あなたの会社に女王蜂はいる?
私の上司は二回り歳が上の女性なのですが、雑用があるとなるといつも私に声をかけ、他の人に比べてあからさまに厳しく接してきます。先日こっそりと人事に相談をしたら、それが上司の耳に入ってしまったようで「そんなことを不満に思うのなら社会人に向いていない、会社を辞めたら?」と言われてしまいました。正直、この女性上司と合いません。—27歳/医療・福祉
筆者の友人に、女上司とのウマが合わず悩んでいる女性がいました。この問題に当たる女上司は、若い頃からバリバリと働く“バリキャリ”で、社内で初めての女性管理職にもなった女性なのだそう。
人間同士の関わりに、好き・嫌いが自然と生まれてしまうのは仕方のない話かもしれませんが、女上司の行き過ぎた行動に勇気をふるい相談をしたにもかからず、どこかしらか話が漏れてしまって本人から嫌味を言われてしまう。もちろん結果的に何も解決しなかった(むしろ人間関係は悪化)ため、彼女は最終的に会社を辞めてしまいました。
この女上司が同性である部下の女性を、敵と見なして手厳しく対応する現象は、「女王蜂症候群」と呼ばれるのだとか。
女王蜂症候群は、1970年代にアメリカの学者が発表した研究論文で使われた言葉で、男性が上司となったた場合には他のメンバーへの分配額が多く、女性上司の場合には、自分の取り分を多く確保する傾向がみられたそうなのです。
人間社会における“女王蜂”は、女性管理職が少ない会社で、子育てと仕事のどちらもを頑張ってきたエリートに多く生息し、女性の部下への評価は特に厳しく「私はこんなに頑張ってここまで来たのに、あの子は大した事もしていないのに評価されている」というような、嫉妬から生まれるものなのだとか。
そんな“女王蜂体質”のスキルが高い女性が、自分の地位を守るために他の女性の活躍を快く思わず、パワハラをしてしまう現象こそを「女王蜂症候群」というのです。
男性管理職は女性の“嫉妬”に気づかない
同性同士のバトルを続けていても問題は平行線に。
男性の意見を取り入れたくなることもあることでしょう。しかし男性メンバーは、この女性同士のバトルには何も気が付いていない人も多く、女上司より上の立場の男性に相談をしたとしても「いや、それは直属の上司に相談してよ」と理解してもらえないことも多いのです。
人間関係に関しては会社の業績に影響がなく見えるので、男性は気が付かず、またそれを問題視しようとはしません。とくに、女性同士のバトルは、一見ニコニコとコミュニケーションを取っているように見えるので、本当はマウンティングを取り合っていても“仲が良い”と勘違いをされてしまうのです。
直属の上司こそが問題なのに……。
男性に相談しても「理解してもらえなさそう」と察知した場合には、すぐに別の地位が高い社員にも話を振ってみましょう。
女王蜂は「自信はあるけど、あえて無能を演じる女性」を生む
女王蜂症候群が慢性化してしまうと“自信はあるけど、あえて力を発揮していない女性”が生まれる恐れがあります。女上司の圧力や嫉妬の影響により「下手に活躍すると叩かれる、だったら最初から自信がないフリをしていた方がマシ」と考えてしまう女性もいるでしょう。いわば戦略的無能です。
良いアイデアや自信があっても「自分には無理です」と言っていること、それは会社側からすると大きな損失です。今後、女性活躍を推進していくにあたっては、この戦略的に力を発揮しない女性社員の隠れた才能を引き出す、センシティブな組織になる必要があります。
戦略的無能は、キャリアアップのチャンスを自ら台無しにしているようなもの。
もし今、女性上司との関係に悩んでいる・相談されたという経験があるのなら、誰に相談をするべきか? 無能を演じることで得をしてしまう職場環境を変えるにはどうすれば良いのか? と、具体的な対策を考えなければなりません。
女性管理職が増えていく上で考えておくべきこと
今後、女性管理職が増えていくとして、女性の意識改革は必要不可欠ともいえるでしょう。
女王蜂化している女性管理職はもっと寛容になるべきです。スキルをひた隠しにする女性社員を増やさないためにも、「女性の敵は女性である」という対立構造を崩し、男性優位の企業文化を許容するのではなく、同じ女性を不利な立場に追い込んでいることを認識していくべきなのです。
また企業としては、女性社員間の上下関係で生じがちな問題を十分に考慮したうえで、人材育成や評価基準・方法などについて工夫を重ねていく必要があります。
嫉妬は無意識にも生まれてくる感情だからこそ、自己コントロールをしづらいもの。嫉妬という感情を“悪”そのものと捉えず、どう向き合っていくか考えるきっかけとなれば嬉しいです。