人生設計をすり合わせる。長期的に働く女性を増やすライフプランミーティング



[記事内に広告が含まれています]

複雑化している女性のライフプラン

女性は結婚や出産、子育てが転機になることが多く、長期的なキャリアを描きづらい生き物です。
「今勤めている会社でずっと働きたい」と思っている女性が、やむを得ず退職するケースも多く、会社にとっても個人にとっても不安定で先が見えないと悩んでいる状況。どうすれば会社も社員も、互いを尊重し幸せな選択を取ることができるようになるのでしょうか?

Cinq編集部は、そんな働く女性のモヤモヤを解決するためにユニークな制度を導入している会社を発見。株式会社FCE Holdingsではライフプランを上司とすり合わせる「ライフプランミーティング」があるといいます。一体どんな制度なのか、人財開発室の勝家 さちさんにお伺いしました。

株式会社FCE Holdings
人財開発室/勝家 さち

会社とすり合わせをする「ライフプランミーティング」

「ライフプランミーティング」について詳しく教えてください

ライフプランミーティングというのは、自分が描くライフプランを会社が理解できるよう、上司と定期的に(年に1〜2回の頻度)ミーティングを行うことです。

会社に勤めていると、自分のキャリアプランについて考える機会はあると思いますが、ライフプランについて考える機会は設けられていません。そこに不安やモヤモヤを抱える人は多いものです。ライフプランは仕事以外の軸をおき、仕事と家庭、そして個人として数年後から10年後、20年後どういう風にありたいかということを、上司と話した上ですり合わせるといったものです。

導入したきっかけは、会社が設立当初のころにあります。
もともと一部の社員が各自で行っていたのですが、2015年頃から本格的にスティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』の研修を全社で取り入れるようになりました。そこで“終わりを思い描くことから始める”ことは「自分の個人の目的やそれを実現するライフプランが大切だよね」という共通の考えができ、本格的に取り組むことになったのです。

ライフプランというと人にはあまり言いたくないようなデリケートな話題もでてくることがあると思います。会社として共通の価値観といったものがあるのでしょうか?

自分のライフプランを「伝える」ことも目的のひとつなんですけど、そもそもなぜライフプランミーティングをやっているか? というと、2つのポイントがあるんです。

1つは、私たちの会社で大事にしているキーワードに「経営力」という言葉があります。経営というと、社長や役員といったイメージがあると思うんですけど、弊社は“社員である以前にひとりひとりの人生を営んでいるオーナーとして、自分の人生を営んで行けるような力を身につけていきましょう”という方針です。
それを前提で考えると「人生を設計していくということを、常にやり続けること」が大事になってきます。デリケートな内容も、話を進めているうちに出てくることもありますが、上司がそれを聞いたからといって反対することはありません。

もう1つの共通の価値観は、「人生には人それぞれの目的があって、その目的に近づくために仕事や家庭という場所がある」ということです。全ては自分が目的とするなにかに向かっていくための過程であると考えています。

私は、結婚をする予定があること、子どもは何人欲しいですといった自分のライフプランを、このライフプランミーティングの時間を使って伝えました。普段仕事している中では言えない話を、上司と面と向かって伝えられる時間が設けられているのは、とてもありがたいことだと実感しています。

報告ができる場があるのは良いですよね。導入後は、どのような反応がありましたか?

子どもが生まれたあと「職場復帰をする時にチャレンジしたいことがある」と、元々いた部署ではなく新しいポジションを希望し戻ってくる女性社員もいます。これが実行できるのは、会社が社員と事前にキャリアのすり合わせができていたからこそです。

私たちの会社のミッションとして「社会の課題にビジネスで挑む」というものがあります。こうした会社のミッションと個人的なミッションを、会社という舞台を通じてどう実現していくのか? 弊社では毎年、正月明けにそれぞれが考えたことをメールで送るというルールがあります。そのすり合わせたミッションをライフプランに落として考えたときに「よし、今年はこんなことにチャレンジしてみよう」と上司と話が進んでいくので、自分が持つミッションに着実に近づいているような気持ちになるんですよね。それが働きがいや、やりがいに繋がっているようです。

紙に書き出すことで過去の自分と振り返る

毎年ライフプランの「見直し」をしているとのことですが、どんな所が変わったなと思いますか?

