【連載】ココシャネルに学ぶ「時代をつくる女の生き方」♯13



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今回は、前回までのお話の続きを少しお休みしてシャネルが現代に残したファッションスタイルについてご紹介します。多くの人はシャネルがグッチやプラダと具体的に何が違うのかよく分からないと思っているのではないでしょうか。ファッション好きならその違いをよく理解していても、そもそもで興味がなければどうでも良い情報かもしれません。違いがどうであるとか知っていても特に何か使える情報ではありませんし。

ただ、シャネルが残した功績についてこれは皆さんに伝えておきたいと思うことがあります。それは、彼女は未来を生きる女性に新たなファッションスタイルを作ったということ。そして私たちは知らず知らずに彼女の恩恵を受けているのです。

♯シャネルの功績とは

通常、ファッションというのはその時代を表す流行であり、いつかは廃れるものです。10〜20年という単位でファッションの着こなしは、その時代に生きる人たちの価値観や現象に合わせて、少しずつ変化しています。むしろ変化しないファッションなどあり得ません。例えば70年前まで女性は、膝より上の足を露出することなどあり得ないという価値観を持っていましたが、今ではどうでしょう?「パンツ見えちゃうよ!」というくらい丈の短いスカートを履いている女子高生がいても別に驚くことはありませんよね。

このように服に対する価値観は数十年も経てば変化するのが当たり前。それに対して、シャネルが70年以上前に提案したファッションは、今の私たちが着ていてもおかしくない着こなしなんです。これがどんなにすごいことかというと、「2090年に生きている人たちの日常の服を2018年の段階でコレクションとして発表している」ということなんです。誰も想像できなかった価値観を、次世代に生きる人間が当たり前として取り入れている……という時代の礎を築いたのがシャネルの功績です。

♯新しい価値を生み出したファッション

前置きが長くなってすみません。では、ファッションにおいてシャネルが何を生み出したか代表的なものを簡単にご紹介していきましょう。

ブラックドレス

シャネルが発表したのは「 Little Black Dress 」リトルブラックドレスという、黒一色で仕上げられたイブニングドレスです。シャネルがこのドレスを発表するまで、黒い服というのは喪服でしか使われませんでした。「お葬式は黒い服と決まっている、それ以外の日常で使うなんてことはあり得ないよ!」が当時の人の価値観。

でも、シャネルは黒い服に完璧なまでのミニマルさを見出していました。黒い服=お葬式という価値観を一切捨てて、「黒い服は女を美しくさせる」という事実を世の中に提示したのです。私たちがブラックドレスを着ている、黒い服を堂々と着ているのは、シャネルがそうした価値観を最初に提示したからということをご存知でしたでしょうか?

ボーダーカットソー

ボーダーカットソーまたの名をバスクシャツと言います。バスクシャツはもともと、水兵さんの制服でした。リゾート地にシャネルの2号店を出店していたというのもあって、海兵を見かけることも多かったのでしょう。前回ご紹介したジャージィ素材を使ってシャネルは自らバスクシャツを作りました。

当時のシャネル本人である、バスクシャツにワイドパンツを履いた現代的な出で立ちで写っている写真も残されています。驚くのがおそらく写真は1930年前後の写真だというのに、着こなしのスタイルは2018年の現代でも通ずるスタイリッシュさ。

イミテーションパール

イミテーション(模造品)と聞くと皆さんはどんな印象を受けますか?おそらく、多少はイミテーションというものにネガティブな感情や引け目を感じるのではないでしょうか。貧乏だから本物を持てないことへの引け目、本物を識る目を持たない安っぽさ。そうしたマイナスな感情を持たれるイミテーションを、シャネルは積極的に取り入れていました。

本物のパールと合わせて、イミテーションのパールをジャラジャラと重ねづけして、タバコをふかす写真を皆さんも一度は目にしたことがあるのでは?なぜ、本物を持っているのにも関わらず、イミテーションを使っていたのかその真偽は定かではありません。しかし彼女は、物そのものの価値よりも、どう使うか、どう取り入れるかを大切にしていたのではないでしょうか。その真珠が本物であることが重要ではなく、それを使った自分がどう見えているかが大事。だから、安価と言われていたジャージィ素材に注目もできたのでしょう。

♯未来へ繋ぐ働きを心がける

こうしてみると、私たちが今ワイドパンツを履けるのも、黒いドレスやボーダーカットソーを着られるのも、シャネルがそれは“アリだよ!”と声を大にして発信してくれたからだと思うのです。ファッション好きがシャネルを好きな理由はなんとなくお分かりいただけましたでしょうか?彼女がいてくれなければ、私たちはもっと制限のある中でしかオシャレを楽しむことができなかったでしょう。

シャネルに対する敬愛を持ちつつ、自分にできる未来へつなぐ働きがなんらかの形でできれば幸いです。ぜひ、皆さんも自分の仕事、価値観、人生のテーマというのを改めて見直して、ご自身らしい発信を試みてはいかがでしょうか。