趣味や特技は見つかっても、なかなか「自分に合う仕事」を見つけることは難しいですよね。 何が自分に向いているのか、どんな仕事なら続けられるのか。 大人になると、ひとつひとつの選択や見極めが、自分の未来に大きい影響を与えるもの。 選択肢もあるからこそ難しい「自分に合った仕事の見つけ方」。自分で考えてもなかなかわからないからこそ、経験のあるプロの目線が大事なのかも。3,000人以上の求職者を企業へ導いてきたキャリアカウンセラー佐野さんに、自分にあった仕事の見つけ方、聞いてみました。
Q:どのように求職者に向いてる仕事を見つけるんですか?
A:仕事を紹介する前に3つの質問をします
キャリアカウンセラーという職業は、占い師さんのようにこの職業が合っていますと答えをパっと人に与えることはできません。 自分に合った仕事を探している求職者と、人員が不足しているから募集したいという企業を繋ぐ、ということをしています。
ただ、自分に合った仕事や、やりたいことに関しては自分が気付いていないだけで、答えは必ず、自分の中にあると思います。
まず求職者の方には必ず、この質問をするようにしています。
1番楽しかったことは?
1番評価されたことは?
現在の職場、職種への不満・不安はなんですか?
の3つです。
この3つの質問で、求職者の主観的な思考、客観的な思考を明確化し、転職活動で解決したい課題と共にご本人自身の中にある本質的ニーズを分析していきます。
仕事をしていて1番楽しかったことは?(主観的思考の分析)
楽しいとおもった事は、本人が「苦」がなくできることだと言えます。
では、楽しいと思ったのはなぜでしょうか?どうしてそう感じたのでしょう?
3度のなぜ?を繰り返す事で、思考の要素を分解し、思考の本質に近づけます。
前職や前々職の仕事上での楽しかった事を考えるのが一番ですが、もし仕事上で楽しかったことが見つからない場合は、学生時代に振り返って考えみてください。
特に仕事のキャリアが短い方、第二新卒の方は学生時代から始めてみてもいいかもしれません。
一番評価されたことはなに?(客観的思考の分析)
上司や同僚など、一緒に働いた方からの評価で、客観的に見た、あなたに向いている仕事がわかります。
どのような仕事をしている時に評価を受けたのか、職種だけでなく、どんな業務だったのか、どんなシーンだったのか、どんな人との仕事だったのか、一人での仕事だったのか、などできるだけ具体的に細かく思いだす事で本質に近づきます。
また、他者からの評価は、実際に面接等の選考を受ける際、大きなアピールポイントとなります。そこでまず、「評価を数字で表す事ができるか?」 ということを聞きます。営業数字や、制作実績数、クライアント数など、数で表す事が出来れば、企業は評価しやすいという現状があります。
それが数字化できない場合は、具体的なエピソードであなたの長所を伝えることが大切です。
楽しかった事と同じく、評価されたことがわからない場合は、学生時代にさかのぼります。
・学生時代得意だったこと
・友達はあなたのことをどう紹介するか
・感謝された出来事など
それでも見つからない場合は、
夜、1ヶ月のお仕事の流れを書き出してください と伝えます。
夜は思考が活発になるので、それを文字化してみましょう。 そして、夜に自分の行動を、朝になってから再度見返す事で、自分の思考を客観視できる、ということがあります。
現在の職場の職種への不満・不安はなんですか?(転職目的と課題)
転職を考えているほとんどの方が、現在の企業や仕事に対して「変えたい何か」があるはずです。 勤務時間や給与、任される仕事内容、結婚や子育てなどの理由で、今とは違った働き方を求める方もいらっしゃるかもしれません。
この「変えたい何か」が、転職理由です。
転職先で「変える事ができるのか」が転職先企業の選択の基準となります。
楽しかったこと・評価されたことが一致したとき
楽しかったこと・評価されたことの2つが一致していることと、市場が求めるタイミングが一致したときが転職のベストのタイミングと言えます。
市場のタイミングとは、景気や、業界の動向等が関わってくるので、専門家に相談するのが間違いないでしょう。 自分の実績が、1番評価されるタイミングを見極める事も、満足がいく転職を成功させるポイントです。
楽しかったこと・評価されたことが一致していないとき
転職活動は自分の経験を売り込む活動なので、自分自身の主観と客観を埋めることができない場合は、転職のタイミングが「今」ではない、という可能性があります。 そんな時は、無理に転職するより、現在の業務で主観と客観を近づける事をお勧めさせていただいております。
私たちキャリアカウンセラーは、人と企業を結びつけることも大事ですが、その人自身が生き生きと働き、生活ができる手段を提示することが役割だと思っています。
第三者の目線が有効
自分だけで考えていても中々答えに、たどり着くことはできません。むしろ考えすぎて、迷いの迷宮に陥ってしまうことも。
また、近しい関係の人との会話では、個人の理想や目標に着目しすぎて、市場の求めているものとのすり合わせができなくなることがあるので、客観的な視点が持てる第三者に相談する事が大事です。
素直な気持ちで
第三者だからこそ、素直に話せることもあると思うのですが、ついみなさん面接だと思って緊張してしまうことがマイナスになってしまうこともあります。 私たちは、求職者の方の”素直な気持ち” を引き出してあげることが大切だと思っています。
それと同時に、求職者の方にも、素直な気持ちで来て欲しいと思っています。
その転職理由をそのまま面接で話すかは別として、そのひとの魅力を一番に引き出すことが私たちの仕事でもあるからです。
キャリアカウンセリングをする際も、まず転職希望者の方の、素直な気持ちをお聞きできるようヒアリングを心がけていきます。
キャリアカウンセラー佐野さん プロフィール
某大手総合電気メーカー子会社に、当時初の文系四大卒女子採用として入社。5年後「工数を買う」派遣社員購買担当に配属替え。独自で作成し各部署へ配布した「わかりやすい派遣法対策資料」が人事部長の目にとまり、担当業務ごと資材部から人事部に異動。
「おはようからおやすみまで」お仕事、という生活を10年で卒業し結婚を機に上京。
一度は「お気楽OL」も経験してみたいと派遣会社に登録し、某大手総合電機メーカに事務派遣として就業。が、約一年であっけなく「構造改革」のもと派遣切りに遭う。この時初めて「働くとは?」「キャリアとは?」という課題と真剣に向き合うことに。全国産業人能力団体連合会認定JCDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)資格取得後、IT専門特化の人材紹介会社等にて転職支援に従事。10年間で延べ約3,000名超の転職者にキャリアカウンセリングを実施。企業の人事担当者だけでなく、現場担当者のニーズもヒアリングし、各社が「採用したくなる人材像」を探り続けて現在に至る。