得して再チャレンジしようとする方なら、お仕事のご案内をしても立派に役割を果たして下さるだろうと嬉しくなりました。
いかがでしたか?少しだけ、新型コロナウィルスが介護業界に与えた採用への影響についてお伝えしてみました。
それでは、またお目にかかりましょう!ごきげんよう!!
キャリアアドバイザーA