各企業では従業員のモチベーションを高めるために様々な指導が行われていますが、残念ながら逆効果になってしまうケースがあります。それはどうしてでしょうか?
そして、どうすれば従業員のモチベーションを高めることができるのでしょうか。今回は、部下が「職場に求めていること」を冷静に分析しながら、モチベーションを下げてしまう“アンダーマイニング効果”について学んでいきましょう。
モチベーションをダウンさせてしまうアンダーマイニング効果
心の底から湧き上がってくる、やる気を「内発的動機づけ」といいます。内発的動機づけの状態の時は、モチベーションは最高潮になります。例えば、楽しいことをしているときはやる気は十分にみなぎります。耐えば、ポケモンGOもそう。レアキャラを獲得するためにやる気が高まり、数十キロも歩いてしまうほどモチベーションが高まるという現象が起きています。
しかし、内発的動機づけの状態にあるときでも、あることをするとやる気が落ちてしまいます。これを“アンダーマイニング効果”といいます。例えば、罰を科すこと、締切りの設定、監視されること、競争させられることも、アンダーマイニング効果をもたらす要因となることが心理学の研究では報告されています。これらのことは、モチベーションを高めるために、一般的に行われていることです。あなたも後輩の指導のために行っていることかもしれませんが、実際には、やる気を失わせることになっているかもしれません。
それでは、アンダーマイニング効果が起きないためには、何をすればよいかを検討していきましょう。
アンダーマイニング効果を働かせる心理的リアクタンス
人間というのは自由を求める存在です。
例えば、香港における100万人にのぼるデモがありましたよね。一般市民や学生たちが自由の束縛に反抗したのです。この反抗は、香港が特別な例ではありません。植民地政策が行われてきましたが、アメリカをはじめとした全世界で独立運動が世界で行われてきました。輸出手続き見直しによる韓国政府は自由を制限されたと感じて反発しました。
このように、自由を侵害されることに反発する心理を「心理的リアクタンス」といいますが、これがアンダーマイニング効果を働かせることになるのです。
心理的リアクタンスについて知りたい人はコチラから
報酬が高いからといって満足はしない
さて、あなたの部下や後輩は、今の職場に何を望んでいると思いますか?
次の項目から3つ選んでみてください。
①自分を尊重してくれる
②やりがいのある仕事ができる
③公平な評価が得られる
④スキルの向上につながる
⑤自分の話を聞いてくれる
⑥自主的に仕事に取り組める
⑦仕事の成果がフィードバックされる
⑧上司の指示が的確
⑨実力相応の仕事が与えられる
⑩会社情報が得られる
⑪雇用が保障される
⑫給与水準
⑬福利厚生
いかがでしょうか?
実は、これは、ある研究成果で、若い番号ほど従業員の要望が強い項目となっています。従業員は給与水準などの待遇を重視していないのです。
給与アップは、一時モチベーションを高めますが、2か月もすれば慣れてしまいます。これを心理学では「慣化」と呼びますが、人間は環境に適応しやすいのです。このようなことから、報酬が高いからといって満足はしないということがわかっています。そんな人たちにとっては、“やりがい”が重要だということです。
しかし、そんな私たちも給与ダウンには反発します。給与ダウンはそれまでの生活水準を維持する自由を阻害するので心理的リアクタンスを招くことになるのです。
部下のモチベーションを下げてしまう“アンダーマイニング効果”を防止する方法
アンダーマイニング効果を発動させる罰、締切り、監視、競争についての注意点について紹介しましょう。
罰を与えること
ミスをした時には、感情的に叱責をすることがあります。しかし、このことは心理的リアクタンスを引き起こし、モチベーションをダウンさせることになります。これを防止するためには、問題点は何かを冷静に話をすることです。「何でこんなことをした」というのも相手は叱責と受け取るので禁句です。
締切りの設定
仕事を受ければ納期があるのは当然です。しかし、これも心理的リアクタンスからアンダーマイニング効果を惹起させてしまいます。
それでは、どうすれば良いかというと、自分で納期を決めさせればよいのです。「この仕事はいつまでにできる?」「納期はいつにする?」と聞き、部下にコミットさせるのです。そのうえで、お互いの手帳に納期を書きましょう。人間には「一貫性の原理」という心理があり、一旦コミットしたことは守らなければならないという心理が働きます。
監視すること
監視されると、自主性が阻害されると感じ、アンダーマイニング効果が頭を持ち上げてきます。犬はハーネスをつけられても耐えることができますが、人間は閉じ込められ監視されるのを嫌います。刑事罰に自由を奪う禁固刑がありますが、これを見ても人間が束縛を嫌うことがわかります。これを防止するためには、自主性に任せることです。また、自主的に報告させるようにすれば、監視することにはなりません。
競争させること
昔は、営業部門の壁には、営業マンの成績グラフが掲げられていました。競争心を煽るための方策のつもりです。しかし、営業マンの反応は薄く、これがやる気をそぐことになっていたのです。数多くのアニメにもあるように、自分が追い求めるライバルは自分の成長にも役立ちます。しかし、上司から「○○君を見習いなさい」などといわれると、反発してしまいます。
部下や後輩を指導するときには、アンダーマイニング効果が起きないように注意を
以上のように、部下や後輩を指導するときには、アンダーマイニング効果が起きないように自主性に任せることが重要だということがわかります。また、日ごろモチベーションを高めるために行っていることを見直すことが良いでしょう。