私は入社して3年経つのですが、入社当初は人事という仕事が未経験でした。当時は人事の仕事で「プロになろう」とは考えていなかったので、ライフプランシートにも特に書いていなかったのですが、3年間やっていると、この仕事がとても面白いと感じるようになりました。人事のスキルに加えて、何か自分に強みがあればいいなと考えるようにもなりました。

そして、私自身、悩みに直面しやすいライフステージが変わる瞬間(結婚)を迎えることが決まったからこそ、今後の働き方や子どものこと、夫との過ごし方やバランスをどうやっていくかを考えるようになりました。1年前は、家庭の項目をほとんど記入していなかったので、過去のものを見返すと面白いです。

考え続けること、答えを探し続けることが大事だという方針があるので、過去と今のライフプランがガラッと変わっても問題はなく、「そういう風に思って動いているんだね」と受け入れてくれます。なので私のように毎年プランを変更し続けている社員もたくさんいます。

勝家さんのライフプランシート。
今回インタビューを受けるという事で再度ライフプランの見直したそう!

人事の目線もそうですが、会社にとって「こんな自分でありたい」という考えは、年々ブラシュアップされることで視座が高まっています。入社1年目の時は考えていなかったような立場になりたいと思うようになったり、会社に対する想いを可視化する機会が増えました。

私がやりたいことに、プログラミングを学びたいということ、簿記2級を取りたいというのがあるのですが、メインの業務でもないので会社になかなかそれを言う機会ってないじゃないですか? それを伝えることがライフプランミーティングだと可能になるので、伝えることで自分もアクションを取りやすくなるんですよね。

自分だけだと「新しいことに手を出す前に、まずは自分の仕事を進めた方がいいじゃん」と、動きが鈍くなってしまうことがありますが、基本的に上司は応援してくれるスタンスなので、自分の希望を伝えて「何に繋がるからやりたいと思う?」と聞いてくれます。それが明確になることで、新しいことを始める理由が明確に整理され、実行しやすくなります。

中には「鍼灸師になってスポーツマンの助けになりたい」という社員がいたのですが、普通なら学校に行くために仕事を辞めて……となるところ、事前にライフプランミーティングですり合わせができていたおかげで、アルバイトという立場で会社に貢献しながらも、学校に通うというどちらもを叶えた人もいます。そんな自由な働き方もライフプランを伝えていたからこそですよね。

先の予定が立てられないとライフプランが白紙になる人も中にはいると思うのですが、組み立てる時のポイントってありますか?

私もそんなに得意な方じゃないと思っているんですけど、まずは人生で「大事にしたいことは何か」を考えると良いですね。どんなことが楽しかったのかを書き出し、それに繋がる人生の過ごし方ってなんだろう? って深掘りしていきます。

20年、30年後から考える人と、直近の未来から考える人の2パターンありますが、それはどちらでも良いと思います。私は目先から考えるのが得意なので、3年後のミッションに近づくために、どういうことを仕事としてできるんだとか、どんな夫婦関係なんだろうと言語化していく……というように直近から考えていきましたね。

計画が上手く立てられなくても上司に「真っ白じゃん!」と言われることはなく、ぼんやりしてる部分を言語化してくれたり「これってこういうパターンとこういうパターンあるけど、どっちの方がワクワクする?」といった道筋を立ててもらえるのが助かっています。

自分のライフプランについて、揺れ動く女性にアドバイスをするとしたら?

難しいテーマではありますが、あえて言葉や文章にしてみることで、自分が望むライフプランがどんどん見えてきます。

私は、自分が書いたことを、家庭でも話すようにしてみました。夫の考えはわかっていると思っていたので、家族の項目に夫の意見を取り入れてみたら、微妙に違っていて(笑)そんな風に、家庭においての計画や自分の今後の働き方を、事前にすり合わせができるのは良いことだなと思います。

難しいのは、ただお互いの理想をすり合わせるだけだと、うまくいかないこともあるということです。
弊社の場合は、『7つの習慣』研修を全員が受講し、「終わりを思い描くことから始めることが大事」という共通の価値観を持っているからこそ、新しいことへのチャレンジも応援されます。もし価値観が違っていれば、やりたいと思っていたことが上司に反対されてしまうこともあるかもしれません。会社の軸となる考え方は明確にしておいた方が良いと思います。