転職には“本音”が大事。キャリアアドバイザーが考える本当の「転職理由」



Cinq読者の皆さま、おはようございます。キャリアアドバイザーAです。

新型コロナウィルスの話題が出ない日がなくなってしまいました。世界中の株価の下落傾向に歯止めがかかりません。「平日はできるだけ自宅で仕事を行って夜間の外出を控え、不要不急の外出を控えるよう」知事が要請するまでになりました。ニューヨーク市長は市民の半数が感染するだろうと警告していますし、一般庶民より守られた環境で過ごしているであろうはずのイギリスのチャールズ皇太子やモナコ大公まで陽性反応が。東京オリンピックの延期も決定しましたね。
1年前、誰がこのよう事態を想像できたでしょうか?

スーパーでも買い占めも一時期は起こりましたが、東日本大震災の直後を思い出し『奪い合えば足らなくなり、分け合えば足り、譲り合えば余る』、この言葉を胸に皆さんで何とかこの難局を遣り過ごせれば良いなと思っています。

主に「転職」を考えている読者の方々にむけて、人材紹介業のウラ側のお話を交えつつ有用な情報をお伝えできれば、という趣旨でお送りしているこのコラムですが、今回は「自分が考えていることを言葉にしてみることの大切さ」についてお伝えしようと思います。

保育士から一般事務への転職を希望したSさんのエピソード

毎年この季節に思い出すのは、転職者Sさんのことです。
Sさんは名古屋在住の保育士さん。短大卒業後、3年目になるのですが「保育士を辞めて一般事務職として転職したい」と相談して来られました。遠方の方なので、まずは電話でインタビューを実施。

ここから先は、キャリアアドバイザーはA、Sさんの発言はSさんと表記します。

A「Sさんは保育士資格だけじゃなくて、保育教諭の資格やリトミック指導者の資格もお持ちなんですね」

Sさん「はい、小さい頃からピアノを習っていて、音楽の楽しさをお子さんにもっと伝えたいなと思って。今は1歳児の担当なのですが、担当してみてわかったことや、自分の知識の足りなさも実感したので、今はベビーサイン講師の資格の勉強を進めています」(声が明るくなりました)

A「そうですか。本当にお子さんがお好きなんですね!」

Sさん「はい、子どもたちと接することは本当に大好きです」(声が弾みます)

A「今回、一般事務に転職したいとのことでしたが、キャリアチェンジを考えたのはどうしてですか?」

Sさん「それは……PCで保護者に向けたお知らせや運動会の告知を作ったりしたことを園の先生に褒められたりしているので、自分はそちらの職種でもやっていけるのかなと思ったからです」

A「PCが出来るという理由だけで一般事務への転職……少し動機としては弱いですね。
せっかく保育士として熱心にやってこられて、お子さんが好きな気持ちは変わらないのに、ちょっと勿体無いですね。Sさん、本当はどうして転職したいんでしょうか? というか、キャリアチェンジしなきゃダメなんですか?」

Sさん「……」

よくよくお話を聞いてみると、Sさんの園では20代の保育士はSさんだけ。30代の層はおらず、そもそもPC操作に慣れていない世代の園長先生と保育士さんの構成でした。「資料作成」が褒められるのも、ある意味当然の話だなと感じました。

A「一般事務での転職を希望されて、横浜にいるお兄さんを頼って上京されるそうですが、お兄さんのおうちに居候するのかな?」

Sさん「いえ、近くには住めれば安心かなと思ってはいますが、基本一人暮らしを考えています」

A「だとすると、家賃を払っていけるお給料が必要ですね。一般事務で、一人暮らしができるお給料をもらえる条件で未経験でとなると、少し会社が絞られます。一般事務は派遣社員でと考える企業も多いですが、派遣は考えていないですか?」

Sさん「うーん……。派遣のことがよくわからなくて」(声のトーンが沈みます)

お話をしていて、【派遣】という雇用形態だけでなく、【一般事務】という仕事内容についてもあまりイメージできていない様子が伝わってきました。

A「ちなみに、転職時期はいつ頃を考えていますか?」

Sさん「今担当しているクラスがあるので、年度切り替えの来年4月以降なら……」

A「転職時期まであと半年あるので、それだと今募集がかかっている求人は選考対象にならないですね。中途採用は“今、人手が足りないので補充したい”という枠の採用なので、そこまで待ってくれる案件はなかなか難しいです」

Sさん「そうなんですね……」(声が今にも消え入りそうです)

思い切って、私はSさんに提案してみました。

A「一般事務は、お仕事情報はたくさんあるようにみえますが、正社員でとなると、事務作業のスキルがあるだけでは勝ち残るには弱いんです。業界の業務知識や経験が求められます。【PCができる】ということだけであれば、新卒を採用すれば良いわけですし…」

Sさん「…」

A「本当の転職理由を教えていただけませんか? 本当は保育士を辞めたいわけではないんじゃないですか?」

口ごもりながら、Sさんは答えてくれました。

Sさん「現職には同世代がいなくて、悩みを相談したりできる感じじゃないんです。資料作りで残業も多いんですが、毎月のお誕生日の準備の飾りとか、自宅に持ち帰って作ったりしなきゃいけないものも多くて……。保育士になることは夢だったので、できれば続けたいけど、将来を考えても保育士の収入では東京での一人暮らしは難しいと言われたので……すみません」

実は、PCが得意なことが裏目にでていて、仕事を他の保育士さんから押し付けられていたことが負担だったことを話してくれました。印象的だったのは、Sさんのこの一言です。

Sさん「今、自分で話していて、今の職場から逃れたいだけだったんだなってことがわかりました」

言葉にすることの大切さ

「今まで全く面識ない第三者に自分が今置かれている状況を説明する」「今考えていることを言葉にしてみる」ことによって、本当は自分が何を求めていたのかようやく気付いた、という事例は少なくありません。
頭の中でぐるぐる考えて悩んでいたことを言語化するきっかけは、日常あまりありません。
「自分が発した言葉で、自分の本当の気持ちがわかる」。
このことだけでも人材会社のカウンセリングを受ける意味がある方は多いと思います。

その後は、Sさんが「首都圏へ保育士として転職したい」という気持ちが定まったことから、私からは給与水準が比較的高く、「時期先転職(半年以上先であっても転職意欲の高い層の転職)」受入れに積極的だった法人をご紹介。半年後の転職でしたが受入れ可能ということで、とんとん拍子に話がすすみました。
借り上げ社宅制度を持っていたことも、Sさんを安心させる要因のひとつだったと思います。

「資格取得にも熱心ですし、子どもとの向き合い方が登園にとても合っていると感じました。ぜひ受け入れたいです。意欲的な保育士を紹介してくださってありがとうございました!」
人事の方からの連絡はこうでした。こういったエピソードに出会うたびに、キャリアアドバイザーとしてのやりがいを感じます。カウンセリングというと、ハードルが高いイメージを持っているかたも多いですが、自分の本音に向き合うのは大切なことです。ぜひ、うまく活用してみてくださいね。