「生きづらさが原動力という私らしさに気づいて」Webライター山口 恵理香 #フリーランスに生きる

「生きづらさが原動力という私らしさに気づいて」Webライター山口 恵理香 #フリーランスに生きる

『不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術』を出版した、フリーランスのWebライター、山口恵理香さん。14歳の頃に経験した不登校と適応障害という過去を全てさらけ出し、「生きづらさ」を原動力としてきた、彼女のこれまでに迫ります。


山口 恵理香
1990年、東京都生まれ。コラムニスト、Webライター。
中学生時代に3年間の不登校を経験、「適応障害」と診断され、引きこもり生活に。
大学卒業後、NPOに就職するが、わずか3か月で退職。社会人経験ゼロ、人脈なしの状態
から、自ら営業をかけ、Webライターの仕事を確立させる。恋愛・ライフスタイルの記事
を中心に、現在も人気女性向けサイトにて執筆中。人生のテーマは「瞬間を生きる」。金
髪のグラデーションヘアとCHANELの赤い口紅がトレードマーク。

14歳の女の子にとって、学校に通えないということは想像以上に残酷だった

中学生時代に不登校になったという山口さんですが、実際に学校でどのようなことがあったのか、教えていただけますか?

もともと一人で過ごすのが好きな一匹狼タイプで、集団行動が苦手だという意識はありました。だけど、学生のころって、女子特有の派閥やグループがあるじゃないですか。もちろん、最初のうちはどうにかそのグループから遅れを取らないように頑張ろうって努力をするんですけど、中高生ってなかなか一人になることができないんですよね。女子校だったので、なるべくその輪を乱さないように慎重に、不自然な距離を開けないようにって、一人の時間をうまく作ろうと思っていたんですが、適切な距離感がわからなくて悩んでいるうちに、その輪から外れてしまったという自覚があります。
靴の中に画鋲が入っている……というような漫画のようなわかりやすいエピソードはなかったのですが、ロッカーの裏側で聞こえるように陰口を言われたり、仲間はずれをされたりと、大人には気づかれないような陰湿ないじめを受けるようになりました。
味方がいない自分にとっては、もちろん先生に頼るなんてことはできません。クラスの誰かが動いてくれるなんてこともありません。次第に学校にいることが辛くなって、親とお医者さんと話しをした結果、適応障害と診断されました。「一旦学校から離れて休もう」と言ってもらったあと、卒業するまでは一度も学校に行くことはありませんでした。

その際に適応障害だと診断されたのですね。その後自宅では、どう過ごされていたのでしょうか。

薬を飲み始めた副作用もあってか、強い眠気と倦怠感に襲われていました。朝から晩まで1日中、寝て過ごす毎日。動くどころか、食べる気力もありませんでした。学校から離れたからといって、すぐに健康的な生活が送れるわけじゃない。
「死ねよ」とメールが届いてからは、携帯電話を触ることも怖くなって、「学校に来てないけど、大丈夫?」と連絡をくれた友達すらも信じられない状況。人と接するのも、携帯電話と接するのも怖いから、ただただ寝て忘れるのを待つという過ごし方を続けました。

自分にとっての“サードプレイス”が必要だった

その後、フリースクールに通い始める山口さんですが、どのような変化があったのでしょうか。

気分に合わせて読書や、勉強をするようになってからは「自分でどうにかしなきゃ」って思うようになりました。インドアが好きではあるんですけど、家にいることだけも息苦しいって思うようになるんですよね。その時に自分のサードプレイスになる場所が欲しいと思って、インターネットを使ってフリースクールを検索、見学に行きました。(フリースクール……学校に通えない子どもたちの学校に変わる学びの場)
フリースクールに通うようになってから、次第に人が多い場所で過ごすことにも慣れてきました。大学生になると女子グループや派閥といった人間関係もなくなったので、過ごしやすいと感じるようになりましたね。

職業選択は、当時どのように考えられていたのでしょうか?

大学生の時は、今のようにフリーランスという働き方があるのを知らなかったので、大学に行ったら会社に務めるものだと思っていたんです。その流れに沿って、もちろん就活はしたんですけど、スーツを着ている自分や、決められた時間に出社・退社すること、組織や会社というなかで過ごす自分が想像できませんでした。違和感を感じたまま、一度はNPOという組織に入社をしたのですが、結局は会社とも先輩ともそりが合わず、体調が悪くなることが増え3ヶ月で辞めることになりました。中学の勉強がごっそりと抜けている私にとって、就職は簡単なものではありません。加えて社会人になった瞬間に「四角い枠の中に収まれ」と言われているような感覚が辛くて、自宅でできる仕事を探すようになりました。

その際にWebライターになることを決められたのでしょうか?

