2番目は、全部知ってる
不倫を経験したことのある女性は、正直言って多いだろう。
不倫ののちに、実際に結婚したというカップルを見たことがある。これから別れる、と言っているカップルもいる。「前は既婚者にハマったこともあった」「知らなかったけれど、実際には結婚していることがわかった」「私、不倫してるの」ここまでのセリフは全て私の女友達から発せられた言葉だ。
そんな不倫経験者の彼女たちは言う。大事にしてもらえるからいいかな、と。
彼女たちの話を聞いて共通していたのは、みんな不倫の渦中に居る時は、とんでもないスリルと愛情を全身で実感できていたというところだ。不倫に陥るまでのきっかけまでは聞いていない。けれど、人に話すときの女というのはある程度自分の中で腹をくくっているものだ。思いだして干渉に浸ることもあれば、単純に楽しんでいる場合もある。だけど、結果的に彼女たちは何かを失っているのだ。
お金と時間を失ったハルカ
スレンダーで、日本人らしい色気を醸し出す、元モデルのハルカもそうだった。彼女は27歳の時に、絶対に嫌だと言っていた不倫という誘惑に飲まれてしまった。おそらく、金銭のやりとりもあったのだろう。その不倫は、「恋愛」というよりはもしかしたらただの「パパ」だったのかもしれない。それでも、彼女は27歳から32歳という女性にとって貴重な5年という期間を不倫という関係に費やしたのだ。相手に対して好意がなかったわけではないだろう、と予測している。
彼女が不倫から抜けられるきっかけは、予想もできないほど急にやってきた。彼女と彼が、いつも通りホテルから出てくるところを、写真に撮られたことがきっかけだった。恐らく彼の妻が探偵を雇ったのだと思う。家に突然、弁護士からの通達と写真が送られてきて、彼女は5年間という時間とともに、莫大なお金を失ったのだ。
お金持ちであった彼も、不倫がバレた事実をきっかけに態度を変えたという。彼に相談をするつもりが「ごめん、終わりにしよう」とバッサリと別れを通告されてしまった。
経験を得て、婚期を失ったマナミ
「本気で彼のことが好きだったし、後悔はしてるけど嫌いになれない」。そう言って笑ったのは、25歳にして不倫相手と初めて男女の関係を持ったマナミだ。落ち着きもあり、大人びて見える彼女は、異性からは話しかけづらさを与えてしまうような、いわゆるクールタイプだった。あの切れ長な目にキッと睨まれたら、男性はびっくりするだろう。強気に見えるのに対して、男性経験がないことに悩みを感じていたマナミにとって、その初めてを経験させたのが、既婚者の彼だったのだ。
最初は結婚していることを知らなかった。男性経験のないマナミが、余裕のある彼にどんどんハマる姿は、正直隣で見ていても引くくらいだった。彼女は今何歳になるのだろう。彼女の初恋ともいえるその彼は、最初でこそマナミに興味はあったものの、徐々に窮屈さを感じるようになり距離を取り始めた。自分から結婚しているという事実も打ち明けたのだ。もしかしたら、次に不倫相手となるお相手ができたのかもしれない。けれどその行為はマナミを余計に盛り上げた。まるで月9に出てくる悲しい恋愛ドラマのヒロインかのように、追いかける楽しさにもハマってしまったのだ。子どもは難しい年齢になってしまったかもしれない。婚期と呼ばれている時期もきっと、過ぎたことだろう。だけど、パートナーと呼べるような異性に、彼女が出会えることを祈っている。
ヒトの感情に麻痺してしまった、ノゾミ
私が知る中で、一番したたかで頭の良く、誰よりも悲しい女だと感じた女性だ。私たちが知り合った頃には、彼女はすでに結婚していた。随分早くに結婚を経験していたから、6〜7年は旦那と2人で、平和に暮らしてきたんだろう。ある時、彼女は、真面目だと思っていた旦那が浮気していることを知る。彼の携帯に、浮気相手からの決定的なメールがあることを発見するのだ。それは、彼女も見覚えのある名前だったらしい。離婚を考えていなかった彼女は、最初は見て見ぬふりを続けようと頑張ろうと思った。けれど、いつしか自分も仕返しをするかのように、外で遊び歩くようになったのだ。
私が知っている中では、旦那の他に、彼氏と、定期的にお金をくれるパパもいた。そこに愛があったのかはわからない。旦那も、自分も。不倫という、スリルをただ楽しんでいたのかもしれない。いつしか、旦那が原因で始めた男遊びに、どんどんのめり込み、華やかな毎日を送るようになった。
彼女のしたたかさを実感したのは、自分の浮気は一切匂わせないところ、旦那と浮気相手の”証拠”になるものを徹底的にかき集めたところだ。案の定、彼女はパパにもらったお金と人脈で、優秀な弁護士を雇った。そして旦那と旦那の浮気相手から、多額の慰謝料をふんだくってお別れしたのだ。きっと、旦那のことは本当に愛していたことだろう。執着、嫉妬。彼女を変えたきっかけはあまりにも残酷だった。W不倫、というには足りないくらいの行動を起こしたノゾミ。彼女はお酒と男に依存するようになり、友人だけでなく社会的信用を失った。
奪いつくす愛
全員、どこかで「このままじゃいけない」と感じるタイミングはあったはずだ。けれど、結局は泥沼にはまるかのようにどんどんと足場を奪われていく。
冒頭に書いた『2番目は全部知ってる』という言葉は、ここで最後に紹介したノゾミが放った言葉だ。旦那の浮気相手は、彼女も良く知る人物…長年彼女に憧れを持っていた元友人でもあった。彼女が大事にしている旦那と関係を持つことで、優越感を得たかったのかもしれない。
『2番目は全部知ってる、旦那のことも、私のことも。私たちの状況も。だからきっと居心地が良いの』そう言って、タバコに火をつける女の姿は、とても痛々しかった。優越感を感じたかもしれない、彼女もきっと、お金以外の何かを失ったはずだ。さて。不倫が与えるは一体なんだろう。