女性の活躍が進んでいる今ですが、まだまだ数多くの社会課題があります。その背景にあるのがライフステージの変化。柔軟な働き方が選べず「仕事と妊活の両立の難しさ」を痛感している方も多くいます。
不妊の可能性に悩み、検査や治療に取り組んでいるカップルは6組に1組いる(日本産科婦人科学会アートデータブックより)というデータもあるほどなのに、働きながらの妊活や不妊治療が難しく、会社を辞めるしかない……と追い詰められてしまう女性もいるのが実情なのです。
子どもが欲しいのに、なかなかできない……。
そう悩み始めたら妊活のはじめどきかも。妊活中はお金がかかることや、会社勤めの場合は両立が難しいことなど、悩みもたくさんあります。そんなリアルな妊活実情を知るため、Cinqでは株式会社ファミワン協力の元「仕事と妊活」についての連載をスタート!
今回は、日々妊活についての相談が寄せられるファミワンで、相談されることの多い悩みとその回答について教えて頂きます。
妊娠・子育ての話題に敏感に。気持ちをコントロールするには?
職場の人との付き合い方についてアドバイスが欲しいです。職場に妊婦さんや子育て中の人がいて、妊娠・子育ての話題になるととても苦しいです。気持ちをコントロールするためにはどうしたらいいのでしょうか。
人の妊娠報告を聞いても素直に喜べなかったり、妊婦さんや子どもの姿を見るだけでつらい気持ちが沸いてきたり、TVで有名人の妊娠のニュースを見ると嫌な気分になったり。同時に、「こんなことを考えてしまう私はなんて嫌な人間なんだ」と思って、自分自身を責める気持ちがわくことはありませんか?
心からお子さんを望んでいれば、そのようなお気持ちがわいてくるのはとても自然なことです。
「心を穏やかにしたい」「気にしないようにしよう」「気持ちを安定させよう」と努力すると、逆効果になることがあります。自然にわいてくる気持ちに蓋をして押し殺すわけですから、どこかで反動が来てしまうのです。
パートナーさんや信頼できる人にご自分のネガティブな気持ちを伝えても良いですし、言葉にできない気持ちがあればたくさん泣いても良いのです。あなたの大切なお気持ちに、蓋をしてしまう必要はありません。無理にコントロールしないことが重要です。
例えば、人の妊娠報告を聞いて「今は関わりたくないな」と思えば距離を取っても良いでしょう。聞きたくない話題になった時は、何か理由をつけてその場から離れても良いですね。あなたの心を守るための「戦略的撤退」です。上手にその場から撤退できたら、ご自分をたくさん褒めてあげてください。
仕事と妊活の両立に限界。でも仕事は辞めたくない。どうすれば?
正社員として仕事と不妊治療を両立することに限界を感じています。ただ、会社を辞めてしまうと治療費が払えません。もともとやりがいを感じていた仕事なので、本当は辞めたくありません。上司と相談した方が良いのか、相談するならどのようにすればいいのかアドバイスをください。
まずは、社内の制度を確認してみましょう。不妊治療中の社員に対し、仕事との両立を支援する制度を設けている場合があります。また、社内に相談窓口を設けている場合もあります。
不妊治療で通院が必要な場合、上司や同僚が理解してくれるか不安ですよね。また、職場の雰囲気やご自分の立場上、不妊治療を受けていると言い出しにくいこともあるでしょう。
最近では「妊活」「不妊治療」という言葉が知られてきているものの、具体的な内容について知識のない方が大勢います。不妊治療の特徴として、次のようなことが挙げられます。
・実際に受診しないと次の受診日が決まらない
・頻繁に通院が必要
・お薬を使う場合、人によって副作用の出方が違う(体調が悪くなる人もいるし、そうでない人もいる)
・受診にかかる時間が予測しにくい
・受診期間が予測しにくい
このような特徴は、一般的にあまり知られていません。周囲の協力を得たい場合、まずは不妊治療の特徴について知ってもらう必要があるでしょう。また、一口に不妊治療といっても治療方針は人によって様々です。あなたの場合は月にどれくらい受診が必要で、どんなお薬を使うのか、施術やお薬の身体への負担はどれくらいか、主治医と相談してご自身でよく知っておくことが大切です。
お仕事をしながら不妊治療を受ける方は多いので、主治医にお仕事の状況を伝えると、ある程度は受診日や時間帯を調整してもらえる場合があります。お仕事と両立するためにも、主治医とのコミュニケーションのしやすさは病院選びの大切な要素ですね。
次に、周囲の方の立場で考えてみましょう。不妊治療を受けている部下や同僚がいる人の声を聴くと、次のような回答が見られました。
・どうして頻繁に休むのかわからず心配だったが、不妊治療を受けているとわかれば協力できることもあるので、話してもらえてよかった
・どんな治療をしているのかわからないので、どんな協力・配慮が必要なのかわからない
・プライバシーにかかわることなので、どんな治療を受けているのか聞きにくい
・治療について尋ねると、セクハラやパワハラと捉えられてしまうかもしれないので聞きにくい
ここからわかるのは、上司や同僚の立場の方も、「よくわからない状態では何をどう協力して良いかわからず困ってしまう」ということです。職場(特に上司)へ相談する時、どのような対応をして欲しいのか具体的に伝える必要があるということですね。いくつか例を挙げてみます。
・妊活のために通院しているが、体のリズムに合わせて受診しなければいけないので、前もって受診日を決められない。早退や急な休みが必要な場合がある
・通院に必要な時間だけ休めるよう、時間単位で休暇を取らせてほしい
・ホルモン刺激療法の影響で体調不良が続いているので、出勤時間を遅らせてほしい
・不妊治療を受けていることを同僚に知られたくない
具体的な要望を伝えると、職場の方も「これは協力できる」「それは難しいがこういう方法はどうだろうか」とあなたの相談に乗りやすいでしょう。
この時、ご自身がお仕事のために努力している内容を伝えるのもポイントです。例えば、次のような内容です。
・主治医と相談し、できるだけ勤務に支障が出ないよう受診日や時間を調整している
・病院の待ち時間で電話対応や書類作成ができる
・〇〇さんには不妊治療を受けていることを相談している
要望を伝えるだけでなく、あなた自身が努力をしている、あるいはその準備があると伝えることで、職場の方はあなたが頑張っている状況を理解しやすくなります。すると、心情的にも協力しやすくなるかもしれません。
上司に伝えるのが難しい場合、「どのように上司に伝えればいいか」を誰かに相談してみるのも一つの方法です。あなたの職場に、比較的話しやすく、あなたの気持ちに寄り添って話を聞いてくれそうな人はいますか? あるいは、上司に対して発言力がありそうな人はいますか? まずは職場で味方になってくれそうな人を探し、その人と相談しながら上司に伝えるのも良いでしょう。
教えてくれたのはこの人!
戸田 さやか
公認心理師/臨床心理士
公認心理師・臨床心理士・生殖心理カウンセラー。性や生殖補助医療の専門知識を用いながら、カップル・家族の心理支援を行っている。ファミワンではユーザー対応やサービス設計を担当。
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