最初は、在宅ワークと呼ばれているようなデータ入力などの仕事からスタートしました。続けていくうちに、フリーランスという仕事があることも知りました。ウェブメディアが増えたことで、ライティングという仕事にも出会いました。上手いとか下手とかではなくて、書くことが楽しいって感覚に気づいたんです。最初は実績と呼べるものもないので、実践で学んでいくしかないと、ウェブ媒体の問い合わせフォームから「書かせてください」と自分から連絡するようになりました。

人とは違うキャリアを歩んできたからこそ、伝えられることがある

山口さんは恋愛やライフスタイルといった分野を中心に執筆していますが、書く分野は最初から決めていたのでしょうか。

女性向けのサイトだということは決めていました。コスメや美容メディアが当時は多かったのですが、私自身コスメは好きでも、専門的知識がある人や、コスメを心から好きな人にはかなわない。必要最低限に使っている人と、好きの熱量が高い人には圧倒的に差が生まれます。そこで、自分にできることを考えた時に、これまでの経験に沿った「出会い」や「ライフハック」であれば書けると考えたんです。恋愛は当時私が恋愛をしていたこと、その相手から学ぶことも多かったことから。そして、人とは違うキャリアを歩んできた自覚があったので、メンタルやライフハックを掛け合わせたものであれば自分の価値観を詰め込めるんじゃないかなって。

ライターになることを決めてからは、生活はどう変わりましたか?

毎日、書店に通って、本を読むようになりました。何が流行っているのか、どういったものがテーマになるのか、並んでいる雑誌の表紙を眺めるだけでも、時代を察知できるのが書店に通う魅力です。
もう一つは、自宅で情熱大陸やセブンルール、アナザースカイといったテレビ番組を録画し、繰り返し音楽を聴いているかのような感覚で、自宅で流すようになりました。目と耳を使って、言葉の組み合わせや表現を自分の中に落とし込むんです。
仕事を開始する時間は、体調によってまちまちですが、絶対に毎日文字を書いて、感覚を鈍らせないようにしています。書いてる時間が一番救われる。これが、この6年間続けられてきた最大の理由かなって思います。

「万年ウツ」ということですが、仕事とうまく付き合っていくための工夫はありますか?

やっぱり一人の空間や一人の時間を確保するのがベスト……というか絶対に必要です。実家の近くに、仕事部屋も借りています。これが今のサードプレイス。フリーランスは、やるべきことをやっていれば、いつどのタイミングで働いても大丈夫な働き方なので、自分のペースを確保して働けることがありがたいです。

SNSや記事を通して発信を続けることで、自分のキャラクターを定着することができてきたのも大きいですね。「一人が好きな人なんだ」ってことが周囲に理解してもらえるようになったので、無理なお誘いに声をかけられることもありません。自分の領域をある程度確保できるようになりました。

グレーというカラーを知って、心がラクになった

人との付き合い方にも変化があったのですね。

昔は白か黒か、しか自分に答えがなかったんです。けれど、大人になって、あえて結論をつけない「グレー」があることを知ってから、心がラクになりました。お仕事上では苦手な人でも、お付き合いなら大丈夫だって思えるようになりました。
打ち合わせでなにか嫌なことがあっても、会社の一歩外に出たら、ひとりです。自分のペースで整理整頓ができるので、自分のペースで元に戻ることができる。仕事でもひとり会議をする時間を作ることができることが救いです。

本の出版についても、自分から率先して行動をしていたそうですが、心が強くなったと感じることはありますか?

自分が「やりたい!」ってなっちゃうと、びっくりするくらいの行動が起こせることがあります。適応障害って、コミュニケーションを取ることが苦手ってわけではなくて、人との接触に少しだけ過敏だったり、疲れやすかったり。ストレスが強くなった時に現れる症状を総称して診断されるものなんです。なので、診断されてないだけで……って人もきっとたくさん居るはずです。

決して私が、適応障害じゃなくなったとか積極的にいこうと決めたから頑張れたってわけではなくて、自由な働き方を選んだ以上は、これまでには戻れない、戻りたくないって気持ちが、覚悟になったように感じます。今の仕事で、自分らしく階段を登っていきたいって思うようになりました。

当たり前の幸せが崩れても、自分を責めない

確かに、診断をされていないだけで悩みを抱えている方もたくさん居ると思います。過去の自分に声をかけられるとしたらなんと声をかけますか?

「絶対に大丈夫」とか「ひとりじゃない」って言葉を当時は一番欲していました。一度は、生きることを諦めるべきか、ということまで考えたので、全然そんなことはないし、今は楽しいって思える。「頑張れ」とは言葉は使いたくないんですけど、もう少し前に進もうって言いたいですね。

14歳の女の子にとって、不登校や適応障害というものはとても残酷なものでした。これまで当たり前だと思っていたものが、崩れていく感覚がありました。当たり前の幸せがなくなってしまった時に、真っ先に自分を責める人がきっと多いと思います。けれど、そんな人にこそ、生きているだけで合格なんだよって、言葉をかけてあげたい。構想から2、3年たってようやく実現した今回の企画が、ようやく届けられるようになったので、少しでも同じような悩みを抱えている方のヒントになってくれれば嬉しいです。

他人と比べず、私らしく生きること

自分でも予想していなかったようなことが、当たり前に起こる時代。目の前ある世界から自分が除外される感覚を、皆さんは感じたことがあるでしょうか。自由や個性という言葉があるにも関わらず、流行や社会の流れとして幾度となく感じる「生きづらさ」。
それを原動力にして自分らしさを追求する山口さんの内側にある「強さ」を感じられずには要られません。

不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術(自由国民社)
著者:山口恵理香

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Cinq(サンク)-よくばり女子のはたらきかた-

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