言うまでもないけど、育児しながら働くって簡単なことじゃありません
育休が終わって、仕事を再開する女性たち。会社の意識改革、また社会の流れが大きく変わった働き方改革の影響によって、多少勤務時間の短縮や急な欠勤などが取りやすくはなったといえど、やはり育児と仕事の両立って簡単なものではありません。ワーキングマザーとして活躍する女性には、職場での人間関係がストレスとなってくることも多々あるそう。
育児だけでも息切れしそうになる毎日に、仕事がプラス。それだけではなく、彼女たちにさらに負荷をかける人間関係の悩みとは、一体どういうところにあるのでしょう。実際にワーママとして働く女性たちに話を聞いてみました。
周囲からの目線がイタイ・・・
幼稚園の迎えに間に合わなくなりそうだったので、急いで仕事を切り上げて帰り支度をしていると、「いいな〜」とボソッと職場にいる独身女性が呟いたんです。それがすごく気になってしまって、今では幼稚園に遅れていくこともよくあります。会社的には認められていてもやっぱり、あの刺さるような目線には気まずさを覚えてしまいますね…。(商社勤務/29歳)
この方は、子どもを幼稚園に預けるようになったあとすぐに職場に復帰したそう。とはいえ、幼稚園が終わるのは夕方。お迎えの時間までには仕事を終わらせようと、他の人に業務を振り分けたことでこのような言葉を放たれたのだとか。独身女性から「早く帰れて羨ましい」「いいよね」と陰で言われることも時々あったそう。
私は短時間勤務の許可をもらっているのですが、正直短時間勤務だと、責任のかかるような業務は与えてもらえません。なので、私が一体どんな仕事をやっているのかというのが他の社員からわかりづらいようで、周りからは「ぶら下がり社員」だと思われているような気がしています…。確かに残業はできるだけしたくないので、仕方ないのかもしれませんが…。その分誰かが私の分の業務もこなしてくれているかと思うと、どうしても気になってしまいますよね。(広告代理店勤務/30歳)
通常の勤務と短時間勤務では業務内容が変わることもしばしば。その業務内容を社内に共有されていないからこそ「あの人は今なんの仕事をしているの?」「居る必要ある?」なんて厳しい見方をされてしまうこともあるのだとか。
また下記のように、職場をもっとよくしたいという気持ちから、提案をしてしまったことで裏目に出てしまうということも…。育児をしながら仕事もこなしたい、と意欲があっても実際に同じ職場に居る人からは冷ややかな視線が送られることは多々あるようです。
自分がまさか、こんなに早く職場復帰するだなんて思ってなかったんですけど(笑)その立場になったからこそ、もっとこうすればいいんじゃないか、こんな制度があればいいんじゃないか、と提案したら、それが周囲からはモンスターワーママだ! と言われてしまって…。やっぱり万全に働けない状態で、意見を主張するのはなかなか難しいですね(金融/34歳)
ワーママが気持ちよく働くことのできる環境って?
会社の制度だけでなく、肩身の狭い思いをしてしまうワーキングマザー。このような人たちが気持ちよく過ごすことのできる環境づくりは、どういったところからできるのでしょうか。
“子育て”だけが退職理由なんじゃない
これは筆者の考えではありますが、実際にワーママが職場に不満を持って退職するのには、子育て以外の理由が含まれているように感じます。何人かのワーママに話を聞いていて気づいたことは、誰もが『子育て』が一番の理由で会社を辞めたいと思ったのではないということです。
育児をしながら働く過程において、短時間での業務をこなせない=大事な仕事は任せられない、と判断されることは非常に多く、『誰にでもできる仕事』をいくつか任せられるだけといったことに、今後のキャリアへの不安が積もり、また周囲からもそのような立場として扱われることによって、自分の存在意義を感じることができなくなってしまう…。といったケースが多いように感じたのです。
ワーママへのキャリアプランがあまりにも不明瞭なことが、育児退職を引き起こし、そしてこの流れがさらにワーママを苦しめているように思えます。
ワーママに必要なサポートとは
時間的に融通がきくことはもちろんですが、それ以外にもワーキングマザーにとって必要なサポートはいくつかあります。それは
『①時間に制約があっても、ある程度経験や知識を鍛えられることのできる職場環境や上司が居ること』です。ワーキングマザーに対し、軽い仕事しか任せないことはパッと見た感じ、優しい印象のように映りますが、実際には働きながらもしっかりとしたキャリア形成をこなしていきたいという女性が多いからです。これはもちろん、人それぞれに理想の働き方があるため、全ての人に適応するとは言いませんが、一度ワーキングマザーとしての働き方について、話し合う場を設けてみると良いでしょう。
そして、『②振り分けている業務内容をそれぞれに共有すること』も大切です。先ほど、時短勤務をしているワーママがどんな業務をやっているかわからないからこそ、他の社員たちがぶら下がり社員だという目線を持ってしまうといったエピソードがありました。そのように気負いする状態を作るのではなく、業務内容を共有することで他が手立てもできる環境を作る必要があるのです。
そして職場全体の『③残業時間の見直し』も大切です。ワーママが早めに退社するのが目立ってしまうのは、他社員の残業時間の長さが理由だともいえます。働き方改革が進むと同時に、残業時間の見直しは社会的に進んではきましたが、実際には残業時間を家に持ち帰って仕事をしている社員もとても多いことがわかります。これらは会社がもっと根本的な業務量の見直しから始めることで軽減されるはず。育児休暇をとる社員がでた時のためにも、業務の見直しから始めていくべきだといえるでしょう。
ワーママが身を縮こませる必要がない職場づくりへ
周りからの視線が気になるから、身を縮こませてこっそり退社するといったワーママを減らすことが、会社として必要な取り組みであることがおわかりいただけたでしょうか。
育児と仕事の大変さを知っているからこそ、どこまでの業務量を任せていいのかわからない、と悩む方ももちろんいらっしゃるでしょうが、それは本人と直接話して決めるところ。何もかもを「〇〇だろう」と決めてしまうことは決して得策ではありません。コミュニケーションをしっかりとり、本人の意思を確認した上で、他の社員とのバランスや働き方の多様性を深めてみてはいかがでしょうか。